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神の杖

あるところに争いばかりしている国が
あった
その国の人たちはみなものさしを
手に持っていた

そのものさしは人それぞれ目盛りが
違っていた
とても細かい目盛りのものさしもあれば
いい加減でアバウトな目盛りもある
中には目盛りの単位の違うものさえ

けれどそのものさしには
それぞれ赤い線で基準値の印が
ついていた

そしてその線から
足りなくても越えていても
お互いに自分が正しいと言い合い
争い続けていた

時にはそのものさしで叩いたり
突き刺したり
人はみな怯えて暮らしていた

ある日一人の人が神に祈った
争わないように
本当に正しいものさしを
与えてくださいと

すると神様はその人に一本の杖を
与えられた
やっと正しいものさしが与えられたと
喜んでみると
そのものさしには目盛りがなかった

その人はがっかりしたが
自分のものさしで人を測り
自分の基準に達していなければ
この杖で相手を打とうと考えた
これは神様の杖だから
正しい裁きをしてくれると

そしてその人は外に出てすべての
人を打ち始めた

ところがその杖で打つと
出てきたものは豊かな水
その水を飲んだり触ったりすると
争いは止み互いにものさしで
測り合うのをやめ始めた

そしてお互いに足りないところを
助け合い愛し合うようになった
その国に平安が訪れた

ものさしはまだそれぞれ持っている
けれど争いはしない

なぜならその水はずっと
尽きることがなかったから

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