Pokémon LEGENDS アルセウス 感想
基本データ
プレイ環境
Switch 有機EL (携帯モードオンリー)プレイ時間
45時間(エンディング19時間)プレイ日程
2022/1/28-2022/1/31クリア状態
図鑑捕まえたで完成済み(タスク全クリアではない)
感想
本作の意義
ポケットモンスターシリーズとは今さら言うまでもなくゲームボーイ時代から続く人気IPであり、初代から『収集』『育成』『戦闘』というゲームの根幹は完成されキャラクターの足し算で続いてきたシリーズである。
ここにおいて『育成』という柱はそれ単体で機能することではなく、『収集』したモンスターを『戦闘』に出すまでの繋ぎであり、大きな遊び方としては2つ用意されているシリーズだと思っている。すなわち図鑑完成を目指す『育成』型の遊び方と、ネット対戦で最強を追い求める『戦闘』型の遊びである。
2つの柱を考えると『戦闘』がシリーズを重ねる中でタイプの追加、特性の追加、技ごとの物理•特殊の区別化、トリプルバトル等ルールの追加、メガシンカ、Z技、ダイマックスとシリーズ毎に新しい概念や快適にするための改良と力が入っているのに対して、『収集』と言う観点ではポケモンを野生のバトルで捕まえるというのは初代から変わらず、ボールの種類もルビサファ、ダイパでほぼ出し切ってしまい代わり映えしない状態になっていた。特に効率を考えると初手クイックボール以外はもうしなくて良いような状態であり、近年はシンボルエンカウントの導入でややましになったものの目当てのポケモンが出るまで草むらを動くという退屈な作業から進歩していなかった。ポケモンGOやレッツゴーシリーズでは捕獲方法にメスが入ったものの、本編剣盾では従来通りで変化をしないように思われていた中、本作アルセウスは完全に捕獲•収集に舵を切ったポケモンでありその意味で非常に重要な作品である。
なお本作はゲームフリークからは本編と認識されているようである。
(公式サイトにおいて『ポケットモンスター』シリーズという扱いになっている)
捕獲部分の感想
今作は主人公をフィールド上で自由に動かしながらその場でモンスターボールを投げられる仕組みになっており、戦闘を行わなくてもポケモンを捕まえられる仕組みとなっている。未進化の弱いポケモンであれば相手に発見されてもボールを投げることが可能だが、ある程度強いポケモンに対しては発見されるとボールを問答無用で跳ね除けられるようになり基本的にはスニークを前提とした作りになっている。
またオープンフィールドらしくマップにはポケモンだけでなく石材や木のみなどが点在しており自分のポケモンに取ってこさせることができ、得たアイテムをクラフトすることでモンスターボールやアイテムを作成することができる。
スニーク効率を上げるためにポケモンを引き寄せる餌や身を隠すためのめかくしだまなどが作れるのだが、実際はフィールドに用意されている草むらと普通の木の実で十分事足りるバランスになっている。
弱いポケモンなら適当に出て行って適当にボールを投げ、強めでちゃんと欲しいポケモンにはしっかり隠れて餌でおびき寄せて後ろからボールを当てて捕獲率を上げると言うプレイはシンプルながらもついついハマってしまう楽しさに満ちていて従来のポケモンとは一線を画す面白さが捕獲部分に詰まっている。
一方で従来的な戦闘の中で相手の体力を削ったり状態異常にして捕獲すると言うやり方も選択でき、特に後述するオヤブンポケモンや伝説のポケモン相手はほぼフィールドだけでは捕まえられないため強敵にはしっかりと戦闘をこなして捕獲というのがメリハリにもなっている。(結局初手クイックボールというのがつまらなかった一番の原因なのだろう)
図鑑タスク
『収集』という事をメインに据えたゲーム性をよりユーザーに意識させるため、従来のポケモン図鑑と違う図鑑タスクというシステムが採用されている。ポケモンを捕獲するだけではなく、同じポケモンを何体も捕獲する•ポケモンが技を使用するところを見る•餌をやるなど様々な条件でポケモンに対する調査度が増えていき、ある程度ポイントを貯める事で始めてポケモン解明という事になっている。
