居住支援の現場より ~孤立しないで暮らせる住まいの多様な選択肢を!~
CHCは2018年6月より東京都から居住支援法人の指定をうけ、居住支援活動を行っています。なかなか難しいことではありますが、コレクティブハウジングの理念を持ちつつ、単に住まいを得られれば良いということではなく、住まいを見つけにくい方が孤立することなく少しでも快適な住まい・暮らしを得るためのサポートをしています。そのような活動の中、出会ったご兄弟のお話をご寄稿いただき、我々も大変励みになりましたのでご紹介させていただきます。
(居住支援担当:狩野)
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私の東京にある実家が一般に「8050問題」と呼ばれる状態になり、どうにかせねば、と動き始めたのが2017年。まずは90歳で認知症が進行中だった母を介護保険制度につないだものの、最大の課題は母の他界後、一人暮らしを始めねばならない兄が入居できそうな賃貸物件を見つける事でした。
当時兄は50代半ば、同居で母の主介護者であり無収入、保証人なし、精神障害者手帳保持。一般不動産店、区役所、保健所、生活支援センター等に相談してみた結果は「暖簾に腕押し・糠に釘」。全く有効な情報が得られず八方塞がりのまま5年が経過しました。
2021年の夏、帰国者(私は海外に居住)に対するコロナ検疫待機中に、隔離ホテルで偶然見ていたテレビで知った北九州のNPO法人「抱樸」に連絡・相談したところ、日本全国を網羅する「居住支援法人リスト」を送って下さり、ここで初めて「居住支援法人」の存在を知ることに。東京都だけでも支援対象(高齢者、障害者、子育て世帯、低額所得者等)が異なる43の法人がある中、それぞれのホームぺージや活動内容を検索し、「これは…!」と目が釘付けになったのがコレクティブハウジング社の住まいの概念でした。
「顔を知っている隣人との緩やかな関係がある暮らし」。正にこれが、曾祖父が戦前から住み、昭和40年代から私たち家族が住み慣れた東京の一角にあった「近所づきあい」の形であり、私が兄のために探していた理想の住まいでした。早速CHCの宮前さんに連絡し、Zoom説明会に参加して初めて、これまでずっと暗闇の中を模索していた兄の住まい探しに光が見えた気がしました。
そして2022年夏、コロナ蔓延に阻まれ現地見学は叶わなかったものの、兄とZoom見学会に参加、入居者の方々とお話してみて、兄本人も「こういう所だったら安心して住めそうだ」という感想を持ちました。ただ、月に一度のコモンミール調理等、体調によっては難しそうな事もあり、他の入居者の皆さんにご迷惑をお掛けするかもしれない不安をお話したところ、宮前さん、狩野さんより、「近所に、区議会議員が運営している一般社団法人の支援付きシェアハウスがある」という情報を頂きました。早速そちらにも連絡し、8月に見学、9月に3日間体験入居して帰って来た兄の感想は、「快適だった~」。
これで兄が安心して住めそうな場所が2カ所見つかり、私も安堵した10月初旬、それを待っていたかのように母が他界。その時点で幸運にも空室のあったそのシェアハウスで、兄は無事に12月中旬から新生活を始めることができました。
住宅確保要配慮者の居住支援には怪しげな業者も多々参入しており、膨大な情報の中から正当な団体を見分け、親身になって相談に乗ってくださるCHCのようなNPO法人にたどり着けたのは、奇跡に近かったと今でも思っており、大変感謝しております。(AOJさん)