【京都市観光協会】刻々と変化する観光情報をChatworkで共有、データベースとしても活用しインバウンド需要に対応(前編)
日本を代表する観光名所、京都。毎日多くの観光客が訪れる京都総合観光案内所では「Chatwork」を利用しています。”観光案内の肝”と語る「情報共有の円滑化」を実現した伊藤さん。日々刻々と変化する情報をスムーズに共有する仕組みを確立してきた背景や利用方法について伺いました。
1日に3000人が訪れる観光案内所。先駆的な取り組みをする観光協会として2023年には「先駆的DMO」に選出された
—今、京都総合観光案内所の中でお話を伺っていますが、朝からたくさんの観光客の方が訪れていますね。1日にどれくらいの人数が利用されるのでしょうか。
伊藤さん:京都総合観光案内所には1日に3000人ほどが訪れます。そのうちの半分、約1500人ほどが案内カウンターを利用して観光相談されています。もう半分は、案内カウンターは利用せずに、パンフレットや掲示物を見に来られる方々です。
—外国の方もたくさんいらしていますね。先ほども英語で対応されていた方々が、喜んで帰っていく姿が印象的でした。
伊藤さん:そうですね。外国人の方のご利用はやはり多いです。日本政府観光局(JNTO)が、外国人観光案内所のカテゴリー付けをしているのですが、最上位のカテゴリー3に認定されるためには、語学の対応(英語以外に2言語以上での案内が常時可能)だけではなく、外国人に対して日本全国の案内をする必要があります。外国人観光客の皆さんに安心して観光を楽しんでいただくために、その基準を満せるよう運営しています。
もちろん宿泊施設でも外国人のお客様に案内していただいていると思うのですが、観光案内所にきて、他都市への移動方法、例えば富士山の行き方などを聞かれる方も多いです。
—DMO KYOTO(京都市観光協会)は、日本の中では大きい組織なのでしょうか。
伊藤さん:会員数を考えると観光協会としては大きい方です。観光庁は今、世界に誇れる持続可能な観光地域づくりを行う「世界的なDMO(観光地域づくり法人)」の形成をすすめていますが、私たちはDMOの中でも特に先駆的な取り組みをしているということで、2023年に「先駆的DMO」に選出いただきました*。
*2023年の先駆的なDMOには、全国270団体のうち3団体のみが選出された
DX推進を後押ししたのは新型コロナ流行に伴う観光案内所の閉鎖だった
—Chatworkの利用を始めた背景をお教えてください。
伊藤さん:京都総合観光案内所は京都市のみならず、京都府内各市町村の観光案内を行っています。市町村の役所やさまざまな観光案内所に加えて、最近では京都府の北部・南部・中部に分かれて「森の京都」や「お茶の京都」といったDMOが作られているのですが、それらをメンバーとしたネットワークの整備が必要だと常々感じていました。まずは自らの所内スタッフ間の情報共有のため、いろいろなサービスを検討しましたが、あるサービスはプライベートで利用している人が多く、公私混同になってしまう懸念があったり、セキュリティー的にも問題が生じる不安がありました。またあるサービスは操作感が難しく、お客様対応にあたりながら即座に過去の書き込みを探したりするには不向きかもしれないと考え、操作や機能がわかりやすいChatworkを導入しました。
—どのようにChatworkを使われているのでしょうか。
伊藤さん:一番最初に作ったのは、「案内所情報共有」という京都総合観光案内所内の情報共有のためのグループチャットでした。ちょうど新型コロナウイルスが流行して、京都総合観光案内所を臨時に閉所することになったタイミングで、利用を開始し、全スタッフをアカウント登録しました。
人々の移動が制限されたので案内所を閉鎖したのですが、移動を伴わない電話での観光案内は、少ないスタッフで続けました。しかし、情報は入ってくるものの、休業となったスタッフ同士は会うことができません。そこで日々動き続ける観光情報をスタッフ間で共有しようと「案内所情報共有」というグループチャットを作ったわけです。
コロナが収束した今でも、とても便利に使っています。観光案内所では週5日勤務から週2日勤務まで多様な勤務形態のスタッフが在籍しています。出勤する曜日はそれぞれ決まっていますので、勤務曜日が違うスタッフとは何カ月も顔を合わせないこともあります。また週2日勤務のスタッフの出勤は3日ぶり4日ぶりとなります。ですから、スタッフ同士の情報共有はとても大切で、Chatworkを使った情報共有が役立っています。
その後、これまで観光案内所の中だけで共有していた情報を京都駅の内外にある民間の観光案内所にも見てもらおうと、外部のグループでも情報を共有するようになりました。
—どのようなメンバーでChatworkを使われていますか。
伊藤さん:観光案内所と周辺の民間観光案内所の方々、また、鉄道や路線バス会社、旅行会社のインフォメーションセンター、駅ビルなど観光協会の会員がメンバーに入っています。
桜の開花情報、ロッカーの空き、観光客が求める情報を瞬時に共有
—Chatworkでは他にどのような情報をやりとりされていますか。
伊藤さん:例えば、観光案内所では各地の花の咲き具合や紅葉の色づき等を調査し、その調査結果を一覧表にしています。Chatworkで調査結果を送り、案内所のスタッフ全員が確認できることで、「今、あそこの桜が見頃ですよ」など、タイミングに合わせた案内ができるようになりました。Chatworkを見ることで、よその案内所の方も、それから休んでいるスタッフも情報を知ることができます。
最近はオーバーツーリズムの対策として、混雑緩和のための情報もChatworkにあげられています。先日の桜のピークの時期には、例えば「新幹線側のコインロッカーがすでにいっぱいになりました」といった状況を流したり、「人が対応する手荷物預かりがいっぱいになりました」もしくは「空いてますよ」という情報を共有したりしていました。最近はそういうタイムリーな情報を提供する機会が増えています。
それから、「交通情報共有」というグループチャットもあります。これは元々は災害情報の共有のために立ち上げたグループです。通常は、交通の遮断、運休などの情報を共有しています。あまりないですけども、稀に「バスが今、どこどこで車両故障して止まってます」という情報が入ってくることもあります。基本的には交通事業者があげるのではなく、私たちが情報を得た段階で共有するかたちで運用しています。
また「どこどこのお寺は今日は臨時に拝観休止です」といった情報は、さきほどの観光情報の方にあげていて、用途によってグループを使い分けています。
—観光客の求めるタイムリーな情報をChatworkを利用してうまく共有されていらっしゃるんですね。
<後編に続く>
後編では、データベースとしてのChatwork利用やDXの真価について伺いました。