「Geroさんは喋るのがうまい」と思うのはなぜか。――推しの活動休止期間を乗り切った方法――
「ダメだ、推し早く帰ってきてくれ。」
10月1日、推しが3週間から1ヶ月の活動休止を発表した。
事前に配信で「喉の手術するかも!一時的に喋っちゃダメだからちょっとお休みするかも!」と聞かされていたこともあって、「余裕でしょ〜」なんて考えていた。
手術は10月5日。
私は10月14日、Xの鍵垢にこのような投稿している。
復活配信があったのは10月26日。
限界を感じて10日近く、どうやって生きのびたのか。
「なぜ、推しはこんなに喋るのがうまいのか」についてずっと考えていた。
推し、Geroは歌い手である。歌がすこぶるうまい。そして顔がいい。
そんな大好きな彼の「どこが1番好きですか?」と聞かれたら「ワードセンス」と即答する。
語彙の選び方、コメントの拾い方、話の組み立て方といった言語的な部分がすごく長けているように思う。
もちろん抑揚や間、身振り手振りといった非言語の要素も然りだが。
歌ってみたの文化で重要なのはおそらく後者だ。
声質もそうだし、どう歌うのか、いわゆる表現力は欠かせないだろう。もちろんこれもめちゃくちゃ好き。
つまり、大好きなワードセンス、言語的な部分を味わうためには、雑談が繰り広げられる配信が不可欠なのだ。
「SNSの投稿じゃダメなのか」と質問が飛んできそうである。
実際、少ないけれど「手術無事終わりました」という報告とか、リプ返祭りとかいわゆる生存確認できる機会、推しが紡ぐ言葉に触れる機会はSNS上にあった。
ただ、違う。(好きなのは大前提)
そもそも言葉には2種類ある。
話し言葉と書き言葉だ。
SNSは話し言葉に近い表現を使用することが多い例外的なものといえるため、代替できると考えられそうだ。
しかし、強いていうならば配信に比べて言葉を紡ぐのに時間を使うことができる。
配信やライブMCはその場で、リアルタイムで言語化が行われるためSNSよりも直感的な感じがする。
なんて言えばいいんだろう。難しいな。
例えば、事前に考えてきた原稿を読みあげるといった配信があったとしよう。
もちろん顔はいいし、推しが紡いだ言葉だし、素敵なのかもしれない。
でもなんか「そうじゃなくない?」ってなるよね。
だってそれ、相手が誰でも一緒じゃん。
ライブのMCとかって、その日会場に入った2000人だからこそ生まれたエピソードとかが聞けるから良いと思うんです。その日その場限り。
だから、事前に練られた言葉を浴びるのももちろん良いけれど、その環境だからこそ生まれた、発された言葉を浴びるのが私は好きなんだと思う。
めちゃくちゃ曲解だけど、ほら、私宛的な?
ね?
あと単純に声が好きなのもある。非言語要素だが、SNSと比較した際には欠かせない要素といえる。
「今までに配信が全然ないことなんてあったでしょ〜!」と言われそうだ。
あった。が、補えるものが今まであったのだ。
肉チョモランマである。
毎週4本投稿されていたことを考えれば、配信がなくても喋るGeroさんはたくさん見れていたのだ。
私は3年前に推し始めたので、肉チョモランマという恒常供給がすでに与えられていた。
なんと贅沢だったか。
私は生活が苦手だ。
料理、洗濯、掃除、電気代の支払い。
気づいたら何も出来ないまま大学生になっていた。
そんなつまらない生活に刺激をくれたのがGeroさんだった。
話すことが大好きだった私は、一目見て、なんだこのイケメンで話が上手い人は……。こんな風に喋れるようになりたい!と、釘付けになった。
魔法みたいだった。
そんな魔法がかけてもらえない状態になった私は、そんな魔法みたいなGeroさんの喋りについて考えてみようと思った。
