硬式テニス TFCC損傷
硬式テニス選手がTFCC(三角線維軟骨複合体)損傷を抱えると、特にリスト(手首)の安定性が低下し、ショットやラケットの操作が制限されるため、戦術的にいくつかの影響が生じます。以下に、TFCC損傷が戦術に与える具体的な影響を示します。
サーブ動作の分析ポイント
インパクト時の手首の角度と安定性
TFCC損傷があると、手首の尺屈(小指側に曲げる動き)や回内・回外が制限されるため、インパクト時の手首の角度が通常より不安定になることが多いです。インパクト時に手首が小刻みに揺れていたり、尺屈や橈屈が抑えられている場合、痛みや不安定さが影響している可能性があります。
スナップ動作の制限
手首のスナップを使うとTFCCに負荷がかかるため、サーブ時にスナップを意識的に避けている選手が多いです。これによりサーブの威力が落ちるため、スナップが制限されているか、サーブ全体の動作が小さく見えるかを確認します。
トスの位置
TFCC損傷により手首や前腕の動きを制限している場合、無意識に体の近くや横側にトスを上げ、手首にかかる負担を減らす傾向が出ます。これによりサーブの高さが不足し、ネットミスやスピードの低下が起こりやすくなります。
フォロースルーの角度と大きさ
痛みをかばうために、フォロースルーが通常より短く、手首が固定されている場合があります。フォロースルーで手首が十分に伸展されず、体に引き寄せられるような小さな動作になっている場合、TFCCへの負担を避ける動作の影響と考えられます。
肩や体幹の使い方
手首の負担を減らすため、肩や体幹を過剰に使ってサーブを打つ選手が多いです。肩の動きが通常より大きくなり、体全体を利用してボールに力を伝えようとしている場合、手首の負担を避ける代償動作の一環と見られます。
サーブ時の表情や動作後の手首への反応
サーブ後に手首を押さえたり、痛みを感じている表情をする場合、サーブ動作中にTFCC損傷が影響していると考えられます。プレー中の痛みのサインを観察し、どの動作で痛みが出やすいかを確認します。
TFCC損傷による戦術的影響
スライスやドロップショットの使用頻度減少
TFCC損傷により手首の回外や回内が痛みや不安定さで制限されるため、スライスショットやドロップショットの精度が落ちます。これにより、相手を前後に揺さぶる戦略が制限されやすくなります。トップスピンショットのパワー低下
フォアハンドやバックハンドでトップスピンをかける際に、手首の安定性が重要です。TFCC損傷があると、インパクト時の力が十分に伝わらず、トップスピンのパワーや回転量が低下します。結果的に、ボールが浅くなり、相手に攻撃の機会を与えやすくなります。バックハンドの安定性低下
特に片手バックハンドの場合、手首の安定性が重要ですが、TFCC損傷により不安定さが増すことで、バックハンドショットの精度と威力が低下します。ラリー中、バックハンド側を狙われるリスクが増えます。サーブのリストスナップ減少
サーブ動作では手首のスナップが重要ですが、TFCC損傷によりこの動きが制限されると、サーブの威力とコントロールが低下します。また、スピンサーブやスライスサーブなどの変化球が打ちにくくなり、相手にリターンされやすくなる可能性があります。相手へのボールコントロールが難しくなる
手首の不安定さが影響し、ストロークの方向や深さのコントロールが難しくなるため、相手をコート内で左右に揺さぶる戦略が制限されます。結果として、相手に有利なコースに返球する場面が増えるリスクがあります。
TFCC損傷の選手をトレーナーが動作分析ポイント
インパクト時の手首の安定性
ショットのインパクトで手首が安定しているか、不安定になっているかを観察します。特に、手首が小刻みに動いてしまう場合、TFCC損傷の影響が出ている可能性があります。フォアハンドとバックハンドの尺屈時の動作
尺屈(小指側に手首を曲げる動き)時に痛みや不安定感があるか確認します。フォアハンドやバックハンドで尺屈が避けられている場合、負担を回避しているサインです。トップスピンやスライスショット時の回外・回内の制限
