劇団『雪猿』の感想
※こちらの記事では、2024年12月10日に日本武道館で行われた「演劇ドラフトグランプリTHE FINAL」のネタバレを含みます
※観劇後の閲覧を推奨します
※訂正、追記を繰り返します
●はじめに
現地または配信のリアルタイムで演劇ドラフトグランプリを観劇した皆さんは、評価をどのようにつけていたのでしょうか。今回は各劇団に5段階(★1〜5)での投票となっていました。
優勝して欲しいひとつを★5、それ以外を★1というようにも出来るし、どこも選びきれないなら全てに★5、というようにも出来ました。とってもいい投票方法だったなと思います。
私は悩んだ結果「もう一度観たいかどうか」で評価をつけてみました。
練習量はどうしても劇団ごとに違っていたと思います。もちろんそれも合わせてドラフトの面白さではあるのですが、ここで個人の評価をいれると違ってくるなと思った私の判断です。せっかく推しの居ない舞台を何本も観れるのだから、クリアな気持ちで素直に舞台を楽しもうと思い、そうしました。
その結果どうなるかというと、純粋に物語が好みかどうかにはなってしまったのですが、それはそれで自分の好きを再確認出来る大変良い機会となりました。
優勝した劇団しか発表はなく投票総数も不明ですが、私の送信した星たちが、「あなたたちの舞台がとっても好きだったよ」の気持ちが、各劇団に伝わっていればいいなと思っています。
劇団『雪猿』
テーマ:雪山
演目「ツンドラクリーム」
長い「はじめに」でした、すみません。ここまで飛ばした方は英断です。どんなに気持ちが晴れやかになるとしても雪山でヤッホーを言わないくらい、英断です(ナビゲーターの阿部顕嵐氏ずっと面白い)。
前回の記事を読んでいただくと分かるかと思いますが、前演目の「運命と知るべし」のことをかなり引きずってます。引きずっているというか、忘れられないというか。気持ちをうまく次に切り替えることが出来ないまま、雪猿の演目が始まってしまいました。これもまた演劇ドラフトグランプリの面白さですね。
しかし、そのまま「ツンドラクリーム」が始まるとどうなるか分かりますか。
な、なんだこれは……???
観ながらずっとこの気持ちでした。頭の中はクエスチョンマークでいっぱい。雪女、ギャル、タイムリープ、トナカイ男……。これをどう処理していけばいいのか、本当に混乱しました。
雪女が髪をとかし始めたあたりで、荒牧慶彦氏のラストはこれでいいのか!?とまで思ってしまいました。一旦冷静にさせて欲しかった、落ち着いて処理させて欲しかった。横にいるギャルはなんか、ずっと可愛いし。
とにかく設定が大盛りすぎて、実験体のことや指名手配のことは右から左でした。でも「なんだこれは?」のまま進んでいけるのがすごくないですか。
意味わからないのに、ずっとついていけないのに、ツッコミどころが100個くらいあったのに。
落ちている書類を拾おうとしたら、指先に触れそうなところでちょっとした風に飛ばされる。あ、待って!というのを何回も繰り返されたようなテンションです。全部拾うの大変でした(落としたのも拾ったのも雪猿のみなさん)。
各所で笑えるところは笑えるし、散らかっていると思っていた伏線は回収していく。話が少しでも暗くなったと思うと、すぐにクスッとさせてくれました。
親子の関係性を倒置法のように暴露していく場面で、一拍置いてからまるで悲鳴のように会場から上がった「……えぇ~!?」が最高でした。理解の速度が音で伝わってくるのってこんなに面白いんですね。
最終的に5作品で唯一ハッピーエンド?ハートフル?なこの演目が優勝したのは驚きもありつつ納得もさせられました。
ひとつのテーマとして「死」というものが複数で被っていたからこそ、そこを他の演目と比べてしまうので、救済があり人が死なない(殺されない)唯一の結果になったのはやはり優勝した理由の一つなのではないでしょうか。
好きなものを、好きな人にプレゼントしたい。そんな素直なユキちゃんの気持ちが微笑ましく、それを聞いてすぐに受け入れる姿勢があるピリカちゃんの優しさもあたたかかったです。
最後は「未来」からタイムリープしてきた2人が「今」に残ってしまいましたよね。そうすると間もなく「今」の2人の魂は消滅してしまうのだろうけど、居るはずだった存在が居なくなってしまったことで変わる未来のことがとても気になります。
今夜生まれてくるピリカちゃんが、(少なくとも17歳の誕生日までは)ユキちゃんと出会うことがないのは少し寂しいです。でもツンドラクリームアイスのことを「温かい気持ちになれる味」と言っていたので、きっとどこかで繋がってくれているのかな、なんて。
なんだかわからないけど、温かい気持ちになれる。だから好き。ただそう思うから、そうなんだ。自分に嘘をつかず、誤魔化さないピリカちゃんの素敵な性格に、私も私自身を見つめ直すことができました。
笑顔になれる作品を観れて幸せです。楽しかった。
𝑩𝑰𝑮 𝑳𝑶𝑽𝑬────────