「Geroさんは喋るのがうまい」と思うのはなぜか
喋りには、一対一で行われるコミュニケーション、対話、会話と呼ばれるものと、一対多であるプレゼンテーションと呼ばれるものがある。
今回は、Geroさんの喋りの中でも、漫画や映画紹介を中心に掘り下げる。
以下、この文章内では「Geroさんの喋り」を雑談配信などで、漫画や映画を紹介するときの話し方のこととする。
コメントを見ながら要素を付随していくこともあるが、一対多のプレゼンテーション的要素の方が大きいと言えるだろう。
以上のことから、Geroさんの喋りを一種のプレゼンテーションと仮定し、プレゼンテーションにおいて重要な4つの要素に沿って検討する。
オンライン研修と自己啓発学習の両立を実現する定額制オンライン学習サービスを提供する「Schoo」のWebサイトにプレゼンに重要な4つのスキルが紹介されている。
ひとつひとつについて、Geroさんの喋りと照らし合わせてみた。
(1)論理的思考能力
論理的思考力というのは、全体像を把握しながら物事を体系的に整理し、矛盾や飛躍のない筋道を立てる能力のこと。
プレゼンテーションにおいては、相手を納得、説得させるために必要は不可欠な力といえるだろう。
Geroさんの喋りにおいて、「相手を納得、説得させる」とは、「漫画や映画を読みたい!見たい!」と思わせることだ。
「全体像を把握しながら」
→物語の内容全体を把握すること
「物事を体系的に理解し」
→内容を噛み砕くこと
「矛盾や飛躍のない筋道を立てる能力」
→噛み砕いた内容をしっかり伝える能力
と言い換えることができる。
つまりGeroさんの喋りにおける論理的思考力とは、紹介したい映画や漫画の全体像を把握して過不足なく伝える、要約力のことである。
2022年3月7日、YouTubeライブ(「Geroが顔出しでお話をします。」)にて、漫画『青野くんに触りたいから死にたい』について2分ほど話している。(52:30あたり)
内容の構成は次のとおり。
漫画1冊読むのに10分から15分かかると考えると、それを2分という短い時間で説明できるのは要約力に長けていると言えるだろう。
また、最初のイラストについてと漫画のあらすじが、最後のおもしろいポイントと対比されるように話している。
↑
↓
『青野くんに触りたいから死にたい』という漫画のユーモアと狂気が織りまぜられている描写を短時間で見事に話している。
私は実際にGeroさんのこの配信を見て、普段自身が読むジャンルの漫画とは全く違うが気になって読んだ。
これらのことから、Geroさんは論理的思考力に長けているといえるだろう。
(2)相手を惹きつける話し方
相手を惹きつける話し方とは、論理的思考力が言語的要素であるのに対し、非言語的要素だといえる。
目線や、声(大きさ、速度、高低など)、表情(身振り手振りも含む)などのことだ。
例として、YouTube、肉チョモランマのサブチャンネル「肉チョモ秘密基地」に投稿されている「Geroがオススメする絶対見た方が良い映画5選!!!!!」を挙げる。
とりあえずこの動画、最初から最後まで24:26、全部見てほしい。
この中でも、特に分かりやすく惹きつけられる話し方をしている部分を抜粋する。
強調については言うまでもないが、スピードを急に落としたり、間を作ったり、トーンを下げたりすることでその部分を目立たせることができる。
例えば授業で先生が話しているときに、がんばってノートにメモをとっていたと想定しよう。自分の目線はノートに向いている。
先生が話すのを急にやめたら、あなたはどうする?
