短歌 「アダルトチルドレン白書」
それだけで私は何も言えなくなる 「心配だから」という免罪符
眠れずにザッとカーテン開けてみる 私は何で生きてるんだろう
コーヒーの氷と一緒に溶けていく私が生きていることの意味
虚しさの歯触りか確か シャクシャクとアスパラガスの繊維のように
行く当てはあるんだろうかあの鳥は 大空に今日は雲一つない
さなぎにもなれない私 日常に埋もれてしまえ 夢なんかもう
なぜ私こうなったのかな 生まれたてのサボテンの棘はまだ柔らかい
沈黙が座ってるだけの「父不在」 一体いつからいないんだろう
「~でなければならぬ」生き方をするんだろうな、やっぱり私も
秒針の振動受けて血液の循環さえも無機質になれ
金魚鉢の中には金魚がいるはずで、私の中には「私」がいる、はず……
セミはセミ 他のものにはなれなくて 叫び続ける私は私!
足一節までも精緻な蝉の殻 行方知れずの「私」を探して
青い実を残したままで枯れていく晩夏のトマト 私の何か
存在を確かめた池 チャポォンと魚が跳ねて私が割れる
十月の咲き遅れたひまわりの幸福(しあわせ)の行方 少し気になる
占いを信じたけれど、これだけが浮いてしまった口紅の赤
降る雪に染まって真白く清らかにやり直したい 私を0(ゼロ)から
私がいてよかったと言ってほしいけど、アダルトチャイルド らせんのら・ら・ら