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チョコミントアイス

幼少時代、ミントへの博愛が高じすぎるあまり、父の使っていたリステリントータルケアを飲み干した私は、数あるアイスクリームのフレーバーの中で最もチョコミントを敬愛している。ちなみにミントとリステリンは別物であって、少なくともあの頃より正気を取り戻している私がもう一度リステリンを口にすることは二度とない。
何かにつけチョコミントを話題に上げて「あれってもう、歯磨き粉じゃん」みたいなテンプレート悪口を伝播する輩が気に食わないので、そろそろ書き時だと思っていた頃だ。大抵その渦中に巻き込まれた折には一貫して " 言語化が乏しいんですね " という態度で話を聞くことにしている。好きなもののどんな部分が好きかなんて常日頃あまり考えていないはずである。今更、どこがいいの?と言われてもよく分からない。
ペールトーンのエメラルドグリーンの色味は本来食品に適さないとされている。一昨年辺りにテレビ番組で見たビーツカレーもショッキングピンク色をしていて、チョコミントを仇とする人間もこれと同義に思っているのか、と素直に認める瞬間があった。しかし、この色が濃ければ濃いほどに良いと思っている私からすれば、色味という言質を取って罵声を浴びせるのはあまりに面白くないことなのだ。
口に入れると例に漏れず甘い食べ物であるけれども、そこに唯一無二の清涼感が絶妙なバランスでマッチングする瞬間はなんと素晴らしいことか。甘ったるいにも関わらず後腐れないあの味こそ「誰をも傷つけない優しさ」だと思っている。優しさは時に人を傷つける刃物にもなりえるが、チョコミントは目を見張るような警告色を発している為に近付こうとする人間に選択の余地を与えてくれているではないか。これが功を奏し、" 一見美味しそうに見えて実は不味い " みたいな事態に陥る危険性を排除してくれている。
実は髪の毛一本でひと月を乗り切れるゴキブリですらも、ミントを用いた食品には一切口を付けない。この地球上で人類の数倍はいるゴキブリ、空腹に曝された際にはプラスチックすらも食用とする完全無欠のゴキブリにすら奪われることの無いチョコミントは、人間だけが味わうことの出来る専売特許なのである。

チョコミントアイスを大量に摂取したい人達に朗報なのが、1〜2リットル入りの巨大アイスクリームをネット通販で買う事が出来る。値段は1リットルパックが800円ほど、2リットルが1200円ほど。味はミント感も申し分ない上に歯ごたえ抜群のチョコチップがゴロゴロ入っている様はまさに圧巻だ。私は過去に購入しても食べきれなかった経験を持つので、近いうちに転居を予定している人に至っては2リットル購入は自粛して頂き、1リットルサイズの購入をオススメしたい。
24歳、冬を手前にしてあの時の雪辱から逃れる為には私も腹を括らなければならない、そう思ってこの度2リットルアイスを注文した。食べ切れるかどうかというより、食べ切ることしか考えていない。たった今配達日時を指定をしたところだが、自宅の冷凍庫に入るかという確認はもちろん怠っている。

嫌いな人間が大多数であることを理解している。しかしながら昨今のチョコミントアイス需要は高まっていることから、物好きも増えているのかもしれない。少なくとも1974年、サーティワンが日本に初出店した頃からミントは手堅く残っているわけであるし、その速度は緩やかでありながらも一定の人気を博していると信じたい。食わず嫌いでチョコミントを腫れ物扱いする人々へ。是非口に運んでいただきたい。

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