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ナスのカポナータ風
本日はナスのお話です。
フランスでは日本のナスに比べて一回り以上大きいサイズのナスが一般的な大きさです。
見た目の大きさのインパクトに反して手頃な価格で、そして通年スーパーやマルシェで購入できるためナスが好きな私にとって嬉しい限りです。
フランス産のナスは南フランスやワインで有名な街ボルドーのあるアキテーヌ地方で生産がされていますが、国内産よりもスペイン産やイタリア産のナスのほうが低価格でフランス産よりも多く出回っています。
何故ならばヨーロッパ産のナスの4分の3はスペインとイタリアで生産されているからだそうです。
過去の記事【至高のラタトゥイユ】の作り方の中でも、ナスの特徴や調理の仕方について触れていますが今回は、フランスで購入できる大きなナスの特徴を活かした一品を紹介させていただきたいと思います。
ナスの特徴は良く言えば、淡泊な味でクセがない野菜ですが裏を返せば味の特徴があまりないのがナスの特徴でもあります。
油との相性がよく、 味もしみこみやすいです。加熱すると食感がなめらかになり、私の大好きなナスの煮浸しはナスの特徴を活かした素晴らしい料理だと思います。
そんな料理人の表現したい味わいに寄り添ってくれる野菜の素晴らしい一面をナスは持ち合わせています。
今回私が紹介する調理法はナスのカポナータ風です。カポナータと聞くと先程紹介したラタトゥイユと混同されてしまうかもしれませんが全くの別物です。
ラタトゥイユはフランス南部のニースの郷土料理で夏野菜の煮込みです。
トマトの旨味・酸味と玉ねぎとパプリカの甘みといった野菜から溢れてくる特徴を活かした料理です。
一方カポナータはイタリアのシチリアの料理ですが発祥や語源については不明な部分が多いようです。元々は魚料理で16世紀まではメインの料理として食べられていたそうです。
しかし当時の庶民には高級品の魚。そこで代用品としてナスを使ったカポナータが発明されたとされています。
味わいの特徴は甘みと酸味です。
カポナータと言っても、シチリア風(海老が入ります)、ナポリ風(スライスしたバケットのうえに野菜のマリネ をのせる)、パレルモ風(タコが入ります)といろいろあるそうですが、ナスのカポナータを参考に味付けを組み立てていきます。
酸味はケッパー、白ワインを使って特徴を作り、甘味は砂糖、レーズンを用いて満足できる味わいに変化していったのだと言われています。
そんな甘味と酸味に特徴のあるナスのカポナータ風をYouTube動画内でも紹介させていただいております。
材料はナス・玉ねぎ・ニンニク・トマトを軸に酸味を補う調味料にリンゴ酢、甘みを補うためにメープルシロップとデーツを使用しました。
デーツとは日本で【ナツメヤシ】と呼ばれており、北アフリカや中東では主要な食品の一つとして広く栽培されています。
フランスでは一般的にスーパーやマルシェで容易に購入が可能な食品で、またフランス料理の食材としても使用されています。
天然のドライフルーツとして黒糖や干し柿のような深い甘みが味わえそのまま食べても美味しい食材です。
そしてもう一つ香気成分を多く含むメープルシロップも使用して豊かな風味を甘みとともに作り出します。
今回のナスのカポナータ風の調理のポイントは甘みを他の食材から自然に作り出す他に、ナスの大きさを活かすために予め下処理を丁寧に施すことがポイントです。
1つ目は半分に切ったナスに、ナスの総量に対して1%の塩を両面にふっておきます。20分ほどするとナスから水分が出て同時にアクを出すことができます。
ナスはそのまま油で加熱調理すると沢山の油をスポンジのように吸い込んでしまうので仕上がりの段階でナスから油がにじみ出てきて料理が油っぽくなってしまうリスクがあります。
予め塩をふって水分を出しておくとナスはスポンジの効果を失うので、次の工程で両面をオリーブオイルで焼き色を付ける際に、沢山オリーブオイルを使用しなくても綺麗に香ばしくナスの両面に焼き色をつけることができます。
ナスに焼き色をつけたら鍋で蒸し焼きにして、ナス自体から出てくる水分で弱火でゆっくりと火をいれます。
ナスに火が入ったら、鍋からナスを取り出し同じ鍋を使用して甘みと酸味に特徴のある玉ねぎとトマトのコンポートをつくります。
鍋に再びオリーブオイルを加えたら玉ねぎニンニクのみじん切りを炒めます。
玉ねぎがしんなりしてきたら小さく角切りにしたトマト・リンゴ酢を加えて煮詰めて酸味のカドが取り、角切りにしたデーツ・メープルシロップで甘みを補います。
コンポートの甘み・酸味のバランスが整ったところで火を入れたナスを鍋に戻してナスにコンポートをなじませながら温めていきます。
熱々のまま召し上がる美味しさもありますが、粗熱が取れてからコンポートの甘みと酸味が馴染んだ、とろっとするナスの食感と味わうと格別な一皿として夏にぴったりな一品です。
甘味や酸味は料理において重要な要素です。
『これは美味しい!!』
『これはいい!!』
だけではなく自分の表現したい料理の根本的な部分に日々意識を巡らせていれば、自分が何を表現したいのか、何を大切にしているのかが明確になり、料理の楽しみ方も無限に広がってくると想いながら調理した今回の一皿です。
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Chef ichi
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