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堀米雄斗選手ははなぜ五輪の女神に愛されたのか

パリ五輪、スケートボードの堀米選手、劇的な逆転金メダルでしたね!
一度の優勝でも凄いことだと思いますが、五輪で連覇できる選手って特別な何かを持っていると思います。

その中でもスケボーの堀米選手。実は東京五輪の時に魅せられて、密かに注目していた選手で、今大会で唯一、スケボーだけは予選から表彰式まで全てリアルタイムで見ていました。

おそらく、見ていたほとんどの人が「ああ、この人には叶わない」「この人持ってるな」と思われたと思いますが、単なる運ではなくて、結果が出る人、結果が出る時って法則というか条件が整っているのだと思います。

今回、大会前から薄々感じていましたが、決勝の舞台で実感し、試合後のインタビューで、やっぱり、と思ったのでまとめておきたいと思います。

1:ブレずに自分の道を歩む

金メダリストになると、突然環境が変わると思います。突然有名になって人目に晒されることも相当なストレスになりますし、周囲からチヤホヤされるようになったり、華やかな世界に身を置く機会が増えたり、美味しい話を持ってくる人もたくさん。良い人もいれば、良くない人もいると思います。

活動の幅が広がること、視野が広がるという良い面がある一方で、場合によっては誘惑に負けたり、巻き込まれたり、道を見失ってしまうことにもなり兼ねません。トップにいる人にアドバイスできる人は少なく、自分では気付きづらかったり、孤独になる人も多くいます。

堀米選手も競技以外のいろんな話が進んで、自分を見失うことがあった、と話されていました。自分を見失いかけている自分を自覚し、ブレずに自分の道に戻れることって、とても難しいことだと思います。これが出来る人は強いですね。

2:開拓者精神

初優勝は勢いやチャレンジ精神で普段の実力以上の力が出ることもあれば、先にいるトップの人を目指して、それを超えた時に頂点に立つことができると思います。本当に難しいのはそれを維持することで、トップで居続けるには自分の前に誰もいない道を進む必要があります。

柔道のような伝統的な競技でも、相手が技を研究してくるのでさらにその上を行く開拓者精神が必要だと思いますが、スケボーは東京五輪が初の競技。さらに、日本では東京五輪の時点ではまだスポーツとしての認識は薄く、街中での遊びという感覚だったと思います。そんな中、堀米選手は高校を卒業してすぐ単身アメリカに渡っているのですから、ものすごい開拓者精神がありますよね。

3:苦手分野でもトップクラス

前回の東京五輪は45秒のRUN2回と、一発の大技Best Trick5回のうち、高得点の4回を合計した得点が採用されていたのですが、これは素人の私が見てもRUNの方が集中力も体力も大変なのに高得点が出づらく、一発の大技が得意な人の方が有利じゃない?と思ったものですが、案の定、今回ルールが改定されてどちらも必要になりました。

堀米選手はこのパークの方が苦手だったそうで、この克服に相当な時間を費やしたとか。ところが本番のプレーは、予選も決勝も1本目で確実にミスのない演技。2本目は1本目より高得点を狙って技をあげたのかミスが出ましたが、決勝でも4位。そんんなに苦手で苦労したとは全くわからない、安定した演技でした。
超一流の選手は、苦手分野でも一流。だから得意分野を発揮してトップになれるのですね。

4:器に相応しい人柄と生き方

今まで、スケボーに対してあまり良いイメージを持っていない人もいたと思います。たとえば、近所の公園で練習されて迷惑や危険と思っている人や、ちょっとアウトローなファッションや言葉遣いに関して、自分の子供は関わってほしくない、と思う人など。

スケボーは元々ストリートカルチャーなので、その面を全て消して真面目な競技にすることはないと思いますが、五輪の競技として定着するには、もっと広い層に受け入れられる必要があります。

そして、個人ではなく国の代表として見られるのが五輪。そこで注目を浴びる人って、実力だけでなく人柄や生き方も、天から選ばれているような気がしてなりません。

おそらく、東京五輪の堀米選手を見て好印象を持った人や、こんな爽やかな青年がやっているなら自分の子供にも!と思った人は多いと思います。

そして、スニーカーに家紋!ご先祖様の加護もあったことでしょう。

堀米選手は東京五輪の時、すでに LAに練習場付きの自宅を持っていることが話題になりましたが、その理由は「これから始める子どもたちに夢を持ってもらいたいから」と。
当時22歳。既に我欲だけでない社会性が備わっているの、すごいですね。

5:自分を信じ、無の境地に入ることができる

今回、最後の1本での大逆転でしたが、それまで3回失敗。アメリカの2選手はノリノリで大技を次々と決めていて、堀米選手が逆転するには、この日だれも出していない37点以上という高得点を出す必要がありました。ここまでの最高得点が35点代ですから、金は無理、と思う人も多かったと思います。

が、5本のうち2本決めれば良いルール。おそらく、堀米選手自身、決勝のBest Trickで決める技は1本目に決めた技と最後に決めた技を綺麗に決めて優勝しか見ていなかったのではないでしょうか。2本目に着地できた時には採点拒否をし、それ以降は2本目と同じ技で、他の選手の演技の合間に練習しては転んでいる姿がカメラの端にたびたび映し出されていました。

この姿を見て、この技を決めれば逆転できる自信があるんだろうなー、と思っていました。

そして、最後の演技の直前。
静かに目を閉じて、呼吸を整えて、目を開けた瞬間、ふっと微笑んで、静かに滑り出しました。この瞬間、「無」だったと思います。私はこの時点で確信。
おそらく、実況のアナウンサーさんも直感的に感じたと思います。

そして、全く乱れのない完璧なジャンプと着地。
その瞬間、「優勝だ」と感じた人は多かったのではないでしょうか。
本人の雄叫びと、会場の歓声はまるで優勝が決まったかのような光景でした。

余計な雑念がなくなって無になった瞬間、人は奇跡のような神技を起こすことがあります。「自分を信じる力」という表現もできますが、無になるにはかなりの集中力と精神力が必要で、五輪の選手でもテレビから感じることができる事は滅多にありません。(何度も見たことがあるのは羽生結弦選手くらいです)

「最後はイヤホンはしていたけれど音楽もかけずに自分に集中した」「無だったと思います」と、ご自身も自覚されていました。

もちろん、そこまでの練習や努力も必要で、精神力だけで「引き寄せ」ができるような簡単なものではありませんが、最後の僅差のとき、奇跡が起きる時は無の状態に自分で入れるかどうかだと思います。よほど普段から精神も鍛えているのか、集中しているうちに自然とできるようになっているか、どちらかでしょう。

ただ運が良かっただけではない逆転劇。
稀に見る「五輪の女神に愛された」と言いたくなるドラマのような連覇でした。
 
五輪金メダル連覇の偉業に並ぶ功績を出すのはなかなか難しいですが、誰でも彼の行動の良い点を少しでも取り入れれば、自分の人生に奇跡のようなことを起こすことはできます。良い点は見習って、幸運の女神に愛される生き方をしたいものですね。

4年後はアメリカ、ロスアンジェルス五輪。これもまた運命を感じます。
メダルだけに限らず、その他の場面での活躍も楽しみにしたいと思います。




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