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本の山に埋もれて

自宅にどれだけの本があるのか自分でも分からない。

十代後半から自分で本を買い始め、乏しい小遣いやアルバイト代などから好きな本を少しでも多く買うために古本屋を利用していた。でんと店を構える「古書店」ではなく「古本屋」。「古書店」というと店の(店主の)興味の深い専門分野がある、といった印象だが「古本屋」となると、これといった専門分野もなく、故買商の人が廃品回収などで集まった本やコミックスで始めたような店、という印象がある。

おれの住む田舎町にも市内のアチラコチラに4~5軒はあって、売られている本の状態やどれだけ欲しいかなど自ら条件を設定し、財布の中身を考えて少しずつ少しずつ買い始めていた。

自宅暮らしの間は適当に本棚(やカラーボックス)におさめ、文庫本の場合作者が同じだと背表紙の色も同じなので揃った様子を見て自己満足に浸っていたのだが、引っ越したり自宅を建て直すという時には困った。段ボール箱に詰め込んでも詰め込んでも収まりきらず30箱くらいになってしまったのだ。

おれが若い頃にはネットカフェどころか漫画喫茶も無い。読みたければ自分で買うしか無く(友人に借りると返すのが面倒だし)しかも古本屋でまとめ買いなどしていたのでそんな数に増えてしまっていたのだ。

文庫本は箱に入れたり箱から出したりする時にカバーが傷つくのが嫌で外して入れるなどしていたのでやたらと時間がかかった記憶がある。それら段ボール箱は今でも建て直したこの家のどこかにあるはずだ。

おれ自身は兄の結婚、自宅の建て直しを機会に家を出てアパート暮らしをしており狭い部屋には段ボール箱など邪魔になるばかりなので一度自分の部屋に箱のまま置いたままにし、建て直しが終わった時に預かってもらったのだ。もちろん手元に無いから読むことも出来ず、アパートに越してからは狭い部屋だし、職場の近くにある図書館などを利用して漫画などはようやく田舎町にも出来はじめた漫画喫茶を利用していた…と思う。いずれにしても部屋には本を溜めないようにしていたはずだ。

事情があって兄夫婦が家を出て、両親が歳をとり父が呆け始めて介護を受けるようになった頃に自宅に戻った。

PCやインターネットを始めたのはそれからなので55歳にしてネット歴は十数年程度。

ネット記事をきっかけにPerfumeというガールズグループを知り、ライブに行くために東京へ遠征するようになって東京の街歩きそのものが楽しくなり、はじめは自分なりに歩いていける範囲の名所を巡っている程度だったのが何しろ花の都大東京には「古書店」がそこかしこにありつい店頭を覗いてみると好きな作家の初版本が店頭百円均一の棚に売られていたりする。

「初版本なら」ということで少しずつ買っていたのだが花の都大東京は魔都でもあり、店頭の本棚で4冊まで200円という文庫本が、まあまあ綺麗な状態で売られていて、4冊までとなると浅ましいので4冊欲しくなり、欲しい本が5冊くらいだとあと3冊探して8冊になり、という恐ろしい都会の罠に落ち込んでしまった。

それが新宿三丁目、今は無き映画ポスターで知られた老舗だった。地元から小田急線を使い交通費を安くあげると街歩きのスタート地点はほぼ新宿となり、しかもカレーの食べ歩きも兼ねていて好きなカレー屋さんのある通りにその店があり、どうしたって毎回罠に掛かってしまう。旅のスタート地点で下手をすると10冊以上の文庫本の重量を抱え込むことになり、小田急線だから途中下北沢の駅で降りることで重量は増えるばかりになってしまった。

そして、この文章の冒頭にようやく戻るのだが、自宅にどれだけの本があるのか見当もつかない事になってしまった次第。とは言っても2000冊は無いんじゃないかと思う。千数百冊程度のはず。たぶん。おそらく。

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