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タイBLに出会ってしまった話
3月くらいにバズった「腐女子よタイBLを見て」というTweetをご存知の方も多いと思う。あのバズツイで所謂タイBL沼にドボンされた方も多いだろうが、私はそのほんの数ヶ月前に楽天TVでタイBLに出会いドボンした。
私がタイBL沼にドボンしたきっかけは「UntillWeMeetAgain」という作品だ。タイトルが長いのでタイBL沼界隈では「UWMA」と略される。
また下で詳しく触れるが、BLを嗜まれる方なら既にきになると思うので気軽にtwitterでタグ検索なさってみてほしい。ようこそタイBL沼へ。
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1.そもそものはじまり
元々はYouTubeで「双程」「不可抗力」という中国のBL作品に出会ったのがきっかけだった。感想は長くなるので略すが、夜な夜な家族が寝静まった後に観ては泣いた。
そのつながりで知ったのが台湾のBLドラマ「HIStoryシリーズ」だ。
それまでBLのドラマといえば前述の中国2作品も日本の実写BLもとにかく「切なくて悲恋」が多かった。萌やドキドキもあるが、切なさが前面に押し出されすぎていて「美男×美男は観たいが中年の心臓にはつらい」と思っていた。だけどHIStoryシリーズは面白くも感動できて脚本もしっかりあって観た後の辛さみたいなものが少なかったのだ。(HIStory、HIStory2は現在AmazonPrimeで観れるのでご興味を持たれたら観てみて欲しい。)
そんなこんなで私はすっかりアジアBLドラマの虜になった。アマプラで観れたHIStory、HIStory2も、新作HIStory3は課金しないと観られない。ポイントも使えてスマホで一番視聴しやすかったのが楽天TVだったのでサクッとHIStory3シリーズの「圈套(TRAPPED)」と「 那一天(Make Our Days Count)」を観た。
「圈套」は「ラブトラップ」なる邦題をつけられてしまっているが、しっかりした脚本もあって恋愛だけでなくアクションやサスペンスの部分も楽しめた。「 那一天」は恋愛ストーリーだけど、正直もう最終話が観られない。どうして観られないかは課金して観て欲しい。私は最終話を飲み込むのに約1ヶ月かかったし今も実は書いてて思い出して胸が痛い。
こうしてとりあえず観たい台湾BLを観つくした私は他にも良作はないかと楽天TVをなんとなく見ていた。
そこにあったのが冒頭に出てきた「UWMA」だ。
2.心の安寧をもたらすタイのBLドラマ
楽天TVの特集ページにはこうある。
「前世の記憶に導かれ出会ったふたり 悪夢に翻弄されながら再び運命の愛が動き出す」
「それなんてライトノベル?」と聞き返したくなるようなあらすじだ。タイなんて「トムヤムクンと微笑みの国」程度の知識しかない私が、基本海外ドラマはFBIかCIAかNY市警がバンバン事件を解決するドラマしか見ない私が、こんなあらすじを見て見知らぬタイのドラマを初っ端から課金して見ようとは思わない。が、楽天TVは1話が無料で見られる。試し見してみることにした。そして気がついたら全17話をレンタルではなく購入してしまっていた。
タイのBLドラマは凄まじかった。
私は先ほどこう書いた。
それまでBLのドラマといえば前述の中国2作品も日本の実写BLもとにかく「切なくて悲恋」が多かった。萌やドキドキもあるがとにかく切なさが前面に押し出されすぎていて「美男×美男は観たいが中年の心臓にはつらい」
だけど「UntillWeMeetAgain」は違った。いや切ないのは切ない。四十路の私がおいおい泣くくらいには切ない。恋のドキドキもものすごい。だけど「UntillWeMeetAgain」はそれを覆って余りある萌えと笑いと感動と心の安寧があった。
1.登場人物の健全さ
いきなり「おもしれー女(あるいは男)」 と言って壁ドンしてきたり「お仕置きだ」などと言いだす勘違いイケメンはいないし当て馬ですら「君を口説いていいか」と断りを入れてから口説きだすジェントルメン。 そしてBLドラマにありがちな「女の子が恋の邪魔をしてくるが相手にされず撃沈」という自嘲もない。女の子はみんなサーオワーイ(タイでいう腐女子)で全力で主人公達の恋を応援する。めっちゃくちゃいい子達でとてもかわいい。そして女の子たちもそれぞれの恋を掴むのだ。
