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ロビン・アリソンさん来日講演報告(1)<東京講演>NZ/アースソングから考えるエコロジカルで互助的なこれからの暮らし方

Earthsong Eco-Neighbourhood(以下ES)の立案者であり居住暦20余年になる建築家のロビン・アリソンさんが来日され、6/11~26の間、辻堂を皮切りに、東京、藤野、徳島県神山町、北海道札幌の各地で講演をして下さいました。

6/15(土)は、東京の建築家会館 本館ホールにて、会場参加約80名、オンライン参加約50名、13時~18時の3部構成でハイブリッド開催しました。第1部は約2時間半ロビンさんにお話しいただき(同じくESにお住まいの神谷ユキさんが通訳)、第2部では、日本の住コミュニティやエココミュニティの事例を呼び水としてご紹介し、第3部の参加者同士の意見交換の場につなぎ、時間の許す限りの質疑応答をしました。

ESは、パーマカルチャーを背景としたコウハウジング(所有型のコーポラティブコレクティブ)で、アメリカのコウハウジングに多くを学びつくられたそうです。住まい手自らがプロジェクトを立ち上げ、仲間を募り、話し合いを重ねて自分たちの理想とする住まいをつくっていったわけですが、20数年経った今でもメンバー全員のConsensus(コンセンサス・総意)でものごとを決定し、自主運営をしています。それを成り立たせるための条件について、ESではどのようなことを決めているのか、私たちが普段、様々なコミュニティにおいて、話し合いでものごとを進めていく際に役立つであろうことをとても分かりやすく整理してお話しいただいたので、その点、参加者の皆さんの心にも大きく響いてたのではと思います。

その一つは、コミュニティでのビジョンをつくり仲間たちと共有することです。ESのビジョンステートメントは、「パーマカルチャーの原則に基づいた、コウハウジングの近隣社会を築き、社会的・環境的に持続可能なコミュニティの見本となる」とあり、Environmental Sus-tainability(環境面での持続性)、Social Sustainability(コミュニティの持続性)、Education through demonstration(実践を通した教育)についてメンバーが共有することがとても大切であったと言います。

もう一つは、コミュニティの中で合意されたコミュニケーションの基本ルールとしての8つのCommunication Agreement(コミュニケーション協約)があります。

  1. 自分を主語に自分について話します。私は他者の立場を話すことはしません。

  2. 発言する際、私は簡潔に(短く的確に)話します。

  3. 私の感情は、自身のものとして自分の責任で言葉にします。

  4. 中断されないで話す他者の権利を私は尊重します。

  5. 他者のプライバシーを尊重します。グループの過程で出た個人の情報はそのグループ外では話題にしません。

  6. 皆の視点の違いを尊重し、もたらす貢献もそれぞれ異なることに価値を置きます。

  7. 問題は直接、当事者同士で対処し、グループの人間関係をクリアに保ちます。

  8. 楽しむことを忘れずにいよう! 最高の協働が実現するから。

そして、この中で特にロビンさんや神谷さんが大切だと思っているのは、私を主語にして話すI messageと、問題は直接当事者同士で対処することだと言っていました。日本のコレクティブハウスのコミュニティでも良く話をしていますが、「人のことを代弁しない」というスタンスは、本当に大切だと思います。「問題は直接当事者同士で対処する」と言うことも、I messageがその根本にあります。そして、当事者同士だけでは対処できないときは、第三者が立ち会うとも。これも日本のコレクティブハウスでコーディネーターを採用している意味とつながっています。

そしてもう一つ、意志決定のプロセスと手順の中でも、6枚のカラーカードを使ったディスカッションと意志決定の方法は、参加者の皆さんの関心の的でした。カラーカードを使ってディスカッションするプロセスで私が大きなポイントだと思ったのは、ある議題に対して、意見やコメントを発言できるのは一番最後で、まずは提案者の意図や事実関係を正しく理解するための質問や疑問を投げかけそれを解決することを優先させる発言の順番についてです。それをやることで、多くの場合、意見やコメントは次第になくなっていき、話し合いの筋道をそらすことなくよりよいプロセスを踏むことができるそうです。カラーカードを単なる手法として採用するのでなく、その意味するところを理解して、それぞれのコミュニティの話し合いを工夫していけると良いのではと思いました。

ESの話をする際、以前は環境面の持続性やその技術にばかり人々の関心が向いていたけれど、最近では、コミュニティのコンセンサスについて、より多くの人の関心が向いていると、神谷さんからお聞きしました。やはり現代社会では、多くの人がコミュニティの人間関係のあり方やコミュニケーションに対する課題を抱えていると言うことなのだと思います。ロビンさんは、コミュニティでのコンセンサスは可能か「Does it work?」という問いに対して、「Yes!」と力強く応えています。その言葉は、参加された皆さんに多くの励ましを与えてくれたのではと思います。

今回の講演は、後日アーカイブを有料配信する予定ですので、今回参加できなかった方は、ぜひ視聴いただければと思います。視聴についてはFBページなどでご案内します。なお、今回ご参加いただいた方、申し込んでいただいたけれど参加できなかった方には、アーカイブを視聴していただけるようにしますので、復習していただければと思います。

実は、今回の講演は、昨年行った4回連続講座(日本語訳付き)のダイジェスト版としてお話しいただいたものです。今後、皆さんの要望が多ければ、秋以降にまた、4回連続講座を開催することを検討したいと考えています。連続講座にご興味がおありの方は、是非こちらのアンケートに回答いただけると第2回目の開催がぐっと現実に近づきますので、よろしくお願いします。

参加希望アンケートフォーム

ロビン・アリソンさんが書かれた書籍は、こちらから購入できます。

次回以降では、各地で行われた講演会や交流会の様子を、アテンドして下さった方や参加者の方に感想などを寄せていただこうと考えていますので、お楽しみに。

NZアースソング・コウハウジングセミナー運営委員会@日本
運営メンバー 狩野三枝


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