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反復性膝蓋骨脱臼の術後テニス復帰選手の評価をする時の俺の頭の中身

硬式テニス フットワークへの影響

1. 側方動作(サイドステップ)の安定性低下

膝蓋骨が安定しないと、サイドステップの際に膝が外側や内側に動きやすく、安定性が低下します。

  • 影響: テニスでは、ボールに素早く反応するためにサイドステップが多用されます。膝蓋骨の安定性が不足していると、横方向への動きが不安定になり、スピードや俊敏性が損なわれます。また、膝にかかる負荷が増し、疲労や痛みのリスクが高まる可能性もあります。

  • 結果: 競技中に急な方向転換が難しくなり、守備範囲が狭くなってしまうことが考えられます。また、不安定さを感じることで、動作が慎重になり、反応速度が遅れる場合もあります。


2. 前後方向の動き(フォワードおよびバックワードステップ)の影響

膝蓋骨脱臼の影響で膝の屈曲や伸展が制限されると、前後のステップ動作がスムーズに行えなくなります。

  • 影響: フォワードステップで前方に踏み込む際や、バックワードステップで後退する際に、膝の伸展や屈曲が不十分だと、地面をしっかりと押し出せず、ステップのスピードと強度が低下します。特に、膝を大きく屈曲して勢いをつける動作が苦手になると、前進や後退の力が不足し、タイミングがずれやすくなります。

  • 結果: ボールに対して素早くポジショニングできず、特にネットプレーやディフェンシブな場面での対応が遅れやすくなります。また、膝への負担を避けようとするため、フォームが崩れ、他の部位に負担がかかることもあります。


3. ジャンプ・ストップ動作への影響

膝周りの筋力低下や不安定さは、ジャンプとその着地時に大きな影響を及ぼします。

  • 影響: テニスでは、スマッシュや高いボールに対してジャンプが必要となる場面があります。膝が不安定だと、ジャンプの高さや安定性が低下し、着地の際に膝が内側や外側に崩れやすくなります。膝を安定させるための筋力が不足している場合、着地の衝撃に耐えられず、膝にかかる負担が大きくなります。

  • 結果: 着地後にすぐに次の動作に移れず、反応が遅れることがあります。また、膝に過度な衝撃が加わるため、再発や他のケガのリスクが高まる可能性もあります。


4. 細かなステップワークのバランス低下

テニスのフットワークでは、細かく速いステップを頻繁に使います。膝蓋骨の安定性が低下していると、この細かいステップでバランスが崩れやすくなります。

  • 影響: 細かいステップでは膝を素早く動かすため、膝蓋骨が安定していないと、左右に不安定な動きが生じます。バランスを取るために余計な筋力を使い、早く疲労しやすくなります。

  • 結果: 動きのキレが失われ、スムーズな体重移動ができなくなります。特にラリーの際、細かくポジションを調整することが難しくなり、ショットのタイミングや精度が影響を受けやすくなります。


5. 体重移動と力の伝達効率の低下

膝蓋骨が安定していないと、下半身から上半身への力の伝達が効率的に行えません。

  • 影響: フットワークでは、下半身からの力を体全体に伝えることで、動作のスピードと安定性が保たれます。膝が安定しないと、踏み込んだ際の力が上半身に十分伝わらず、動きが鈍くなります。特に、サーブやストロークで力を発揮しにくくなり、ショットの威力が低下します。

  • 結果: 動作に勢いが欠け、ショットのスピードやパワーが不足するため、相手にプレッシャーをかけにくくなります。さらに、体重移動がスムーズにできないため、フットワークが制約され、コート全体をカバーするのが難しくなることもあります。


6. 持久力と疲労の早期発生

膝蓋骨脱臼の術後は、膝に負担がかかることで疲労が早期に発生しやすくなります。

  • 影響: 膝が不安定な状態でフットワークを維持することにより、膝周囲の筋肉が疲労しやすくなります。また、膝をかばう動作が増えることで、他の筋肉にも負荷がかかり、持久力が低下します。結果として、試合の後半でフットワークが鈍りやすくなります。

  • 結果: 疲労が蓄積することで、足が動かなくなり、反応が遅れたりフットワークが乱れたりします。これにより、正確なポジショニングが難しくなり、パフォーマンス全体が低下します。


7. 心理的影響によるフットワークへの悪影響

再脱臼に対する恐怖感が、フットワークにも影響を及ぼします。

  • 影響: 痛みや違和感が残ると、無意識に膝をかばう動きが増え、フットワークに慎重さが出ます。特に、急なストップや方向転換に対する心理的なブレーキがかかりやすくなり、思い切った動作が難しくなります。

