【ネタバレ有】数年ぶりのVシネ劇場視聴をした話

こんにちは。のーばです。

ゼロワンOthers以降、怖くて劇場に足を運んでいなかったVシネクストシリーズ、最新作の「仮面ライダーギーツ ジャマト・アウェイキング」を観に行ってきました。

今回は久しぶりに、感想記事を書きたくなる作品だったので、セイバーぶりにVシネの感想記事です。

公開期間中ですがガッツリネタバレを含みます。結論だけ先に書いて、細かいことはネタバレするような感じで行きますので、観に行く予定があるけどまだ観てないよ!というかたは今すぐ劇場を予約してください。


結論(ネタバレなし)

最高でした。とても丁寧に作られていると感じたし、ストーリーも後日談として非常に良かったと思います。僕のような過去にVシネで絶望したことがある人間でも楽しめます。そういうエンターテイメントなので、安心して見てください。











全体の感想(以下ネタバレゾーン)

昨年のリバイスのVシネは諸事情で精神的に見る余裕がなかったので、1年ぶりのVシネでした。

Vシネの基本テーマとして、「本編での主人公以外のキャラクターの深掘り」というのがあると思います。

僕はそれ自体に異論はなく、後日談として主人公以外の活躍を描くのはとてもいいことだと思うんです。

しかし、これには大きなリスクがあると個人的には思っていました。

それが、「主人公が微妙な扱いにされる」ということです。

同じメイン脚本を高橋悠也氏が手がけた作品のエグゼイド、ゼロワンでは、主人公が介入するとすぐに解決できてしまう(多分作品でやりたいことの本質がブレる)事案ということもあったのか、エグゼイドでは永夢を銃撃して行動不能にし、ゼロワンでは新衛星の打ち上げ直前で多忙ということになり、ほぼ登場しません。

その結果、本編のノリであれば穏便に話が終われたはずの話が結構深刻な状況になってしまったという共通点があると思っています。

(エグゼイドはなんとかなりましたが、ゼロワンは結果本編開始時点まで作中世界のリテラシーが下がってしまっている)

しかし今回のギーツ、侮れませんでした。

ストーリーは英寿と道長のダブル主人公で、神となった英寿は直接的な事象に介入こそしなかったものの、主題の「ジャマトと人間」の問題に介入しようとするドゥームズギーツには介入し、あくまで問題解決そのものは道長たちに託す形での登場でした。

これだけで充分お腹いっぱいでした。予告の時点でこういうストーリーになるのだろうな、という予想はしていましたが、主人公とその成してきた事が邪険にされないって大切なことなんですよ。

それに、Vシネはどこか暗い作品が多く、これを見た後にライブデモンズを見て多分去年から方針転換したのかなと思ったのですが、本編でやっていても不思議ではない、社会への問題提起というよりは、キャラクターの深掘りがメインとなるエピソードの構成だったのも良かったです。

もちろんこれはギーツという作品のテーマが「誰もが幸せになれる世界を目指す」というテーマだったからこそだと思うのですが、それにしたって、直近のセイバーもストーリーはどん底に暗かったわけで…

とりあえずシリアスな作風で、作品そのものの未来の雲行きが怪しくなるような形で決着をつけなくて良かったなと。(重ね重ね言いますが筆者は本当にゼロワンOthersがトラウマです

心からそう思います。


ドゥームズギーツについて

まず言いたいのが、ドゥームズギーツめっちゃカッコよくないですか???

未来のギーツⅨとして100点のカラーリングだし、変身音に松岡さんも入ってより「高位の存在」感を高めているのが非常にグッド。未来のエースが創世の神になりかけた時の白髪なのもいろんなバックグラウンドを想像させてくれて良かったです。

未来のエース、1000年かけて人を信じられなくなったこと、それ以上に「自分が解決しなければ世界が存続しない」と思うようになってしまったことが本当に辛いですね。

もちろん、それは植物による未来の支配も影響していて、英寿が神になっても変えられなかった未来、人類がデザイアグランプリという世界から搾取する娯楽を産んだことも含めて、心の底から絶望してしまったのだろうなと思うと、創世の力を持つ唯一の存在として、世界を存続させるための存在になってしまったんでしょう。

その絶望は推し量ることもできませんが、それでも現代の英寿が目指すのは「誰もが幸せになれる世界」。何かを犠牲にして得る幸福を望まない。

故に、最後エースに対して英寿は「神が踊るな」と忠告をする。

この「誰もが幸せになれる世界」は、デザグラ風に言えば「幸福追求ゲーム」。

プレイヤーの人間たちは、誰もが望む幸せを追求するのがルール。

しかし絶対に踏み越えてはいけないルールは、他者の幸福を自分勝手に奪うことである。

道長たちライダーや大智、大智の育てたジャマトたちはあくまで「プレイヤー」であり、ゲームマスターである神はあくまでプレイヤーの判断に委ねる。

それが本来の英寿のやり方であり、神がおいそれとプレイヤー気取りをしてはならない。だからこそ、英寿はクイーンジャマトの問題には手助けこそしたものの直接的な介入はせず、ドゥームズギーツ=プレイヤー外の介入は咎めるわけです。

