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また魅力的なジョージア(グルジア)映画が! 「ブラックバード、ブラックベリー、私は私。」(2023年)

今週は映画観賞ウィーク。「ブラックバード、ブラックベリー、私は私。」を京都シネマに観に行きました。

ジョージア(グルジア)の村で地味な日常品店を営む独身の女性の話という地味そうな作品ですが、新聞などの映画評も好意的、そして京都シネマでも「好評につき続映決定!」とのこと。それは逃せない。

これまで映画館で見たジョージアの映画はどれも雰囲気があって好きなタイプだったので、前日にマイベストシートを予約して、いそいそとお出かけしました。


村の谷間の野生のブラックベリーで作る自家製ジャムをこよなく愛する主人公のエテロは、ある日、ベリー摘みの最中に現れたブラックバード(鳥の黒つぐみのこと)に見とれて、うっかり崖から滑り落ちてしまいます。

自力で這いあがったエテロですが、帰り道で自分が川で溺れて死ぬ幻想を見ます。

生きていることを実感したエテロは、店に配達に訪れた男性ムルマンに発情し、48歳で初めて男性と関係を結びます。

村の人に知られないよう、こっそりドキドキと忍び合いを重ねる2人は、初恋どうしのようでほほえましい。

そんなエテロの忍ぶ恋を知らない人たちは、彼女のことを「男を知らない」「太っている」などと無遠慮な悪口を投げつけます。

それに対して、まったく動じず、反撃するエテロ。

私はひとりで生きてきたし、ひとりで生きていく。結婚や肉体関係があることが女を幸せにするのではない。

毅然としていて、カッコイイんです。

実際、エテロは、何年もひとりで店を維持し、儲けは(そんなにないだろうけど)きっちりドルでたんす貯金。ご近所さんの娘(今どきの若い子)に外国語の商品説明の意味を教えてもらったりする、自立した経営者です。

店もガラーンとしていて華やかさはないけど、さっぱりと清潔そうだし、模様替えも自分でやってきたらしい。

お家もきちんと片付いていて、秘密のデートに着る服にはアイロンをかけ、キッチンの棚には自家製ブラックベリージャムの瓶が並んでいる。

自分の家を建てて、川を見ながら本を読んで、英語を勉強して楽しく過ごすという老後の生活のビジョンも明確です。

エテロに対して、独り身だとか、太っているだのなんだのとか言う人たちは、彼女を蔑むことで自分の人生を肯定しようとしているのでしょうが、彼女らこそ、家父長制の呪いから逃れられずに悶々としたものを抱えているのでしょうね…

そんな村の女性たちは、エテロのお母さんがエテロを生んでほどなく癌で亡くなったことも見てきた人たちで、エテロの兄が暴君であったことも知っています。エテロが父や兄の世話のために人生を費やしたという同情心を持っています。

ほとんど家族のような、親戚のような感覚でいるようで、何を言っても許されると思っている節があります。

閉鎖的な村落共同体だと、こんな感じなのかなあ。そりゃあ若者は都会へ出て行きたがるよなあ…

とはいえ、エテロも彼女たちに対してやはり仲間意識はあって、ひどいことを言われて決裂しようとも、自ら歩み寄って仲直りします。

そのあたりも、この主人公の強さ、魅力です。

エテロのつぶやきや、ご近所さんたちの井戸端会議からわかってくるのは、エテロの父が、妻の死の原因がエテロの妊娠出産にあると思っていたであろうことや、兄が彼女にひどく当たっていたらしいこと、恋心まで抱くくらい素敵だった同級生女子がクズ男にいいように扱われて捨てられた苦い思い出、家族が亡くなってひとりになったエテロの家に押しかけてきて襲おうとした男など、たしかにひとりで生きようと思うよね、という経験。

家族のケア、DV、モラルハラスメント、レイプ未遂…というような古今東西の女性たちに押し付けられてきたことが、エテロの周りにもあったのです。

それらを直接ではなく、だんだんと浮かび上がってくるようにつくられているところもうまいなと思いました。

エテロと、突如、恋人関係になった配達員のムルマンですが、彼はもともとエテロのことをいいなと思っていたようで、肉体関係ができてからもエテロに夢中なよう。孫までいる中年?初老?男性ですが、いつまでも恋はできるのですね。(だけどムルマンって妻帯者ではないのか? そのあたりはっきりしなかったけど…)

一日でひと月の稼ぎが得られるトルコに出稼ぎにいくことにしたムルマンは、エテロにも一緒に来ないかと誘いますが、自分は自分で生きるときっぱり断るエテロ。やっぱりかっこいい。

ところが、エテロの身体に不安な兆候が…

エテロは携帯もスマホではなく、新しいことに飛びつくタイプではないのですが、若い人とはけっこううまくコミュニケーションをとっています。隣人の娘は、髪の毛を面白い色に染めてロックを大音量で聞くような今どきの子ですが、エテロとは仲良し。

2週間に一度仕入れに行く町の雑貨屋さんを共同経営しているらしい若い女性カップルにも、老後の夢を語っています。

彼女らがエテロの不安に対処して手を貸してくれるのは象徴的に思えます。

最後の最後まで見て、いろいろ思いを巡らせてほしい映画です。

たびたび登場するお菓子たちも、この映画の華です。

自家製ブラックベリーのジャム、食べたい。私も以前住んでたところでブラックベリー植えて、ジャム作っていたんです。

そして、ジョージア行って、ナポレオンケーキ(ミルフィーユ)を食べたい。それもでっかいの! ( ´∀` )

ジョージアとナポレオンケーキに関する記事みつけました♡


こちらにジョージア映画の鑑賞記録一覧載せています。なんか他にもあった気がするけど…


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