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 風呂に入らずに寝たので、朝四時ごろに起きて歯を磨いて風呂に入った後にクッキーを3枚食べて二度寝する。一時間以上間の空いた睡眠はそれは果たして二度寝と言えるのかという議題でならいくらでも議論できそうだ(2分くらいで終わるだろう)。正午に起きて電動歯ブラシの新しい替えブラシで歯を磨く。またクッキーを3枚食べる。今日の昼食はこれでいいかもしれない。22歳の若造が体型に気を使うなんてそんなマセた話誰も読みたがらないに決まっているが、最近の5大トピックのうちの一枠には確実にランクインするので、ともかく書いておく(あとの4つのトピックのうち3つはここには書けない)。年齢を重ねないとわからないこともあるようで(むしろほとんどの物事がそうだ、と22歳のマセガキがほざいている)、今気を使っている事柄の半分は後々になって全部無駄だったという事にもあるいはなりかねない。村上龍は確か「星に願いを、いつでも夢を」で、余裕をぶっこいて若い頃は一切歯を磨かなかったと書いている。普通にアホだ。年齢だけでなく生まれ落ちた時代も大いに関係している(むしろほとんどの物事がそうだ、と22歳のマセガキがほざいている)。彼は長崎の佐世保の生まれで、初期の作風から見て取れるように、若干ビートニクの影を残している。アンフェタミン、スピード、ハッシシ、LSD、メスカリンを筆頭に、その字面からも容易にヤバさが想定される危険ドラッグがまるで呼吸でもするかのように書き連ねられている。彼が歯を一切磨かなかったという事も想像に難くない。少し前、サイケデリックトランスばかり聴いていた時期があって、同時期に柄シャツばかり着ていた。希代のマセガキとしては、サイケデリックとファッションとをつなぐ要素として柄シャツを選択した自分の安直さには、少々赤面せざるを得ない。しかしながら誰にだって恰好のつかない過去の話の一つや二つはある。恥ずかしさの数だけ、人はタフになる(マセガキらしからぬ発言だ)。

 今日は夕方から用事があるので、その前に天王寺のジュンク堂に寄った。昨日親から5000円分の図書カードをもらったのでここはひとつ手荒い金遣いを披露してやろうと思ったのだ。僕の中のマフィア根性がざわつき始める。これといって誰かに向けて披露するわけではない。中島らも「アマニタ・パンセリナ」、ガルシア・マルケスの短編集、ブコウスキー「勝手に生きろ」、「死をポケットに入れて」、バロウズとギンズバーグの「麻薬書簡」をものの数分で選んでレジに持っていく。小金を持ち始めた成金が、今までよりワンランク上の店で仕立てのいいスーツの一式をざっと買い込むような感覚だ。せっかく新品で買うのだから読んだことがあるか無いかは別として、図鑑とも小説とも随筆ともつかない、しかも趣味の悪いものを買うのが一番だと思ったのだ。本来ヒップであるというのはつまりこういう事なのだ。あるいはこれは一歩先のヒップなのかもしれない。一昔前までのヒップスターの象徴というのは、例えばジョン・レノンにチェ・ゲバラ、そして手巻きタバコ、あるいはマリファナ、それから反体制と無頼と厭世。いかにも、だ。オーバーサイズを着て、YOASOBIなんかを聴いて、悟り顔を決め込むのでは的外れもいいところだ。僕の思うヒップというのは、あくまでトラッドな風体をして、ひたすらハードバップを聴いて、おとうさんにもらった図書カードで、趣味の悪い文庫本を河出文庫を主軸にしてバカみたいに買う、そういう事だ。タイトなジーンズが比較的似合う脚の形に生まれたことを幸運に思う。
 いよいよ6枚のクッキー以外何も食べずに18時を過ぎた。これもまたヒップだ(これは違うかもしれない)。少し前の、毎日のように友達に「食ってない自慢」をしていた時期が記憶にも新しい。具体的には、朝食べずに昼は板チョコのみ、夕食は普通に食べる、というものだった。その時は逆に体重が増えていた気がする。ちゃんと食べるようになった今と比較して3キロくらい重かったと思う。かなりストイックにやっていた。体重維持が目的というより、半ば格好つけでやっていたので、今でもそのことを友達にはイジられる。しかし僕はそれほど恥ずかしいとは思っていない(恥ずかしがってんだろうが、という友達の声が聞こえてきそうだ)。美食家で、還暦を迎えた今でもガキのように食い意地を張り続けている菊地成孔は、三か月の間に96キロを42キロに減らしたといういかにも彼らしい真実なのかどうか定かではない非凡な記録を持っているので、体質というのは不思議なものだと思う。多分彼は空腹すらもマゾヒスティックな快感として消化するのだろう。とんでもなく変態的な才能だ。

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