それをはっきり「神がプレイヤーヅラすんな」と言ったのが非常に良かった。流石にエース本人も英寿であることに間違いはないので直速理解をしていて、すんなり未来に帰るんですよね。

五十鈴大智について

今回の事件は人間を愛するジャマト・クイーン「葉月」と、人間を強く憎むジャマト・キング「蒼斗」。そして葉月と人間の間に生まれた息子・春樹を中心に物語が広がりました。

これはもう素直に言いますが、五十鈴大智の言動全てに涙が出そうでした。

パラサイトゲームを通して自らが抱えた虚無感からの贖罪に、景和が語った「人の心」を愚直に信じて、『人とジャマトの共生』を掲げてジャマトの育成に励む姿がとても眩しい。

本当にジャマトたちの父となって、ジャマトと人間の架け橋になろうと必死に頑張ってんだなと思うと涙が止まらない。

ひまわりジャマトには保育士のように、蒼斗と葉月には先生のように、それでいて保護者のように、生育段階に合わせてジャマト個人個人のことを本当に大切に育てているのがよくわかる。

葉月と人間が結ばれようという時もわざわざ団地に訪れて、ちゃんと話し合った上で託せると信じたのでしょう。

蒼斗の憎しみにも完全な否定はせず、きっと人間社会の中で答えを出せるはずと善性を信じたが故の放置だったのでしょう。

この作品で一番泣いたところはラストのツムリを中心にみんなで歩くところだったんですが、あのシーンで沙羅が景和や祢音に駆け寄るよりも早く大智が春樹のところに笑顔で駆け寄ってるんですよ。

それで道長と一緒に笑顔で春樹の頭を撫でて、きっと褒めてるんでしょうね。よく頑張った、とか無事で良かった、とか。そういう言葉を投げかけてるんだと思うんですよ。

お前がそういうキャラクターになることができたのは、間違いなく仮面ライダーギーツという作品があったからに違いないんですよ。

普通だったらジャマト=怪物の育成をしている大智は倒されるべき存在で、現に創世篇でも「ジャマトはこの世に存在してはならない」とまで定義されていた存在でした。

それでも彼は贖罪の中で『人間とジャマトの共生』という願い、幸福のために必死になっている。そしてその願いまでは英寿も否定せず、あくまでパトロールという体で監視するに留めている。

今回の事件、気が気じゃなかっただろうな。ベロバたちからゴッドジャマトのことを聞かされてから、ずっと正気じゃいられなかったと思うし。

少なくとも本編を見ている間、ナッジスパロウがこんなキャラになるなんて思ってなかったし、彼が人間とジャマトの共生に本気だということも確信が持てませんでした。

彼は今回あくまでジャマトの父としてしか登場しませんでしたが、彼の”現在”はあまりにも眩しかった。最高だよ五十鈴大智。

吾妻道長(とベロバ)について

そしてその隣にいるジャマト代表、吾妻道長のことも忘れてはいけない。なんなら今回の主役は彼です。

道長自体、現状どういう扱いになってるのかわからない(仮面ライダー特効が残っているのか、ジャマトの肉体は書き換わったのか等)感じでしたが、ジャマトの肉体という状況は残っていたんですね。

それを利用してベロバが再接近。懲りない女ですねベロバって……

結構今際の際っぽかったのか焦っていたのか、基本的には「現代なんとかしてくれ」と「道長と心中したい(語弊あり)」が徹底されてて良かった気がしますね、ベロバ。推しに完全敗北して成仏したっぽいケケラを見習ってほしい。

話が逸れましたが、道長は今回、大智と同じようにジャマトと人間どちらの心理もある程度理解ができる人間でした。そして、ジャマトの世界で生きる選択をした大智に対して、道長は人間の世界で生きています。それは彼がジャマトと人間という括りからは外れた存在だったが故なのだと思います。そういえばお前ジャマトになりかけてたな、くらいの認識でした。

なので、人間社会をあまり熟知しておらず、人間を憎むことを覚え始めてしまった春樹に対して「人間だろうがジャマトだろうが関係ない」という語り口をしていたのが非常に腑に落ちました。

ジャマト側に与した経験もあり、ジャマトかつ人間の大智がそこの区別に前向きじゃないことも考えると、道長も同じような心境だったでしょうし、結局本編中でも散々語り尽くされた「自分の幸せのために他者の幸せを奪うこと」はジャマトだろうが人間だろうがやっちゃダメなことだということをちゃんと春樹の共感を得られるように、目線を合わせて答えるのは道長にしかできないことなので、ちゃんと主人公なんだな、と。

プロージョンレイジとアクションについて

何より道長は今回の新規フォーム「プロージョンレイジ」が最高でした。ついに彼も専用アイテムによる強化フォームの登場です。

プロージョンレイジバックルは今回道長のジャマトの力を英寿が創世の力でバックルにしたものでしたが、メイン勢の最終強化、ちゃんと本人が抱えたものに由来している力なのがちゃんと共通していて良かった…!

