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1994年まで犯罪とされていたドイツの同性愛者たちの証言 ~映画「ナチ刑法175条」(1999年制作)
5月中旬、京都では一週間だけ上映された映画「ナチ刑法175条」をアップリンク京都に、観に行ってきました。
なぜこの映画、一週間だけなんだろうと不思議だったのですが、てっきり新作と思っていましたが1999年制作のデジタルリマスター版なのだそう。それで短期間だったのでしょうね。
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「刑法175条」といえば、ドイツに1994年まで存在していた、男性の同性愛を禁じる条項です。
授業でホロコーストの話をするときには、ユダヤ人だけではなく、男性同性愛者も捕まって強制収容所に入れられたこと、そして、その根拠となった規定が、ほんのついこのあいだまで存在していたことを言うようにしています。多くの学生が、その事実にショックを受けます。
でも、ナチが政権をとっていたときに同性愛者への迫害が激化したのは事実としても、条項自体はナチ党がつくったわけではないし、戦後も長く残っていて、そのために弾圧された人たちがいたわけなので、邦題に「ナチ」とつけるのはどうかなぁ、という気がします。
とはいえ、原題と同じ「刑法175条」では、日本では何のことがわからなくてお客さんを逃すでしょうし、「ナチ」とつければ、いつのことで、誰かがきっと酷いことがされていたんだろうなと想像できるので、仕方ないのでしょうね。
実際、映画の中身も、ナチが政権をとる前は、同性愛者たちは堂々と交流し、生き生きとした文化を育んでいたのに、ナチの時代になると、とんでもなく非道な弾圧が加えられたというものでした。
6人の男性同性愛者の証言のなかには、楽しかった青春時代の話も出てきますし、そこまで暴力的な迫害にあわずに済んだ人も出てきます。が、とんでもない拷問を受けて心身に深い傷を負った人も出てきます。刑法には盛り込まれなかった女性同性愛者も一人、登場します。
酷い目、悲しい目に遭った人たちが、その後も長い間、誰にも言えず、辛い思いを抱えて生きてこられたという証言を聞いていると、迫害や差別をした側よりも、それらを受けた人たちの方が、ずっと辛い思いをしつづけるということに腹立たしさを覚えます。
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この条項は、戦後も有効であったので、同性愛者は脅迫の材料にもされました。ナチの残党を追及したユダヤ人の検事を主人公にした映画にも、その問題が盛り込まれています。
ところで、この映画の監督は、アメリカの政治家で、ゲイであることを公言してサンフランシスコの市政執行委員に立候補し、4度目の挑戦で当選した、ハーヴェイ・ミルクのドキュメンタリー映画を製作しています。そちらは未見なのですが、ショーン・ペンが主演した劇映画「ミルク」はとても感銘を受けたので、ドキュメンタリーの方もぜひ観ようと思います!
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