トップスピンやスライスを打つ際に回外(前腕を外側に回す)や回内(内側に回す)の動作が制限されているかを確認します。手首や前腕の動きが抑えられている場合、TFCC損傷の影響が考えられます。バックハンド時の肘位置と手首の使い方
特に片手バックハンドで、手首の角度が通常より不安定に見えるか確認します。TFCC損傷がある場合、肘が体に近くなる傾向があり、手首の使い方が制限されます。サーブ時のスナップの強度
サーブでスナップが弱く、スピードやスピンが不足しているか観察します。手首の負担を避けるため、スナップを控える選手はTFCC損傷の可能性が高いです。痛みのある動作後の手首の保護反応
ショット後に手首を軽く押さえたり、頻繁に手首を回したりする動作が見られる場合、痛みをかばう行動が考えられ、TFCC損傷の特徴的な反応と言えます。
TFCCストレッチする筋肉
円回内筋
前腕の回内を担当する筋肉で、特にラケット操作時に過度の負担がかかることがあるため、柔軟性が重要です。肘を伸ばし、手のひらを上に向けた状態で前腕を軽く回内させ、ストレッチを行います。
筋トレで鍛える筋肉
1. 前腕屈筋群
主な筋肉: 尺側手根屈筋、橈側手根屈筋
役割: 手首の屈曲と尺屈をサポートし、TFCCへの負担を軽減。
トレーニング方法
リストカール(手首の屈曲運動)
軽いダンベルやセラバンドを用意します。
前腕を固定し、手のひらを上に向けた状態で、手首をゆっくりと曲げます。
ゆっくりと元の位置に戻し、10〜15回を1セットとし、2〜3セット行います。
負荷が軽すぎる場合は、徐々に重量を増やしていきます。
尺屈リストカール
ダンベルを手に持ち、前腕を机などに固定します。
小指側に手首を曲げる(尺屈)運動を行います。
10〜15回、1日2セットから始めます。
2. 前腕伸筋群
主な筋肉: 尺側手根伸筋、橈側手根伸筋
役割: 手首の伸展と橈屈をサポートし、ショット時の手首の安定性を向上。
トレーニング方法
リバースリストカール(手首の伸展運動)
手の甲を上に向けてダンベルを握り、前腕を机に固定します。
手首をゆっくりと上に持ち上げて、前腕伸筋を収縮させます。
10〜15回を1セットとし、2〜3セット行います。
橈屈リストカール
手のひらを下に向けて前腕を机などに固定し、親指側に手首を曲げる(橈屈)運動を行います。
前腕伸筋が働いているのを意識しながら、10〜15回を1セットとします。
3. 回内・回外筋群
主な筋肉: 円回内筋、円回外筋
役割: 前腕の回内と回外動作をサポートし、ラケット操作の安定性を高めます。
トレーニング方法
回内・回外ダンベルエクササイズ
軽いダンベルを持ち、肘を90度に曲げ、前腕を回内・回外させます。
ゆっくりとした動きで、回内と回外を10〜15回ずつ行います。
1日2〜3セット行い、動作が滑らかになることを意識します。
ハンマーカールでの回内・回外強化
軽いハンマーカール(手のひらを体に向けた状態でダンベルを持ち、上下に動かす)を行い、回内・回外筋も同時に鍛えます。
10〜15回を2〜3セット。
4. 手関節の等尺性トレーニング
役割: 手首の安定性向上と、腱への負担軽減。痛みの少ない範囲で筋肉を収縮させ、安定性を鍛えます。
トレーニング方法
等尺性リストカール
手首を固定し、屈曲・伸展の力をかけながら手首を動かさないよう保持します。
各方向に10秒間保持し、1セットとします。これを1日3〜5セット行います。
手首に不安定さが見られる場合、反対側の手で軽く補助を加えながら行うと効果的です。
5. 肩甲骨周囲筋(僧帽筋、菱形筋など)
役割: 肩と肩甲骨の安定性を向上し、腕全体にかかる負担を軽減します。手首や肘の負担を軽減するためには、肩甲骨周囲筋群の強化が重要です。
トレーニング方法
バンドローイング
セラバンドを使用し、両手で持ちながら肩甲骨を引き寄せるローイング運動を行います。
ゆっくりと肩甲骨を引き寄せる動作を10〜15回、1日2セット行います。
肩甲骨プッシュアップ
通常のプッシュアップ姿勢をとり、肩甲骨の間を寄せるように体を上下させます。
肩甲骨の動きを意識しながら、10回を1セットとして1日2セット行います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?