  • ギーツ(英寿):母由来の創世の力

  • タイクーン(景和):家族を救う願いの力(良いように言ってますが要は世界を作り変えるほどの力→世界平和を実現させるための力)

  • ナーゴ(祢音):家族の愛の力

だったので、今回の道長も本人由来のジャマトの力で何よりも嬉しい。もちろんジャマトの力を得たことは本人の望んだことではなかったかもしれないけれど、それでも彼の力だということに間違いはないし、その力にちゃんとベロバの余計な差し金があるのも含めて完璧です。最高!

道長は本編上だと結局ジャマ神としての力が最強格として扱われていたので、ジャマト由来の力であることは間違いなく正しいものなので…

挿入歌「CREATORs」でもありましたが、「戦う理由は愛であるべき」が全員に共通してるのがいいんですよね。道長の力も誰かの幸せを願う、些細な愛のための力だったので。

武器が大型の手甲というか、盾なんですよね。幸せを守る力てことなのかなと個人的には解釈しているんですけど、よく見たら爪の部分全部チェーンソーという。バーサーカーかお前は。バーサーカーだったわお前。(持ちづらそうで縄田さんがモタモタ走ってるところだけはマジで笑っちゃってすみませんでした)

あと特筆すべきはやはり坂本監督アクション!

坂本監督といえば生身を含めたアクションの質の高さ。創世篇でも度々見せていましたが、景和のアクションシーンが特に印象に残りました。

佐藤瑠雅さんご本人たっての希望での生身アクションだったそうですが、とにかく映えてました。キレキレのアクションからブジンソード直接変身はオタクの夢。

尺の都合で名探偵だったのもあってなんかふわっと頼りないけどいざという時に頼りになる感じで良かったですね、景和も。

名探偵…町内会の死体だけでジャマトが擬態して葉月を狙った意図的に引き起こされた事件であることを見抜き、その上で犯人が警官=蒼斗まで見抜くのは情報少ないにしては名探偵が過ぎる、という意味

挿入歌「CREATORs」について

さっき少し触れましたが、挿入歌も非常に良かったですね……………

Chair→Trust・Last→CREATORsの流れ、とても丁寧で…

ちなみに今回、劇場に足を運ぼうと思ったきっかけは挿入歌だったんですよね。

CREATORsとかいう曲、ズルくないですか?この曲が本編中に流れます!って作品が後味悪く終わるわけがない。

これでダメならもうこのシリーズに触れないほうがいいやとまで思ったので足を運んだ次第だったんですが、やはり期待を裏切りませんでした。

見に行く前に聴き込んでおいて良かった。まさしく「仮面ライダーギーツ」を象徴している素晴らしい挿入歌です。これ以上のコメントなんかないです。


まとめ

行って良かったです。「良かった」と思えて本当に良かったです。

仮面ライダーギーツ自体、幸せを願うということをテーマに据えていたので、まず自分のトラウマを刺激されることはないだろうと思っていたんですが。

それを抜きにしても、ここ最近で一番面白かったシリーズなのは間違いないかなと思います。

元々夏映画の主題歌でもある「Desire」が本当に好きだったんですよ。

競争社会の餌食
誰が勝者か敗者か2択って話
裸足で飛び出た少年は
食い物にされて死にかけた

心は鏡 映した運命
雨風嵐 瞑った片目
見えてきた善悪の中で
抗う自我と欲望と上がれ

という社会風刺フレーズに対し、

Never Give Up 粘れば Get High
ネガティブ メンバーシップ退会
ありえんくらいのハッピーエンドだ絶対
描いた願いは難題
狭い視野ではまず測れない
経験と予測 その中で
試行錯誤だ 諦めず戦え

という「うるせえ」と言わんばかりのポジティブで対抗する。これをやってのけるんだから湘南乃風はすごいんでしょう。(鎧武からずっと信頼できることは間違いないし)

この曲がギーツそのものを象徴していたと思うし、本編でも英寿の言っていた通り「オーディエンスが願う限り世界はハッピーエンド」を貫いているということなんだと思います。

作品を偽悪的にしてしまいがちだったVシネでこういう作風を貫いてくれるのはやっぱり嬉しいですよ。後から見てリバイスもそうだったのはわかるんですけど、それでもやっぱりリバイスは作品の都合上ある程度キャラを絞らないといけないわけで……

世の中悪いことだけじゃないし、幸せを願う気持ちを間違っているとは思いたくないので、作品としてこの方針を貫いてくれたことに感謝しています。円盤予約しました。プロージョンレイジが届くのが今から楽しみです。


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