未知なることば「アムハラ語」を習ってみた話
こんにちは、チェ・ブンブンです。
新しいことを始めたくなる季節。春から大学生の方であれば第二外国語を学び始めるシーズンであろう。社会人であれば、新しい業務に追われたりするだろう。私の場合、先日からアムハラ語を勉強している。今日はその話をしていきます。
アムハラ語とは?
そもそも、アムハラ語とはなんなのだろうか?アムハラ語とはエチオピアで使われている言葉です。エチオピアは多民族国家で地域によって様々な言葉が使われている。国としてまとまるために作業語としてアムハラ語が使われているのだ。
エチオピアのほかに隣国であるエリトリアでアムハラ語が使われるため、話者はだいたい数億人程度と推測されます。
また、ゲエズ文字と呼ばれるポケモンのアンノーンに似た独特な文字で表記します。
そして言語学的にはセム語系に属するため、アラビア語やヘブライ語の親戚関係にある言葉となっています。
YOUはなぜアムハラ語を?
とはいっても、日本でアムハラ語を聞いたり見たりする機会はほとんどないと思います。私自身、アムハラ語を知ったのは今年に入ってから。では、どこでアムハラ語の存在を知ったのだろうか?また、どうしてアムハラ語を勉強しようと思ったのだろうか?
きっかけはX(旧:Twitter)でした。ある日、タイムラインを見ていたら、東京外語大学の関係者と思われる人物が「アムハラ語の受講人数が足りません」とつぶやいていました。
自分は話すことは苦手だが、語学は好きだったりする。なんとなく、やってみたくなって、次の瞬間には25,000円を支払い受講の申請をしていたのであった。
問題発生‼独学が急務となる
申し込んで気づいたのだが、今回受講したコースは昨年からの続きにあたる「初中級コース」。テキストの14課まで進めておく必要があり、1か月でそれなりのことを学んでおく必要があった。善は急げ、さっそくニューエクスプレスのテキストを購入してみた。
クセが強すぎる例文に単語
語学の教科書は、その地域の文化圏に沿った単語やフレーズが出てくる。フランス留学していたころに教科書で「ストライキ」にあたる"grève"が出てきたのは印象に残っている。我々が中学高校で英語を学ぶとき、序盤からこういった単語は出てこなかったはず。それだけフランスではストライキが日常茶飯事で、実際に留学中、いたるところでストライキが行われているところを目撃した。
ではアムハラ語はどうなのだろうか?
ためしにパラっとめくって例文を見てみた。
ジョークにしてもいきなり物騒なフレーズが飛び出してきました。ページをめくっていくと練習問題に行きつく。どうやら動詞を活用させる問題らしい。だが、その動詞が「盗む」「拉致連行する」「殴る」「奪う」とハードな単語が並んでいたのだ。
どれだけ恐ろしい国なんだと思いつつ勉強を始めてみました。
ゲエズ文字を覚えてみる
まず、アムハラ語を覚えるにあたりゲエズ文字を理解するところからはじまる。ゲエズ文字はハングル文字のように母音と子音の組み合わせにより微妙に文字が変化していくスタイルをとっている。
たとえば、「ハ行」は次のように表現される。
hä→ሀ
hu→ሁ
hi→ሂ
ha→ሃ
he→ሄ
hə→ህ
ho→ሆ
Uの字をベースとして変化させているのが分かるだろう。このパターンがいくつもセットであるので覚えるのが大変となっている。さらに、形は違っても同じ発音をする文字が何セットか存在します。
たとえば、haと発音する文字はሃのほかにኃがあります。なので単語を見た時にどう読めばよいか分からなくなったりします。基本的に綴りは、カタカナを読むように文字を並べればよいのだが、子音が並ぶときには、文字が脱落するといった特徴があります。
つまり、እደበድባለሁ(ədäbäddəballähu/私は殴る)といった文章を書くとき、ddəはdə(ድ)、lläはlä(ለ)として表現されるのです。
「あなた」を示す動詞の活用がいくつかある
一般的に英語以外の言語を学ぶと人称によって動詞が活用する。アムハラ語はフランス語における「あなた」のように相手との距離感に応じて動詞を変化させる。ただ、親しいかそうでないかで済んだフランス語とは違って、さらに相手が男か女かで動詞の活用が変わってくるのだ。そのため、Google翻訳といったアプリで「あなた(女)」に対する動作を調べたいときにとても苦労する。翻訳できないが明確に区別されている表現なのです。
単語が合体変化していく言語
また、アムハラ語の特徴として単語に目的語や助詞といったものがくっついて複雑になっていく特徴があります。ただ、それだけなら良いのだが、「私はあなた(女)を信じない」といったように目的語がついた否定形になると表現が難しくなる。
まず、日本語でむりやり当てはめてみると。
「ない(接頭辞)」+「私は信じる」+「あなた(女)を」+「ない(接尾辞)」といった構成となる。
これを踏まえて書くとአላምንሽም(アラムンシェム)となり、ひとつの動詞で文章が成立することとなるのだ。今まで、英語、フランス語、ロシア語に触れてきたが、それらにない文法で最初は戸惑いました。
特に、notのような否定を入れるだけで文章が成り立つ言語に慣れていたので、簡単に否定形が作れないことにもどかしさを感じました。
実際に授業を受けてみる
予習をしたうえで、東京外語大学のオンラインで授業を受けてみました。参加者の多くは前年度から継続されている方が多く、しかも語学ガチ勢や国際協力機関に所属しているような人ばかりで私のようななんとなく参加している人は皆無でした。
授業は、実際に先生が指名して文章を読んだり練習問題を解いたりするタイプの授業で緊張しましたが、丁寧に教えてくれました。どうしても独学だと、我流になってしまう発音の部分、特にアムハラ語で鬼門となる巻き舌のような音と鋭く鳴らす放出音は実際に授業を受けないと分からないものがありました。
授業では、アムハラ語の文化についても教えてくれます。例えば、コチョ(ቆጮ)と呼ばれるエンセーテを使った料理について解説してくれたり、エチオピアでは「乗るための手段が欲しい」と言われたら「お金をくれ」という意味だと教わりました。
最後に
まだアムハラ語を始めて2か月ですが、日常で全く触れない言語について学んでいると人生が豊かになる気がして楽しいです。
個人的には世界遺産検定マイスターを取った者として世界最初の世界遺産であるラリベラの岩窟教会群(ベテ・ギョルギス)に行ってみたいなと妄想を膨らませているのであった。
中目黒にはエチオピア料理屋クイーンシーバがあるとのことなので、まずはそこへ足を運びエチオピア文化に触れていこうと思います。