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ドミトリーを作らず、ゲストハウスを名乗らなかった理由

こんにちは。 いつもお読みいただきありがとうございます。

noteでは、blogやInstagramなんかでは少し重たいかなぁと思う、宿泊業に関する事も書いていこうと思っています。 宿の裏側の話、お金の話なんかが苦手な方は、そっと閉じてくださいね。

今回のnoteは題名の通り、「ドミトリーを作らずゲストハウスを名乗らなかった理由」についてです。

開業前に考えたこと、開業後に改装した残り1室のこと、思考の変化など思い出しながら時系列でまとめてみました。

少し長くなりましたが、ご興味のある方は、どうぞお付き合いください。


【開業前】実はゲストハウスを名乗りたかった

脱サラをした2017年。 インバウンド需要も盛り上がって、勢いのある面白そうな宿は、多くがゲストハウス。

自分もそうですが、旅先の宿を探す時に、面白そうな宿ないかなぁと「ゲストハウス」で検索をしたりもします。

なので構想段階、実は「ゲストハウス」と名乗りたかった(まあ名乗りたかったら勝手に名乗ればいい話なのですが、、、)

結果的に、建物の持つポテンシャルや、予算、宿のスタイルや方向性が固まっていく中で、ゲストハウスと名乗ることは無理があるなぁと考え「INN = 小さな宿」と名乗り、舵をとっていきました。


ドミトリーを作らずゲストハウスを名乗らなかった理由

さて本題ですが、ドミトリーを作らずゲストハウスを名乗らなかったのには、いくつか理由があります。

1.個室運用がベター(間取りと水回り)
2.共有スペースを取れなかった
3.スタイルや方向性
4.余談

以下、詳しく解説していきますね。


1.個室運用がベター(間取りと水回り)

こちらは↓チャシバクINNの客室フロア2階の間取り。 階段、ちょっとしたホール、お部屋が5つあります。

元民宿の建物を改装したのですが、13㎡~24㎡の個室が5室あり、そして幸運なことに全てのお部屋に、お風呂とトイレがもともとついていました。

個人的な見解ですが、ゲストハウスといえば安価に宿泊のできるドミトリー(相部屋)があること。 若い人や外国人が多く、長期滞在が多いのもそれが理由みたいなところあります。

そんなドミトリーを作らなかった理由として大きなところは、改装で資金のかかる水回りの設備が既にあるので、いじらずにそのまま「お風呂とトイレ付きの個室」として運用したほうがベターと考えたから。

仮に、そのままの間取りでドミトリーを作ろうと思うと、扉や窓の関係から2段ベッドをスマートに置けるのは1室で最大2台程度。 

簡単な試算ですが、ドミトリーを満床としたとしても室単価(ADR)は個室利用を下回ってしまいます。

ドミトリー 1泊@3000円×4名 12,000円
個室 1泊@7000円×2名 14,000円

この間取りの状況から、わざわざドミトリー(例えば壁を抜いて間取りを変えるなど)にしても、売上面でメリットが感じられなかった事。

そして、個室を主体とした既存の間取りをそのまま使うことで改装費用と時間を抑えられる事、個室として運用したほうが単価UPの可能性が広がる事などが理由の1つ。

さらに宿の目の前に湖畔のキャンプ場があり、「安く泊まりたい」という理由でゲストハウスを選ぶ人は、キャンプという選択肢が近隣にあるという事。

これらの理由により、個室運用がベターと考えました。


2.共有スペースを取れなかった

こちらは1階。 見ての通り、わずかな受付スペースと階段のみ。 

受付のすぐ横がドーナツ店スペースで、そこを共有スペースとして開放することもほんの少しだけ考えましたが、1階は自宅兼店舗ゆえに、生活空間と近く、線引きがなくなってしまう為、採用しませんでした。

ゲストハウスといえば宿主やお客様同士の交流を求めるお客様が多いと思います。 

しかしながら個室主体で進めることを決め、共有スペースも取れない事から、ゲストハウスと名乗ることで、交流を求めるお客様と、宿とのミスマッチになってしまうことを懸念しました。

ということで、この共有スペースを取れなかった事が、ゲストハウスを名乗らなかった理由のもう1つ。


3.スタイルや方向性

前述した2つの理由は、ハード的なところ。 そして3つ目はずばり宿として目指すところですね。

35歳で脱サラをして、宿を開業するとなった時に考えたことは、「自分たちが泊まりたい宿」を作るということ。

30代後半ともなると、以前ほどはドミトリーに泊まらなくなりました。 子どももいるから、不可のところも多い。

そんな「自分たちが泊まりたい宿≠ドミトリー」というのが3つ目の理由。

とはいえ、ゲストハウスの持つ雰囲気、手作り感、オーナーの色、そういうのは大好きで、子連れOKの、ゲストハウスの個室を狙って泊まってみた事はあります。

そんな中で、見えてきた方向性は、ホテルとゲストハウスの個室のハイブリッドスタイル。

ホテル
お風呂とトイレ付きの個室
プライバシーを確保
セミダブルのマットレスにリネン(麻)のシーツ
ベッドメイク済み
バスタオル・フェイスタオル付き
宿主セレクトのティーセット
宿主こだわりのシャンプーセット(パックスナチュロン)
×
ゲストハウス
元民宿を自前で改装
テレビ・寝間着・歯ブラシ・櫛・剃刀なし
素泊まり料金 + オプション朝食
焼きドーナツ店併設
朝食に焼きドーナツとドリンク
家主同居

そんなハイブリッドスタイル故に、ホテルともゲストハウスとも名乗らずに、「INN = 小さな宿」というニュアンスがよいなと行き着いたわけです。


4.余談

とは言いながらも開業後も、実はまだ少し迷っていました。

2018年に、シングル・ツイン1・トリプルの個室3室でオープンし、残り1室は1年目の冬期休館中に改装を。

この時点で、ドミトリー案もまだ頭にあり、実はあきらめ切れていなかった。 ↓こんな感じで内装工事終わったあともシミュレーション笑

でも、やっぱり前述の理由1~3がグルグルと。 ドミトリーはやっぱ無理やろと、、、 そして追加1室の改装計画は、↓こんな感じに変わっていきました。

ドミトリー (2段ベッド×2 4名定員)

個室 (2段ベッド×2 4名定員)

個室 (ローベッド×2 2名定員)

↑これは、現在完成し、うごかしている「ツインルーム2」の写真です。

4名定員にも固執しましたが、間取り的に2段ベッドは圧迫感がある為断念し、既存客室であるツインルーム1のバックアップとして、お子様連れに嬉しいローベッドとして完成しました。

余談の余談として、最後まで固執した4名グループ様の対応は、トリプルルームを上手く使うことで落ち着いています。


最後に・・・

こうやって振り返ってみると、キーとなるのは「間取り(ベッド数)」「改装費と時間」「室単価」、そして「宿の方向性」ですね。 

ウチの場合、かなり特殊なラッキー物件なので、参考にならない可能性大ですが、これから宿の開業を目指している方、宿の方向性やスタイルを模索されている同業者の皆さんの小さなヒントになれば嬉しいです。

以上、チャシバクINNの「ドミトリーを作らず、ゲストハウスを名乗らなかった理由」でした。

長々とお付き合いありがとうございましたー

おしまい






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チャシバクINN / 田中陽介
誰かにとっての「行ってみたい宿」 誰かにとっての「お役立ちな記事」となれば幸いです。