2.計算し尽くされた脚本
陳腐になりがちな「輪廻転生もの」をファンタジー要素をあまり感じさせずに描ききっているのも嬉しい。不安だった中二病的描写もなく、(もうほんとお世話になっといて申し訳ないのだが)楽天のキャッチコピーのような安っぽい陳腐さはない。まだ同性愛が受け入れられていなかった時代の悲しい結末の恋を、現代の2人がどう生きていくのか、周囲はどう変わったのか。伏線を回収しながらラストに向かう様は圧巻だった。
2.家父長制からの解放
ネタバレになるのであまり書けないが、個人的にはUWMAのなかの一つの柱として「家父長制からの解放」もあるんじゃないかと思っている。タイにおける家父長制の強さがどういったものかはわからないが、家父長制の犠牲になるのは女性だけではなく、そこに背くとされる男性にも生き方を押し付けられる苦しみは存在する。UWMAは30年の時を経てそれが昇華されていく様をも描いているのだ。
こうしてUntillWeMeetAgainを見終わったあとはもう「もっとタイのBLドラマが観たい」という気持ちしかなくなっていた。
3.それから
「UntillWeMeetAgain」を全話完走した私は次なるBLドラマを求めた。
求めたといっても楽天TVで「UntillWeMeetAgain」の横に並んでいたので見つけた「Love By Chance」だ。沼界隈では「LBC」と呼ばれる。こちらの方がUWMAよりも先に公開されたドラマで、監督は同じ方である。
たぶんUWMAを知らず特集ページの「大学生たちの甘酸っぱい恋を詰め込んだ青春ラブストーリー」といういかにもなあらすじを読んでしまっていたら絶対に見ない。でもこちらも1話無料だったので試し見した。そして今度はレンタルせずに全話パックを一気買いした。
「UntillWeMeetAgain」に対し、こちらは恋愛に焦点を当てたドラマなので主に主人公たちの恋愛を追っていくわけだけど、そこにはゲイであることの葛藤や親子の関係、そして家族間のトラブルが生む人間関係への不信などが描かれ、ずっとドキドキしながら観ていた。
LBCも観終わってしまった頃に、あの「腐女子よタイBLを見て」のバズツイが流れてきた。このバズツイを見て初めて「そうか他にもタイBLというのはあるのか。」と知り、私はtwitterの検索窓に「タイBL」と打ち込んだのだった。
私が完全にタイ沼に沈んだ瞬間だった。
4.もう日本のドラマが観られない
タイBLドラマ「UntillWeMeetAgain」を見始めたのが今年頭くらいだろうか。私はその頃朝ドラをよく見ていた。朝録画したのを毎夜楽しみに見ていたのだけど、なぜだか見る気が失せた。
ドジな女の子がお仕事を頑張ってイケメンドSな彼に振り向いてもらうなどのドラマも流行っていたが全く見ていない。
自粛中はかつて大ヒットして私もハマったむずキュン恋愛ドラマも再放送されたが全く見なかった。某ノトリもしかりだ。
常に女だけが頑張って頑張って頑張り抜かないと報われない(しかも報われないまま終わるのもある)の多すぎな日本のドラマが全くもって面白いと思えない身体になっていた。そして絶望した。日本に住んで日本語しか話せないのに日本のドラマに魅力を感じないことに。
5.ずっと沼にいる
ある日どうしようもなくなってtwitterにタイ沼専用別垢を作った。以来私はずっと沼に住んでいる。いつのまにか自粛があけ、ゆっくり日常がもとに戻り始めても、私が沼から上がることはなかった。
「新しい生活様式」などという政府のわかるんだかわからんのだか微妙なキャッチコピーがあるが、私の新しい生活様式には「ソーシャルディスタンス・三密を避ける・手洗いうがい」と同じレベルでがっちり「タイ沼」が組み込まれてしまった。
今日も朝から推し俳優の動向をTwitterで追う。同志とやりとりをして、推し愛用の香水をつける。香水なんて買ったの何年振りだろうか。自宅仕事場のPCの横には届いたばかりの「UntillWeMeetAgain」の予約限定DVDBOXが置いてある。それを見つめてニヤニヤしながら子の保育園のお迎え時間まで仕事をする。
今日も私は沼にいる。たぶんもうしばらく沼からはあがりません。