「何?」って思って、顔をあげて先生を見つめるんじゃないかな。
このように急な変化は、自然と注目を促すことができる。Geroさんはそれをうまく使って1番面白い場面や概要を話しているのだ。
また、Geroさんは演技を混ぜながらあらすじを話す。
例えば、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』の紹介(16:40あたり)の電話の演技。
テンポの良さがめちゃくちゃ気持ちいいというのを実際に演じて、見てないのにテンポが良くて面白いと思わせる。
また、『震える舌』のあらすじ(21:00あたり)を話すときの破傷風の演技。
癲癇が起きる子の様子、その家族の狂った様子、とにかく怖いというのを演じながら伝えている。
実際に話を聞いていためいちゃんも、「もういいすもん、もう全部味わった気持ちでいる」と述べていることからも、Geroさんが演じることで内容を濃く伝えているかが分かる。
これらのことからGeroさんは相手を惹きつける話し方の能力にも長けているといえる。
(3)相手が求めているものを把握する力
プレゼンテーションは、相手を説得する必要がある。そのため相手に明確なメリットを提示する必要が伴う。しかし、相手が求めているものをしっかりと把握できないと的外れなメリットを提示してしまうことになりかねない。
映画や漫画の紹介について聞き手が求めていることは、あらすじとどう面白いのかの2点だと考えられる。
さらに、この2点をネタバレをせずに伝えることが求められる。
2024年10月3日のツイキャス「手術前の最後の配信。」にて、映画『ファニーゲーム』を紹介している部分を例にあげる。(1:59:10あたり)
とにかく気分が悪くなる映画、視聴者が嫌な気持ちになる映画だよというのを皮切りに、具体的にどう嫌な気持ちになるのか話している。
という具合に説明している。
あらすじ、そしてどう面白いのかがとても分かりやすい。そしてここで注目したいのが、話す順番である。
結論(Point)
理由(Reason)
具体例(Example)
結論(Point)
といういわゆるPREP法で構成されているのだ。
簡単にまとめると、
PREP法は、論理的で説得力のある話し方ができるとビジネスシーンでよく使用される方法である。
Geroさんはこれを、おそらく無意識に取り入れて、何が面白いのか、あらすじにそって話している。
この聞き手が求めている2点を同時に話しているから、短くまとめることができるのだと思う。
そしてネタバレについては、ここまでで挙げている例から分かるように、1番気になるところ、起承転結でいう、転が起こる手前で「…って話です」とまとめるのだ。だからこそ、聞き手は「どうなるの?」とか「見たい!」と思うのだろう。
このような話の構成力、技術から、Geroさんは相手が求めているものを把握する力にも長けており、それを形にするのもうまいといえる。
(4)臨機応変な対応力
プレゼンテーションは相手を説得させるという目的があるため、聞き手の反応によっては途中で内容や話し方を変える、ときには質問に答えないといけないこともある。
Geroさんの喋りにおける、この対応力とはずばり、リスナーのコメントである。
2024年9月27日のツイキャス「皆のコメントを読むおじさん。」にて『極悪女王』、『SHOGUN 将軍』を紹介する部分を例に挙げる。(20:10、26:25あたり)
という具合に、コメントの反応を伺い、プロレスや歴史について説明を補いながら話を進めている。
また、Geroさんが自分からこの映画、漫画おもしろいと話すだけでなく、コメントで◯◯って見ましたか?とリスナーから話題に挙げられたものについて紹介することもある。
2021年1月27日 ツイキャス 「感謝を伝えたいんです。」の50:00あたりで以下のようなコメントを拾っている。
ここから、「簡単に説明すると…」と『メメント』のあらすじを話している。
これらのことから、Geroさんは聞き手の反応を踏まえて臨機応変に話していると分かる。
これを可能にしているのは、圧倒的な知識量と記憶力だと考えられる。
以上(1)から(4)を踏まえて、Geroさんはプレゼンテーションにおける重要なスキル4つに長けているといえる。
だから、Geroさんの喋りを聞いたとき、「話すのうま、、」って思うし、「その作品見てみたい!」になるんだと思う。
どうですか。
こんなに大真面目に、Geroさんの喋りについて分析?してみて自分でも鬼長いな、誰が読むんだこれって思ってます。
でもこれをすることで、活動休止期間を乗り越えられたんですよ、おもしろいでしょ。
「推しは推せるときに推せ」って言葉があるけれど、推しとの別れって急にくるものですよね。一時的だろうと永遠だろうと。
そんなときに自分が推しの好きな部分について、なんでだろう?って考えてみると案外時間はあっという間にすぎるし、それもまたいい思い出になるもんだと私はこの1ヶ月ですごく感じました。
もちろん、休止してなくても考えてみると凄くおもしろいと思うし。
あなたは、推しのどこが好きですか?それはなぜですか?