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DWSIM:PH図の書き方(ヒートポンプの補足)

DWSIMでのPH図の書きかを説明します。PH図は、X軸に比エンタルピー(orモルエンタルピー)、Y軸に圧力をプロットしたものです。

以前に書いたヒートポンプの話で登場した図です。冷凍サイクルなどの検討をするときには、TS図よりもPH図のが、直接、エンタルピーをもとめれるので一般的には利用されると参考文献にあります。

DWSIM v6.4.7(執筆時)

以下は、DWSIMの紹介です。

以前に書いた、ヒートポンプの計算例です。

DWSIMでの設定

Compounds:イソブタン

Property Package:Peng-Robinson EOS

フロー図は、Material Stream一つだけです。

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設定ファイルは、以下になります。取り扱いは自己責任でお願いします。

PH図の描画

ゴールは、以下のような図を書くためのデータをDWSIM上でつくることです。

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Material Streamの設定についてです。Flash Spec(指定する自由度)は、圧力と蒸気モル分率です。PH図なので圧力は指定できるようにとPH図の線は、気相と液相のラインになります。囲まれた範囲は、気液が存在する領域になります。

プロットは、気相と液相の単相になる切れ目のラインになります。

図がPH図なので、Flash Specは、PHを指定するモードがよさそうですが、状態がどうなるかは計算してみないとわからないとなります。

圧力と蒸気モル分率を指定する方法だと、蒸気分立を0 or 1で固定して、圧力(P)を変えて、エンタルピー(H)の計算結果をえることができます。

Enthalpy and Vapor Fraction(HVF)という自由度のセットは不可能です。

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臨界圧力を確認してみると3640kPaと登録されています。3640kPまでを計算の上限値として検討します。

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まずは、気相側のラインを書いてみる。

Material StreamのVapor Phase Mole Fraction に 1を入力、確定する。

メニューより、Sensitivity Analysisを選択する。

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以下のSensitivity Analysis画面が開く。Case Manager欄のNewボタンを押しケースを作成する。

Independet Variablesタブで、Objectに設定したMaterial Stream、Propertyは、圧力を指定する。Lower Limitは、10 (kPa)、Upper Limitは、3640(kPa)で、100点刻みとした。

以下の図は、設定後の画面になる。

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Dependent Variables タブに移る。Variableを選択し、+ボタンを押して、Material Stream、を選び、Propertyは、Specific Enthalpy(Mixture)を選択する。Mixtureにしておくと気相、液相どちらになっても値が出力される。

以下の画面は、設定後になる。

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Resultsタブに移る。Start Sensitivity Analysisボタンを押すと計算が始まる。

以下の画面は、ボタンを押した後である。計算結果のテーブルをクリックしてCtrl+Aで全データ選択、Ctrl+Cでクリップボードコピーができる。

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コピーした値をGoogle sheetsでプロットしたものが以下である。

PがY、HがX軸になるように、位置を入れ替えている。

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続いて液相の場合を計算してみる。

Flowsheetに戻り、Material StreamのVapor Phase Mole Fractionを 0 (液相)とする。

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Sensitivity Analysis画面に戻り、特に設定は変えずに、ResultsタブでStart Sensitivity Analysisボタンを押して計算を開始する。

以下のように結果が得られる。同じくこの値もコピーする。

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Sheetsでプロットしてみた。液相側では、3506kPa, 132.67℃(臨界温度 134.7℃はである)で、急激に比エンタルピーが上がってしまう結果がでた。モデル上の誤差だととらえている。

この図上に操作点をプロットしてサイクルを追ってみるとよい。

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まとめ

冷凍サイクルを検討するときに役に立つPH図の書き方を整理した。

臨界点付近は、少しあやふやな結果がでているが、それ以下の領域で確認するのであれば、イメージは作れる程度の図はできていると思う。

所感

実際検討したいときには、媒体として利用できる物質の詳細なデータは必要である。

商用でもプロセスシミュレーターに初期に設定されている物性データ、モデルパラメーターは、広く一様にフィットするように設定されているケースが多いと予想している。

実際に検討したい領域に対して十分な精度が担保できているかは、事前に確認の必要がある。

このような機能を使って教科書に出ている図などを再計算、描画してみるのも面白く、勉強になるとおもう。

参考文献

J. M. Smith, H. C. Van Ness, M. M. Abbott, Introduction to Chemical Engineering Thermodynamics 7th, McGraw-Hill, 2005, P.317 - P.326

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海辺のケミカルエンジニア
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