このポイントは個別だけではなく累計として主人公の団員ランクも決定し、ある程度ないと新しいフィールドにいけなかったり、新しいボールを使えるようにするためにランクを上げる必要がある。
個人的な体験ではストーリーの進行に対し団員ランクが足りないため足止めされるということは起きなかったが、ネットでは引っ掛かっている人もいるようだ。元々戦闘が好きでストーリーはチュートリアル、殿堂入りタイミングでも図鑑は20匹くらいという人ほどそうなりがちなのだろう。2軸の楽しみ方があっただけに片方しか興味なかったプレイヤーは自分には合わないとなるゲーム性だと思われる。
図鑑タスクそのものはゲーム性を考えると必要であるし埋めるのはなかなか楽しくあるが、技を見るであったり倒した数であったり正直作業感が感じられるミッションになっていて全てを埋める気にはなれなかった。基本的には見つけた新しいポケモンはとりあえず捕まえるようなスタンスであればストーリー進行に問題はない。
正直生態系という意味ではやや作り込みが浅い本作なので難しくはあるだろうが、例えば温泉に入っているポケモンとかが見られたりするので、そのような特定行動に対してポイントがあればより楽しめたのではないかと思う。調査員という設定なのだからカメラでもつけて写真でポイントになれば(それポケモンスナップじゃんはともかく)楽しいのではないだろうか、次作以降に期待したい。
マップ
現代の3dグラフィックスからすると正直物足りないというレベルではあるのだが、新しいアイテム(今作ではライドポケモン)でフィールドの今まで行けなかったところに行けるようになるという一種メトロイド的な要素で、クリアしたマップでも再訪する喜びがあるというツボはきっちりと押さえており高低に飛んだマップが用意されている。新しい場所に行くと新しいポケモンが待っているのでマップが広がる段階では常にワクワクする楽しさに満ちあふれている。なにせフィールドに沢山いるポケモンが可愛くてカッコよくてそれだけでもう半分は満足しているようなものである。大きさが実際のサイズである事も今までのシリーズにはあまり無い光景で、これがポケモンの世界なんだなと感じさせられる。(シリーズ重ねてホエルオーとか出たらどうなるんだろうね)
一方でポケモンを利用しないと移動できない高低を作りたかったせいか、徒歩での移動はちょっとした坂でも速度が異常に遅くなったりと不便な作りが目につく。
また技術力の限界のせいだと思うがポップインが目立って発生する。それだけであれば見た目だけなので良いのだが、空を飛んだりすると地上のモンスターが描画されていなかったり、収集物が見えなかったりと次に行いたい行動が見えないため不便な面が目立つ。ここは次作以降で改善してほしい。
イベント戦闘
ストーリーの大きな流れとして各地に存在するキング•クイーンと呼ばれるポケモンが凶暴化しているから宥めてほしいというようになっているが、宥める方法としてポケモンバトルではなく主人公を動かしての戦闘となっている。
はっきり言ってゲームフリークの技術力ではこの戦闘を作りきれておらず、PS1世代のようなカクついたローリング•避けて鎮めるためのアイテムを投げつけるというだけの作りでありあまり楽しくはない。後半のキングはかなり攻撃速度を上げていたり、よくわからない初見殺しをしてきたりするので普通に負けてしまうこともある。
また失敗点として途中で相手が弱ったときにポケモンバトルを仕掛けて勝利する事で相手を宥めることができるが、キングが普通に強いことや死んだポケモンに経験とが入らない事•ぶっちゃけ普通に3d戦闘してた方が早い事から要素が死んでおり、これを採用するならポケモンバトルしないとゲージが減らなくなるとか強制的にポケモンバトルに移行するとかの工夫が必要だったように思う。
