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優しさがマラカス鳴らしやってきた。

相変わらず青空さんちっとも姿を現さないよ。
薄グレーの空いっぱいににカラスのカー君の声があばれてる。
もうね、ガーガー叫びながら、空中を自由に好き勝手に飛んでいるよ。
僕もいつかあーやってお空を飛び回りたいなと思いながら窓の外のカーくんを眺めているんだ。
僕は今日も机の上に座っている。
僕の世界はこの四角い部屋と、四角い窓の外だけ。

今日の僕はとても怒っているんだ。
KちゃんとSちゃんが僕をおいてどこかに消えてしまったんだ。
いつもそうなんだ。二人だけでどこかに出かけて、その間僕は一人でポツリと座っている。
寂しくてとてもとても泣きたい気分なのに、いつもと同じ半笑いの顔でポツリと座っている。
だから心の中でワーンと泣いたんだ。

そしたらね、部屋の片隅からシャカシャカと音が聞こえてきて、
僕はビックリしてコトンと机から落ちてしまったんだ。
なんとかむくって起き上がり音のする押入れの方をそーっと見たらね、さらにビックリしてキャッと声が出てしまったんだ。
なんでかと言うと、僕以外誰もいないこの部屋の押入れの扉がスーッとあいたから。
そしてね、押入れの中から双子のお猿さんが出てきたんだよ。
双子のお猿さんマラカスならしながら僕の方へゆっくりと行進してきたんだ。
シャカシャカシャカと、なんだかぎこちない音で、とてもボロボロの服きたお猿さんなんだよ。
僕はビックリしすぎてその場てじっと固まっていたら、右側のお猿さん喋り始めたんだ。
「泣いていたのは誰?君なのかい?」って!

なんでもね、お猿さんはもうずっと押し入れの中にいたそうで。
お猿さんがこの家にやってきた時はKちゃんとSちゃんは面白いってお猿さんと遊んでたけど、しばらくしたら飽きてしまったのか、ずっと押し入れの中に閉じ込められたままなんだって。
そしたら今日誰かの悲しそうな泣き声が聞こえてきたので、心配になった双子のお猿さんが、よし!元気付けてあげようと僕のところにやってきてくれたんだ!

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僕はこの二人の優しいお猿さんを大好きになったんだ。
だって僕を楽しませようと一生懸命マラカスを鳴らして踊ってくれるから。
僕はお友達ができてもう寂しくないなって、とても嬉しいなって思ったと同時に、僕もそのうち飽きられて押し入れに閉じ込められるのではと心配になったんだ。
それはとても悲しいことなので、飽きられないように早く喋るるようになってKちゃんの願いをかなえてあげたいとそう思ったんだ。

Kちゃんはね夕べも夜中にずっと僕に話しかけてきて、「魂まだ入らないの?」って聞いてくるんだよ。
僕はその度悲しくなるけど、お得意の半笑いでKちゃんを見つめることしかできなかったんだ。

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