  • 結果: ボールへの反応が遅れることや、プレーが消極的になる可能性があります。また、フットワークに不安を感じることで、試合全体への集中が損なわれ、パフォーマンスが低下することもあります。


理学療法士徒手検査

1. 可動域(ROM)評価

術後の膝関節の可動域(Range of Motion)を評価し、回復状況を把握します。

  • 膝屈曲可動域: ゴニオメーターを使用し、膝の最大屈曲角度を測定します。術後直後は屈曲制限が生じやすいため、リハビリが進むにつれて可動域が拡大するかを確認します。

  • 膝伸展可動域: ゴニオメーターで膝の完全伸展角度を測定します。完全伸展ができないと歩行や競技動作に支障をきたすため、膝が正しく伸びているかを確認します。


2. 筋力評価

膝関節周囲の筋力を詳細に評価し、筋力のアンバランスや不足を特定します。

  • 大腿四頭筋: 大腿四頭筋の筋力、特に内側広筋(VMO)に注目します。内側広筋は膝蓋骨の安定性に重要であり、筋力低下が再脱臼のリスクを高めるため、徒手抵抗テストを用いて筋力評価を行います。

  • ハムストリングス: ハムストリングスは膝の屈曲と安定性に関与しており、大腿四頭筋とハムストリングスのバランスを確認します。片脚立ちでの安定性も評価し、バランスの取れた筋力強化を目指します。

  • 股関節周囲筋群: 股関節外転筋(特に中臀筋)や内転筋の筋力を確認します。膝の側方安定性を強化するため、股関節筋群のバランスが重要です。


3. 膝蓋骨の可動性評価

膝蓋骨(パテラ)の可動性評価は、再脱臼リスクを予測するために不可欠です。

  • 側方の可動性: 膝蓋骨の左右方向の可動性を確認します。外側への過度な可動は脱臼リスクが高まるため、軽い抵抗を加えて可動範囲を測定します。

  • 上下方向の可動性: 上下の可動性も確認します。制限がある場合、膝蓋骨の動きが不自然になり、日常生活やスポーツ動作で不快感が生じる可能性があります。


4. 膝の安定性評価

膝関節の安定性は、靭帯や周辺組織の機能が十分かどうかを把握するために重要です。

  • 前十字靭帯(ACL)および後十字靭帯(PCL)テスト: 前方引き出しや後方引き出しテストを行い、膝関節の前後安定性を確認します。競技中の急な動作で膝が不安定にならないか確認します。
    ラックマンはACLを切らないように注意が必要

  • 側副靭帯テスト(MCL・LCL): 内側および外側側副靭帯の安定性をテストします。テニスのサイドステップ動作で膝がぐらつかないか評価し、内外側の安定性が確保されているか確認します。


5. 動作分析

テニス動作中の膝の使い方やバランスを分析し、リハビリがどれだけ進んでいるかを評価します。

  • サーブ動作: サーブ動作時の膝の屈伸を評価し、膝の屈曲と伸展がスムーズに行えているかを確認します。特に、膝が内側に崩れないか注意して観察します。

  • ラリーや方向転換動作: テニスでのラリーや素早い方向転換時の膝の安定性と耐久性を確認します。膝が内外にぐらつかず、バランスよく動けているかを評価します。


6. 膝蓋骨不安テスト(パテラアプレヘンションテスト)

膝蓋骨脱臼の再発リスクを評価するために、パテラアプレヘンションテストを行います。

  • 方法: 患者に膝を軽く屈曲させた状態で、膝蓋骨を外側に押し、患者が恐怖感や不安を感じるか確認します。恐怖感が強い場合、再脱臼リスクが高いと判断できます。


7. 歩行・姿勢分析

日常生活動作への影響を把握するため、歩行と姿勢を評価します。

  • 歩行評価: 歩行中の膝関節の動き、片脚でのバランス、膝の屈伸がスムーズに行われているかを確認します。術後は歩行が安定しにくいことがあるため、患者の歩行様式を記録し、改善具合を評価します。

  • 立位姿勢: 患者が立っている際の膝関節の位置や体重のかかり方を確認し、膝が過度に内側や外側に傾いていないかを評価します。立位での姿勢が崩れている場合、歩行や競技動作にも影響が出やすくなります。


