[ネタバレ有]「キャンドルの香りは思い出と共に」感想
爆速で読み終わりました。
非常に素晴らしいですね………今回も本当にいいですね…………………………
普段はふせったーに感想をまとめているんですが、今回はここにまとめて感想を書き連ねていきます。
当然ですがシナリオのネタバレを多大に含むため、未読の方はご注意ください。
まず最初に言えること。
宵崎奏が楽しむことを躊躇わない、これだけで救える命があります。
自己主張の薄いニゴレンに対してお姉さんムーブするのもそうだし、ちゃんと周りから得られた知見を自分の中に飼い慣らすようになってくれたな……嬉しいよ……
これまでの奏って「ありのままの相手を肯定する」ことはできても「相手の成長を促す」ことはできてなかったところがあって、それはなぜかと言えば闇雲に「救わなければならない」という強迫観念だけが奏を突き動かしていたところが大きい。
イベントを重ねていくうちに周りの力を借りて成長するようになっていって(カーネーション・リコレクション、みんなでエンジョイ!スポジョイパークを参照)、今回は「自分が楽しんだことは他人の力になるかも」という思考にすぐ至ってレンに声をかけたのが何よりも素晴らしい。
きっと彼女の中にある「救う」って、そういう意味も含んでいるはずなんですよね。
かつて自分が救われた力は必ず誰かを救う力へと繋がるので、奏の成長としても非常に良かった。
これをちゃんと考えて、自分でもそれを考えながらやれるようになったのは今後にも大きく影響してくれるだろうな。
カーネーション・リコレクションで、曲を作る動機として「笑顔になって欲しい」ということを思い出して以降、奏も模索している部分はあるんだろうけど、誰かのことを考えながら作ったものはより相手の心に届く。
前回の一歌バナー「Echo my melody」でも、一歌に曲作りについて話すときに同じようなことを語っていたので、無意識なんだろうな。多分それは自覚できていない奏自身の類稀なる才能なんだけど、誰も奏に「お前のそこがすごいよ」って言ってないのが……
奏に足りないのは「その気持ちは、優しさはお前にも向けられているんだぞ」という思考なんですけどね……
詳細な描写はされていなかったけど、絵名、瑞希、まふゆも「奏が自分自身のことを考えて香り、色を選んで手作りのアロマキャンドルを贈ってくれた」のは驚いただろうな。
手作りの意義って多分そこにあるし、チョコとかはある程度まとまっているものだけど、こういう小物は一つでしかないから尚の事想いを込めやすいんだろうし。
一つしか存在しないから、与えることが肯定にもなるというのは絵名あたりが強く感じていそうだな。絵名も人のために描くイラストは奏の心に届いていたり、まふゆをモチーフにした時も自分の中で納得できたりしたわけだし。
あと、まふゆもさりげなく目覚ましい成長を遂げている。
「クラスの子に、こういう時何渡したらいいかって聞いたら教えてくれた」!?!?!?!?!?
おいおいおい、ちゃんと自分のために他人を頼れるようになってきたじゃねえかよなあおい。
他人の受け売りで「そうするべきだと思ったからそうした」でしかないんだろうけど、まふゆのクラスメイトって本当にまふゆが抜けた子であることを理解している=性格面においては模範的な優等生だと思っていないところがあるから、ありきたりでもちゃんと考えて提案したんだろうなあってのも感じられるし。
その上で馬鹿正直に1時間並ぶのもいいよね。多分その話を後日クラスメイトにして「本当に並んだの!?」と驚き、「やっぱまふゆってちょっと抜けてるよね〜」と笑うクラスメイトの顔が容易に浮かぶ。顔知らないけど。
そこら辺察してニッコリしてる瑞希もね。「提案して良かった」って思っていてくれているのだろうか。
嫁か?
