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どう気付く?小鳥の卵塞〜うちの子が卵づまりを起こした話〜

卵づまり、卵塞とは

こんばんは、ちゃそです!
先日うちのアキクサインコのもみじが卵づまりを起こしてしまい、生死を彷徨いました
獣医師としてお恥ずかしい限りですが、記録と注意喚起、もしなった時どうするかを共有出来ればと記事を書くことにしました

うちにきて1日目のもみじ

卵塞=卵づまりとはその名の通り卵が卵管に詰まることです

飼い鳥は単独でも卵を持つことがあります
食事が豊富であること、ちょうどいい温度なこと、求愛対象があること
いろんな要因があるけれど飼育下の鳥は発情しやすい傾向にあって
卵を抱えてしまうことがあります
しかし自然界とは違うためホルモンの異常やカルシウム不足などから上手く産卵できないということが起こってしまうのです

飼い鳥での発情コントロールとして一番有効なのが食事制限になります
自分がひもじい時に赤ちゃん作ろう!ってなりませんよね
これが獣医業界では一番の発情コントロールになるとされています

もちろんもみじも食事制限をしていましたが、やや太り気味…
もう少し食事絞ろうかな、これ以上少なくしたら1日2回に分けた方がいいかなと試行錯誤している矢先の出来事でした

発情兆候と排卵行動

いつもと違う鳴き方をしている、背中を触ると交尾の受け入れ姿勢をとる
という行動が見られ始めました
※他の発情行動としては貯め糞(便を一度にたくさん排泄する)や巣作り行動
セキセイインコでは鼻の膜(ろう膜)の色が茶色になったりします
そしてある日サムネのイラストのような姿勢のまま、止まり木にとまらずすみっこで動かなくなりました

やっちまったかもしれん

すぐに察した私は陰部を触って卵があることを確認しました
このように総排泄孔を触ると卵が触れます

卵を触ったり骨盤の開きをみる姿勢
呼吸がしんどい時はやっちゃだめ


この時点で卵を持っていることは明らかですが産んでしまえば卵塞ではありません
卵塞=卵づまりは卵を持ったまま24時間以上経つことをいいます
つまり普通は1日ですんなり出てくるわけです
私はドキドキしながら就寝したのでした

ら、卵塞だー!!

朝起きても同じポーズのまま動かないもみじ
ご飯も食べていないし、呼吸も少し早い…
だめだ…と思って勤務先へGO
運よく休みの日だったため朝から動けました
そこでカルシウム剤を筋肉注射
*カルシウムは筋肉の収縮に必要な成分です
通常であれば30分から1時間以内にいきみがでるはず
ついでに用手で排卵を試みました
(手で総排泄孔から産卵させる方法、素人はやらないでね)
しかしもみじは3時間待っても4時間待っても産卵せずついに排卵姿勢をやめてしまったのでした

この時点で夕方
再度勤務先に行き、休みなのに何度も来る迷惑なスタッフな私
そしてレントゲン撮影
見た瞬間わかる、これは自力産卵は無理だ…というサイズ感

丸いのが卵です。めちゃでか!

完全なる卵塞
ここで私は手術を決意したのでした

院長、夜オペです

休みの日に来て時間外労働を院長やスタッフに強いる迷惑な勤務医
全て私の管理不足、飼育失宜によるものです
申し訳ないと思いつつも手術器具を用意し、夜も更けてからオペを開始したのでした

やる手術は卵管摘出術
卵は卵胞という卵のもと卵巣でできて卵管に流れていき、そこで卵殻(卵のから)が作られて排出されます
つまり卵は卵管に詰まっていて、それを丸ごと取る手術をするわけです

簡単に言っていますが、鳥はわずか40g
オペによる死亡率も犬猫の比ではありません
もし死んでしまったら…そんな不安に押しつぶされそうになりながら、自らメスを取ったのでした

無事、生還

オペ終了後、30分くらいでシャッキリしたもみじ
(こっちの気も知らず…)

オペ終了から30分でケロッとしている鳥

1時間後にはご飯をぽちぽちつついていました
多分、大丈夫 ここで確信できてやっとホッとする私
ここから少しの間は抗生剤を飲み、1週間ほどで糸をとって終了となりました

卵塞に気付くには

  • 発情兆候を見逃さない

まず、発情しているかを見極めましょう
発情していたら卵塞になるリスクあり
また卵を触るときのように陰部を触り、骨盤が開いていれば卵を作っている可能性があります
目安としては指が恥骨の間に入るなら発情して骨盤が開いている状態です
(セキセイインコくらいのサイズの鳥の場合)
体重を落とすためにご飯制限をしていく必要がありますが、何も考えずに減らすと体調を崩す場合もあります
困ったら動物病院へ

  • 排卵姿勢、動かない、呼吸が少し早い

もし触れるなら上記の画像のように触ってみて硬いものが触れたら卵塞です
ただし状態が悪い時は触ることで弱ってしまうこともあるのでかなり注意
もはやここまで来たら病院に任せるしかありません

  • 一番大事なことはなるべく早くに病院にいくこと

記事に書いたようにこれは2日間の出来事です
なるべく早く対応するのが救命のコツです
病院での診察中、3日前から様子がおかしくて… なんて言われて卵があると我々はがっかりします
この時点で助かる可能性がぐーーーんと低くなります

もみじは幸い命を取り留め、今も元気にしていますが何よりも早く動いたからこの結果があったのだと思っています
1日でも遅れていたら死んでいたかも…
鳥の世界はそれくらいシビアです
一番は発情をコントロールすること、適正体重を守ること
卵を何回も産んでいるそこの鳥さん、そのままで本当に大丈夫?
困ったら相談だけでもいいから病院へ!

次回はオペの詳しい記事を書こうと思います
手術の画像など少しセンシティブなものを載せようかと思います

ここまで読んでいただきありがとうございました
次回もよろしくおねがいします!☺️


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