8. 機能評価

テニス特有の動作に必要な機能を備えているかを評価します。

  • ジャンプ・着地動作: 片脚でのジャンプと着地動作で、膝が安定しているかを確認します。着地時に膝が内側に入るようであれば、筋力やバランスの改善が必要です。

  • サイドステップの安定性: サイドステップ動作中に膝が安定して動けているかを確認します。横方向への動きが不安定であれば、再発リスクが高まるため、筋力トレーニングやバランス訓練が必要です。


9. 筋の柔軟性評価

柔軟性が十分でないと膝蓋骨への負荷が高まり、再脱臼のリスクが増します。以下の筋肉の柔軟性を評価します。

  • 大腿四頭筋の柔軟性: 膝を屈曲させて大腿四頭筋の柔軟性を確認します。硬さが残っていると膝蓋骨の動きが制限されやすくなります。

  • ハムストリングスの柔軟性: ハムストリングスの柔軟性を確認し、膝の動きに支障がないか評価します。柔軟性不足が見られる場合、屈曲動作に負担がかかりやすくなります。

  • 股関節周囲筋の柔軟性: 股関節外転筋や内転筋の柔軟性を評価し、膝蓋骨に過剰な負荷がかからないように確認します。


10. 心理的評価

反復性脱臼後の不安感や恐怖感を軽減するため、心理的な評価も実施します。

  • 患者の不安感や自己効力感: 患者がどの程度テニスの競技復帰に対して自信を持っているか、不安感がないか確認します。不安が強い場合、心理的サポートや段階的な復帰計画を導入することが有効です。


11. 疼痛評価

術後の疼痛が残っているか、また痛みが動作中にどのように変化するかを確認します。

  • 安静時および動作時の痛み: 患者が安静時や歩行時に痛みを感じるかを評価


筋トレメニュー

1. 内側広筋(VMO)

内側広筋は膝蓋骨の安定性を高めるために最も重要な筋肉です。特に膝蓋骨を内側に引き寄せる役割を担い、外側への脱臼リスクを軽減します。

  • トレーニング例: クアドセッツ(膝を伸展させながら内側広筋に意識を集中)、レッグエクステンション(小さな角度での膝伸展)

  • ポイント: 内側広筋に意識を集中させ、筋肉がしっかりと収縮していることを感じることが重要です。


2. 大腿四頭筋

膝全体の安定性を高めるために、膝を伸展させる大腿四頭筋全体の強化が必要です。内側広筋とともに、膝蓋骨の正しい動きをサポートします。

  • トレーニング例: スクワット、レッグプレス、レッグエクステンション

  • ポイント: 初期は無負荷や軽負荷で始め、フォームに注意しながら膝に負担がかからないように実施します。


3. ハムストリングス

ハムストリングスは膝の後面で屈曲動作を担う筋肉です。膝周囲の筋肉バランスを整え、膝の動作を安定させる役割があります。

  • トレーニング例: レッグカール、ヒップリフト、ブリッジ

  • ポイント: 大腿四頭筋とバランスを取るように鍛え、過剰な力が膝蓋骨にかからないように調整します。


4. 中臀筋

股関節外転に関与し、膝の側方安定性をサポートする中臀筋は、膝蓋骨の安定においても重要です。テニスの横方向への動きにおいても不可欠です。

  • トレーニング例: サイドレッグレイズ、バンドウォーク、ヒップアブダクション

  • ポイント: 安定性向上のため、トレーニング時はバランスを意識してフォームを維持します。


5. 内転筋

内転筋は膝の内側への安定性を保つために必要な筋肉です。膝が内側に崩れるのを防ぎ、膝蓋骨の動きのコントロールを助けます。

  • トレーニング例: 内転筋マシン、サイドランジ、ボールスクイーズ

  • ポイント: 内転筋を強化することで、膝の側方への不安定さを改善し、安定性を向上させます。


6. ふくらはぎ(腓腹筋・ヒラメ筋)

ふくらはぎの筋肉は、膝の安定性と膝蓋骨の位置を保つ役割を果たします。また、下肢全体のバランスを整えることで、テニスでの足の踏み込みや反発力に貢献します。

  • トレーニング例: カーフレイズ、シングルレッグカーフレイズ

  • ポイント: 片脚でのカーフレイズを行うと、バランスが強化され、膝の安定性向上に役立ちます。


7. 体幹筋群

体幹の筋力が不足すると膝に不安定さが生じやすいため、腹筋や背筋などの体幹筋群の強化も重要です。膝の安定性を全身でサポートするため、体幹の筋力を高めることがリハビリに役立ちます。

  • トレーニング例: プランク、デッドバグ、バードドッグ

  • ポイント: 体幹が安定することで、膝が過剰に動かず、膝蓋骨が安定した位置に保たれるようになります。



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