双月 ㈠【藤林弦夜】-天下統一 恋の乱- ✎ 2 ちーかま 2024年6月13日 00:06 正式に伊達の忍になってからどのくらい経っただろう。俺は目の前に差し出された報酬を目の前にして、ため息を一つついた。「なんだ?不満か?」何時も堅苦しい小十郎さんが俺のため息に反応して、顔を引きつらせる。「不満つーかよ…美味い酒とか出てこないかなぁ…なんてな」「何?」立ち上がろうとする小十郎さんを、隣で黙っていた政宗が静かに制する。「弦夜の望みは酒か?」政宗が俺に真っ直ぐに向き合った。「んー?なんか今日は俺の『誕生日』ってやつらしいから、美味いもんでも出てこないかなぁーなんてね」「誕生日とはなんだ?」小十郎さんが眉間に皺を寄せながら、さらに俺に問いかけてくる。「俺もよく知らねぇよ。通りすがりの宣教師に聞いただけだからな。美味いもん食って良い日だって事しか理解出来なかったし」「よく知らない事を押し付けるな」「小十郎」黙って俺達の話を聞いていた政宗が口を開いた。「あれを弦夜に渡せ」「あれでございますか?」「そうだ」小十郎さんは渋々席を外し、俺は政宗と二人きりになった。「弦夜には確か双子の弟が居たな」「良く憶えてんじゃん。まぁ…たまにしか会わねぇけどな」「ならばその弟と飲むが良い」部屋に戻った小十郎さんが俺の前に酒瓶をドンッと置いた。「政宗様の秘蔵の酒だ」「えっ?マジで?」「あの廃寺で飲むには勿体無い酒だぞ。心して飲め」「はいはい。じゃあもう一つの面倒くさい仕事も張り切って終わらせて、さっさと帰るとするか」小十郎さんが背中越しに何が叫んでいたが、俺は無視して報酬を手に部屋を出た。俺は定期連絡だと言い、双子の弟の朔夜を廃寺の近くにある庵に呼び出した。俺は庭先を眺めながら、杯と酒を用意する。薄暗くなった空には上弦の三日月が浮かんでいる。杯に酒を満たすと、杯の中にぼんやりと月が映った。「朔…早く来いよ。秘蔵の酒を全部飲んじまうぞ」酒を煽ると、庭先に人の気配がした。「おー朔夜。早くこっち来いよ。美味い酒を飲ませてやるからよ!」朔夜編に続くꕀ꙳ いいなと思ったら応援しよう! チップで応援する #動画 #誕生日 #二次小説 #天下統一恋の乱 #恋乱 #恋の乱 #藤林弦夜 2