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ゲシュタポの刑務所跡 テレジーン小要塞を訪ねる ~チェコ旅行2023夏(14)
ナチによって消し去られたリディツェ村をひととおり回ったあと、ナチが街ごと強制収容所にしたテレジーンへと向かいました。今回の旅のメインイベントの一つです。
リディツェ村のことも、テレジーンのことも、だいぶ前に知って、本を読んだり、授業で話したりはしていましたが、負の遺産とか虐殺の現場を訪ねる旅をし始めたのは数年前。チェコのそうした場所には、ほとんど行けていませんでした。
今回こそは行くぞと固く心に決めていましたが、車を出していただいたおかげで、この2か所を一気に回ることができました。連れて行ってくださった三浦一郎先生ご夫妻に深く感謝します。
テレジーンは、多くの人が訪れる場所になっているようで、広い駐車場には、こんな風にお店もズラリと並んでいました。ちょっと驚き。
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駐車場から「小要塞」には歩いてすぐです。小要塞は、その名の通り、もともとはマリア・テレジア時代に、軍事要塞として造られ、牢獄として利用されてきました。あのサラエボ事件の犯人も投獄されています。
1939年にチェコを占領したナチ・ドイツは、ここを政治犯や抵抗運動活動家などの監獄として使いました。大戦中に小要塞に入れられたのは3万2千人、多くはチェコ人でしたが、ソ連やポーランド、ドイツ人なども連れてこられたそうです。病気や虐待、処刑などで2600人が死亡しています。
小要塞の入口に至る前庭には、1945年9月に国民墓地がつくられ、この監獄や、隣接のユダヤ人ゲットー、近くのリトムニェジツェ強制収容所で亡くなった1万人の犠牲者の遺体が安置されました。
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テレジーンに入口には、日本語のリーフレットもあります。A4両面の一枚ものですが、これが大変役立ちました。何しろ、よく保存されていて、見学できる場所がたいへん多いのです。順路や場所の説明があるとなしではずいぶん違います。わずかな額なので、ぜひ入手されるといいと思います。
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アウシュヴィッツにも掲げられている、「ARBEIT MACHT FREI (働けば自由になる)」の標語看板は、テレジーンにもありました。字体も同じですね。B の上部が下部よりも、やや大きいパターンです。なるほど、アーチ形に合うデザインなのかと変に納得しました。
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すべての場所の写真を載せることはできませんので、雰囲気をよく伝えられるものに絞って載せておきます。
この9番の場所は、ソ連の人や、抵抗運動家、反ユダヤ人令違反者などが収容されていたそうです(リーフレットより)。
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テレジーンでとらえられていた著名な人々に関する展示もありました。
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戦後、共産党政権によって処刑されてしまう、女性政治家、ミラダ・ホラーコヴァーも、一時期、ここに収容されていました。
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ミラダ・ホラーコヴァーが収容されていたことを示すプレート
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こちらは、防火用水池としてつくられたものですが、看守らの家族がプールとして使っていたそうです。
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看守のためにつくられた映画館だった建物では、テレジーンに関する記録映画が上映されています。
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以上は、小要塞のごくごく一部です。
ここは、一通り回るだけでも2時間ほどかかります。展示のすべての説明を読んでいると、もっとかかると思います。たっぷり時間をみておく方がよいです。
入口付近にはお店があって、書籍や飲み物などが売っています。あまり時間が残っていなかったので、ささっと一冊だけ買いましたが、もっと買い込めば良かったかな。
この時点で、すでに5時。ゲットーとして使われていた大要塞の方へ移りました。
つづく。
チェコ旅行2023夏シリーズはこちらからまとめて見ていただけます。