厳密にはこれとは違うが、クリア後の伝説のポケモンは通常のフィールドにいるもののすぐにはボールを投げることもバトルすることもできず追いかけっこをして相手に障害物をぶつけてスタンさせる事で初めてポケモンバトルに移行することができるようになっている。方向性はこちらの方が良かったのではないか。
(ただしこちらに関しても最後の方のトロス系はめちゃくちゃ面倒でつまらなかったのでゲームフリークにアクションセンスがないから失敗しそうだが)
ポケモンバトル
バトルに関しても本作はかなり従来と異なったものとなっている。『収集』に目を向けるために要素を削ろうとしたのかはわからないが、ポケモンの特性やアイテムを持たせる機能は無くなっている。
さらに大きなシステム変更としてターン性で無くなっており、早い行動であれば2回連続してコマンドを実行できたり逆に遅い行動であればそのあと相手が2回行動をしてきたりとなっている。このシステム自体は面白さは感じるが、これに伴ってトレーナー戦闘では相手を倒した後は次のポケモンに基本的に殴られるせいで、ほぼ1体ずつお互い死んでいく戦闘になりがちであったりするなど練りきれていない印象を受けた。
更に重要な問題点としてフィールド戦闘でもトレーナー戦闘でも相手が複数匹という状態になりえることがあげられる。本作のダメージ計算がなんか歪に感じるのだがレベルが相当離れてる雑魚からのダメージもかなり痛く、複数相手になった場合簡単に自分のポケモンが戦闘不能になってしまう。また相手のターンが長く続くということでもあり非常にテンポが悪い。
そもそもの話であるがフィールドでは複数自分のポケモンを出せるのになぜ戦闘では一体しか出せないのか、フィールドならともかくトレーナー相手でそれをするのはどうなんだと非常に不快で残念な点である。従来のダブルバトルではあった地震などの複数の敵に当たる技もなく突貫的に作ってバランスはなんも考えていなかった感が強く戦闘に関しては低評価にせざるを得ない。
それを開発もわかっているのか、本作は通信交換はできるものの通信対戦はできないようになっている。
やり込み要素
やりこみとしてあげられるのはサブイベントのコンプリート•ポケモン図鑑の完成•図鑑に伴う団員ランク上げかと思われる。
サブイベントは捻りのないお使い作業でしかもターゲットを複数選択するができなかったりするため快適さが無く煩わしい。
ポケモン図鑑完成に関してはフィールドにいるモンスターに関しては特に不満なく最後まで楽しめたが、一部のモンスターはフィールドに長くいると現れる時空の歪みというランダムイベントの中でしか出現せず、時空の歪みが現れるのは20分くらいかかる•出現するポケモンはランダムなどの仕様で正直面倒になってしまったところはある。最初は貴重なアイテムやレアなポケモンが出るため素直に喜んでいたのだが、後半特定のポケモンが残っているような状況ではイラっとが勝ってしまう。生態系的にも理由付けも無いので面倒なだけで色々残念だなぁと思ってしまう部分。(現在は交換も活発なので、ネットを活用すればそこまで厳しくは無い)
総評
最も成功しながら死ぬほどマンネリしていたIPを変えてみせるぞという開発の意気込みが伝わってくる実験的なタイトル。
目指していたであろう捕獲に対する楽しさという点では成功しているものの、技術力の低さゆえの問題や3d自由に動けるようになったから入れてみた練り込み不足なボス戦•調整不足でバランスや快適性が酷い戦闘など手放しで絶賛できるような仕上がりでは無い。
個人的には元々『収集』が好きなタイプだったので非常に楽しめたが、戦闘が好きな人には不満が大きいだろうということも理解できる。
今後のシリーズ展開を従来シリーズとレジェンズシリーズにするのか、それとも従来シリーズにも今作のような捕獲要素を入れていくのかは分からないがどちらにせよ今作で培われた捕獲の楽しみは捨てないで欲しいと思う。
楽しさも欠点も非常に明確なタイトルなので是非短所を改善して、長所をより伸ばしたタイトルが続くことをとても期待する楽しい作品だった。
点数:82点(戦闘好きとかだと60点くらいになってしまうかも)
おまけ