【エッセイ】 大勢の前で断末魔をあげた、あの日
猫ムスメさんのこの記事を読んでいたら、思いだした事があります。
20年前、横浜スタジアムで中日×横浜戦を見に行ったときです。
トイレに行こうと席を立ち、通路を歩いていたら、中日のゴメスが打ったファールボールがモロに僕の背中に当たりました。
「あぎゃぁぁ!」
という断末魔を、人が大勢いる前で上げました。
両ひざをつき、両腕をかかげ、天に向かって叫びました。
これをイメージして頂ければ、まんまです。
『おお…主よ! なぜ私にこんな戒めを……』
という感じのポーズを取りました。
たくさんの人の前で。
偶然にも友人がTVKテレビで中継を見てて、
「うわぁ…あいつ、痛ったそう」
と思ったそうだが、まさか靖生だと思わなかったそうだ。
解説の遠藤一彦さんが、「ちゃんと打球を目で追ってないと……」と、僕に苦言を言ってくれたそうで……。
痛くて蹲っている僕に、知らないおっちゃんがボールをくれた。
拾って届けてくれた。
痛い思いはしたが、試合中のボールをゲット出来たのだから、いってこいかな、と思った。
「あのぅ……すいません」
横浜スタジアムの係の人に声をかけられた。
あぁ…これは、こんなヒドイ目に合ったので、『今ファールボールを打ったゴメス選手』のサインを貰ってアナタに返却しますね、って言われるんだろうな、と思った。
「返してください」
えっ……。
「ボールを返して下さい」
「いや…でもファールボールを背中に当たりまして…そのぉ…」
戸惑っている僕に「規則なので、返して下さい」と念を押されてしまい、しぶしぶボールを手渡した。
そしたら、がぜんゴメスに腹がたってきた。
猫ムスメさんは、サインボールをゲットしたんですね。
羨ましい。
ファールボールを、ドムゥゥ、とも浴びず、スマートにゲットされていましたね。
ね…妬ましい…。
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