PRDフォーマットを1年運用してわかったこと
はじめに
こんにちは!「Chatwork」のプロダクトマネージャー(以下PM)をしている高橋です。グロース領域を担当しています。プライベートでは、近々参加するフルマラソンの大会のために絶賛走り込み中です🏃♀️💨
所属しているグロースチームでは、直近1年でPRD (Product Requirements Document) フォーマットの改善活動をしてきました。今日はその活動とそこからの学びを書いてみようと思います。
PRDの多様性が招いた問題
弊社ではかなり前からPRDを書く文化はあったものの、使うツールやフォーマットは人により様々、という状態でした。これは企画や起案者にとって書きやすい形でPRDを書ける良さもありました。
一方で、読み手にとって、施策によって異なるフォーマットのPRDというのは読解コストが高いという問題があります。読み手にかかる負荷が高いと、解釈のブレが生じる原因にもなります。
目的に立ち返ると、PRDはステークホルダー間で要求に対する一貫した認識を共有するためのツールです。解釈のブレを減らすため、起案者の書きやすさより「読み手の読みやすさ」、ひいては「要求のシャープさ」を重視し、グロースチームではフォーマットを1つに統一することにしました。
統一フォーマットの壁
フォーマットを1つに統一したことで、何がどこに書いてあるか明確で、要求や重要な論点をポイントで見つけるのは楽になりました。しかし、ドキュメントとしての読みやすさにはまだ壁がありました。起案プロセスによる読みやすさの違いです。
グロースチームでは次の2つの起案のプロセスがあります。
KPI-Driven
上位のKPIからブレイクダウンして設定したターゲットKPIを起点に起案する
例:新規登録数を上げるため、登録動線のUI改善を行う
Aha Moment
KPI-Drivenな施策だけだと解消しきれないユーザーペインを起点に起案する(短期的には数値に表れないような施策)
例:よりスムーズに画像送信できる体験を提供するため、一度に送信できる枚数を増やす
たとえばKPI-Drivenな施策は、起点(かつゴール)が数値であるため、KPIの項目が冒頭のほうにあったほうが読みやすいでしょう。しかしそのフォーマットでAha MomentのPRDを書き、頭から読んでいくと、論点がズレて伝わってしまいやすいのです。たとえばこんな状態です↓
さらなる読みやすさ向上を追求し、少しずつ調整を繰り返した結果、起案プロセスに合わせてカスタマイズした3種類のPRDフォーマットができあがりました。
3つのPRDフォーマット
3種類のフォーマットと言っても、項目はほとんど同じです。一部ですが、次のような項目が盛り込まれています。
なぜやるのか
ユーザーペイン
ユーザーセグメント
提供する便益
計測基準
事業機会 …etc
項目を統一した上で微調整した3つのフォーマットには、それぞれ次のような特徴やストーリーがあります。
KPI-DrivenのPRD
当初1つに統一したときのフォーマットに最も近いものです。
数値が起点になっているので【計測基準】という項目が比較的序盤に来るように設計されています。起点が数値とはいえ、あくまで施策は「ユーザーペインを解決するためのもの」という思想があるので、ターゲットユーザーやユーザーペインを明記する項目が先立ち、数字を上げることだけに意識が行かないように工夫されています。
Aha MomentのPRD
Aha Momentの起案プロセス自体がここ1年くらいで新たにできたもので、その発足によってできたフォーマットです。
このプロセスでの起案でも、数字を見ないわけではありません。もちろん手を入れた機能がどれくらい利用されているか等の計測もしますが、それは起案における重要な論点ではないので、【計測基準】はかなり後方の項目となります。また、施策によってはユーザー体験が向上するものの、その施策単体では事業にまでは影響しないといったものもあるため、【事業機会】といった項目も任意項目となっています。
みんなのPRD
起案プロセスは2つなんじゃ…?と思いましたよね。これはAha Momentの発展系と言っても良いでしょう。
実はグロースチームの中でも担当が分かれているのですが、現状Aha Momentを担当しているのは私1人なので(😂)、どうしても企画が追いつかない時期がありました。そんなとき、良いアイデアを持ったエンジニアが「こんな改善どうでしょう?」と提案してくれたのです。それをきっかけに、戦略テーマに沿ったアイデアなら誰でも起案できる仕組みを作ろう、ということになり作られたフォーマットです。
PM以外でも書きやすいよう、計測基準等の詳細項目についてはPMが書くなど、記入項目を分担するといった工夫がされています。
わかったこと
当たり前ですが、やはり全員が同じ項目の決まった型を使うことで、可読性がかなり上がりました。グロースチームではPM同士で相互にPRDをレビューする運用がありますが、私も読む側になったときに見るべき観点が明確になったと感じます。
一方で、1つのフォーマットに囚われすぎても、かえって読みづらさを生むこともあるとわかりました。「決まった複数の型」を用意することで、一貫性を保ちつつ、どんな施策でもベストな読みやすさを実現できるようになったと思います。
おわりに
今回はグロースチームでの仕組み改善の一部をご紹介しました。規模がどんどん成長している会社なので、今後も変化に柔軟に仕組み改善をしていきます。「Chatwork」のPMに少しでも興味を持っていただいた方は、ぜひ気軽にカジュアル面談にお越しください🌟