忘れられない一本/Paper Mate Clearpoint
Paper Mateという文具会社がある。
米国の歴史ある文具メーカーの一角、そのシャーペンを私は使っていた。
私は一時期、米国シアトルに在住していたことがある。2年ほどのものであったが、当然現地校や日本語学校に通うわけである。そこで私が使っていたのが、このPaper Mate Clearpointである。
その名の通り、全てのパーツが透明色となっており、そして数本セットでポップなパッケージに入って売られることが多いこのシャーペンは、地味なシャーペン(先端が格納されなかったり、消しゴムがそのまま蓋になっている)やボールペン(1.0mmで「細密」を名乗っている)と鉛筆(中心から芯がずれていて、削った先に芯が出てこない)を使っていた当時の私にとって、非常に心躍る見た目をしていた。
ここまでであれば、特筆するものもなく、noteの記事として書くこともなかっただろう。しかし、このシャーペンには、記事として公開したくなるようなある大きな特徴があった。
サイドノック式。ぺんてるシャープペン研究部の山田さんが愛してやまないドットイーティントと同じ機構、同じ見た目をしていたのである。
むろんドットイーティントともピアニッシモとも違うこの一本であるが、なんとなく書かなくてはならない、といった感覚を感じて、こうしてNoteに綴っている。
このクリアポイントは、アメリカの製品、それも安物である。日本製とは比較にならない作りだった。7年以上の時を経てラバーグリップは剥がれ、キャップは割れ、ロゴも剥がれ落ちてしまっている。だが、この一本には強烈な魅力がある。
1cmほど、米国の製品だから、0.4inchと表記するべきか、の太さに、少々短めに見える先端部はまるで事務用ボールペンのよう。0.7mmの芯と全プラ中空の軽さ、そして何よりのサイドノック式と相まって非常にさくさくと書けるシャーペンなのである。
この一本で、私は2年に及ぶ米国在住のうちに数多の勉学をこなしてきた。
数学の成績で学年の一位を。
TOEICで640点を。
のちの英検で2級を。
小学生だった私を心躍らせたクリアポイントは、今でも机の上で出番を待っている。