ニーゴの話ばっかりになっちゃうから次。
初手でパーフェクトコミュニケーションする寧々すき
寧々、義理堅いから確信できたら名乗るより先にお礼言っちゃうの本当にかわいいね。
一番自然に会話してるのもいい。
全然慣れてないのに自分からちゃんと声かけたりしててね…良かったなあ……
あと、一歌と寧々はすでにだいぶ仲良しだったんだけど、今回を通じてより「友達」としての側面が強くなってくれたなというのが嬉しい。
もちろんこれまでも仲良しだし友達ではあったんだけど、関係により踏み込んだ会話してて嬉しかった。天馬兄妹の所とか特にね。
深く言葉を交わすことはないけど、お互いそういう仲間がいるなあと思い合えていると寧々側で描いているのがいいね。一歌はそういうの無意識でやってるから意識してるのは寧々だけなのかもしれないけど。
そんな寧々は、一歌にラベンダーアロマキャンドルを贈ってるんですけど、一歌は「なぜ」を少し考えていて。
多分その「なぜ」が答えなんだろうなあと思ったり。
ラベンダー、贈り物として定番すぎるのでポジティブな花言葉が多いことで有名なんですが、その中に「疑惑」というものがあって。
「なぜ、この○○はこんなにも強いのだろう」と言ったようなニュアンスの「疑惑」らしいんですけど、これそのまま寧々が一歌に向けてる感情そのものなんじゃない?と思ったりしました。
「なんでこんなに慕ってくれるんだろう」「なんでこんなに強いんだろう」って心そのものがあの形になったのかなと。
寧々はそういう細かいメッセージを込めるタイプだと思っているので、一歌への期待とかそういう全てが籠っているのかな、と。
愛が重い!
今回の寧々の成長には流石の保護者もニッコニコ。
このあと司が「穂波にも礼をしよう」とか言い出すまでワンセットなんだろうな。
嬉しいだろうなえむちゃんも。共通の大好きな友達が仲良くなってるし、プレゼント一緒に作ってくれたんだと思うと………
えむに似てるって言われて嬉しそうなの隠しもしないしえむちゃんもニコニコですよ。
……まさかドン引きしてたアップルパイ20個が穂波だとは、寧々も思っていなかっただろうがね。
そういえばこの2人、休趣味だ!!!
天馬司が、星乃一歌がいたからこういう形で出会えたんだな…本当に良かった……やっぱりこの今のセカイが一番いいよ。
それはそれとして今年のエイプリルフールは何するんでしょうね。休趣味とサニサニの続編見せて
最後、一歌。
このメンツの中で一番コミュニケーション強者というか、一番言葉を飾らないから自然と奏ともフランクに会話してて良かった。
今回は穂波に頼っていたようで、終始一歌が引っ張ってたんだよ。贈り物がしたい、穂波に相談してみよう!から話が始まってて、穂波は今回教えただけで、全部一歌がこうしたなと思った気持ちに3人が応えた形なんだよな。
一歌で特に良かったのはここ。
一歌の歌、曲の師が同時に会って、一歌の共通の友人同士だからと穂波は多分少し後ろから見ていたところがあって。
それを「今日は穂波も先生」という言葉で引き摺り込んでる。その輪の中に穂波もいるんだと。星乃一歌は必ず目の前にいる相手が腐らないように言葉を無意識で贈る。最高。
それができなかったことをいつまでも悔やんでるんだもんな。
咲希の孤独に寄り添えなかったことを、穂波に何もしてあげられなかったことを、志歩の悩みに気づけなかったこともずっと気にしていて、Leo/needの結成を通して「2度と大切な人を手放さない」と想い、自分を見てくれていた人、自分が手が伸ばせる人全てをリスペクトして、手を掴もうとする一歌の姿勢がより強調されてていい。
だから初めて同士だろうと気を利かせて積極的に話を振ってたのかな。寧々、奏の時のように教わるのでもなく、同じ仲間として。
それが嬉しいんだ……
中学校は離れ離れになってたから手作りプレゼントに慣れない一歌さん…………………………
その上でいつもその気遣いを見せていた穂波に感謝を言うのはいいんだけど、これだと愛の告白じゃんなこんなの。やはりいちほな。いちほなは世界を救います。これはマジです。
こんなの群青讃歌じゃないですか。
こういうことを心の底から思えるところがやっぱり主人公なんだなあと思うよ。
この物語は群像劇だけど、やっぱり中心にいるのは一歌なんだなと思わせてくれる。
「キャンドルの香りは思い出と共に」、いつまでの一歌たちの心に生き続けているといいな。