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【episode25】結婚式2日前のツインレイ心の声


私は、会社勤めをしながら結婚式の準備を進めていた。
沢山の友達を呼ぶため、挙式は80名、披露宴は160名を超え、二次会は100名を予定していた。私は33歳ベンチャー企業勤務、少年彼氏は28歳老舗企業勤務の、普通の会社員二人でその人数はめずらしかったらしい。


披露宴の160名のうち、新郎側60名、新婦側100名というのは、少々バランスがおかしいとホテルのプランナーさんに言われ、少年彼氏を知っている私の友人の席次の配置を工夫し、席次表には「新郎新婦友人」と載せることになった。なぜ?と疑問に思ったけれどルールには従うことにした。


それだけ招待客が多いと、結婚式の準備にも様々な配慮が大人数に必要になってくる。引出物の種類も細かく分け、前後、当日の宿泊の手配まで、とにかく私の中の「繊細さん」かつ「完璧主義」が発動していた。引出物の種類をA〜Qまで分けた人はこれまでいません!とホテル側から言われたことを覚えている。


遠方から来る親族や友人たちのこと、小さな子どもたちがいる家族には、子どもにも式に協力してもらう演出、誕生日が近い参列者への演出、司会、映像、写真、ブーケ、引出物など、これまでお世話になってきた方々に頼んで持込料がかかっても持ち込んだり、会場装花、ドレス、小物、ヘアメイク、BGMも一つ一つ自分で決めた。招待状も席次表も席札もこだわって選んで持ち込んだ。


今振り返ると、自分の細かさ具合が少々笑える。
忘れてた、漏れてた、気づいていなかったということを極端に恐れていたように思う。



直前のブライダルエステやネイルも完了した
結婚式直前の2日前、ツイン君に食事に誘われた。
誘われたのは前日だったか当日だったか記憶が曖昧だけど
オシャレなイタリアンのお店だったことは覚えている。



テーブル席で向かいあい食事をしてしばらく経った時、彼が切り出した。


「今日は、謝りたいと思って呼んだんだ。」

「謝るって何を? 何かしちゃったの?」

「その、なんというか・・・
そっちの方が先に日取りを決めてたのに
こっちが先にしちゃってごめん。」

「え、そこ気にしてたの?大丈夫だよ。」


「いや・・・なんて言ったらいいのか・・・
俺が先にするのがケジメのような気がしたんだ。」


(どういうことなんだろう?
何が言いたいんだろう?)
と、私はぼんやり考えていた。



そして、彼は小さな声でつぶやいた。
「一緒になれなくてごめん・・・」


「え?・・・・」


私はその時、どういう返事をしたのか覚えていない。
彼が伝えたいことがわからなくなったからなのか
表面上の日取りの話だけを受け取って
「そんなこと考えてたの〜?大丈夫だよ。」とその場を取り繕った気もするし
「わかった。仕方ないよ。」とおさめた気もする。


私たちは会話をする時に、肝心な単語を言わない。
「結婚」とか「彼氏彼女」とか、他の誰かを連想するような言葉を、あえて使っていなかった。

「ただそれを、式の前に伝えなきゃと思って。」
とツイン君は言った。



どうして今さらそんなこと言うの?
先に結婚してごめんってこと?
ケジメってなに?
他の人を選んだのはあなただよね?
あなたは他の人と結婚したんだよね?
なのにどうして今さら謝るの?



浮かんでくる言葉は声に出せないまま
聞き分け良くわかったような顔をしながら
私は何もわかっていなかった。
彼が伝えたいことがわからなかったし
そもそも私の結婚式は2日後なのだ。



帰り道には他愛もない話をしながら
今まで通りの二人に戻った。
「じゃあ2日後ね。」と明るくバイバイした。


本当は、私はどこかでわかっていたのかもしれない。
それなのに長い間、他の人を選んだ彼を、心の中で責めていた。
ツインレイだと気がついた時、この日のことが浮かんだ。
「一緒になれなくてごめん・・・」という言葉も
わざわざ2日前に伝えてくれたことも
二人にとって大切なことだったんだ。



本音を見ないように気がつかないようにして
それより目の前の現実だけを見て
私は結婚式の日を迎えた。



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