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反社? な犬
満員電車の中で、女性の匂いを嗅いだり、鼻息をかける行為を『新型痴漢』と言うそうです。
テレビで女性アナウンサーが、おじさんにずっと首筋に鼻息をフンフンかけられていて気持ち悪かった、、、と言っていた。
女性アナウンサー可哀そうというより、『息をしているだけで痴漢』と言われているおじさんが可哀想と思ってしまった。
たぶん、僕が47歳のおじさんだから、そっちに感情移入してしまうのであろう……。
話変わります。
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『犬が庭に放し飼い、大丈夫』
これから始めて行くお客さんの社内メモにはそう書かれていた。
多分、トイプードルあたりのちっこい犬が「僕とお友達になってよ!」みたいにシッポをブンブンと振りながら僕に近づいてくるのだろうな、と思った。
おぉ坊主ぅ、お留守番かぁ、良い子だぁ!
とか言いながら頭をワシワシと撫でてやるとにしよう。
現場に着いたら、俺よりでかいダルメシアンが血走った目でこっちを睨んでいた。
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口にはがっちり金具型のマスクが装着されている。
ウォンウォンウオーンンン(ワレェ、何処のモンじゃああ)
口を半開しかできないので野太い低い声で、なんか、叱られた。
ダークライトライジングに出てたこのキャラにこのワンちゃんは似ている。
もしくは、ダース・ベイダー。
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目が敵意でむき出しだった。
誰! この犬を大丈夫ってメモに書いた人!
本当に大丈夫なの? 噛まないのではなく、噛めないだけであって武闘派なワンちゃんなのでは?
「ガ…ガス屋でございます、ボンベを交換しに伺いました、し…失礼いたします」
犬に敬語で説明し、扉を開けて中に入る。
チャチャチャと口輪と首輪の金属音を鳴らしながらこっちに近づいて来た。
学生時代にヤンキーにカツアゲされた経験を思い出す。
カンベンしてください!!
殴られるのを覚悟して身を縮こましていたら、近づくや否や、靴の匂いを嗅ぎ始めた。
スンスンスンと嗅ぐのではなく、ズゴズゴと嗅いでくる。
もう片方の足も嗅いできた。
鼻息の吸引力が凄く、ちょっと足を持ってかれる。
そのあと、くるぶし、腰を執拗に嗅いできた。
まるで、、、暴力団事務所に入室した時に、ボディチェックをされているようだった……。
ワンちゃんは前足を僕のお腹に乗せ、胸やわきの下を嗅ぎ始める。
彼の爪がお腹に突き刺さってくるので結構に痛い。今度は僕の後ろに回り、後頭部の匂いを嗅いできた。
そんなに必要? 匂いを嗅ぐの? 今、何処かの組と抗争中とかなの?
頭のてっぺんも嗅がせろや!
犬語が分からないのだが、僕の背中の上の方、上の方に爪を突き刺してくるので、それが伝わった。
僕は軽くしゃがみ、犬は僕の後頭部をフガフガと匂いを嗅いでくる。
犬の鼻息を首筋に感じた。
『満員電車で鼻息かけられてシンドイ』と言ったアナウンサーの気持ちが痛いほど良く分かった。