詠み写し~三次創作歌集~1
ホームのプロフィール欄に“ゴールデンカムイの異母兄弟に出会って生きる力をもらいました”と書いてあるけど、本当はこれは言葉が足りない。
昨年の春友人に勧められてゴールデンカムイ(金カム)を読みだして、はじめは特に推しのキャラクターはいなくて、いわゆる箱推し(=みんな好き)状態だった。
それが、ストーリーを読み進めていくうちに尾形百之助が気になりはじめ、17巻あたりから異母兄弟の関係性にぐんぐんと惹きつけられていき、
31巻、310話でいきなり沼に突き落とされてしまった。
いったいこれは何なんだ?
読了後、呆然とし、頭がぐらぐらする。異母兄弟の悲劇に打ちのめされて、ショックで何も考えられなくなってしまった。
それなのに何度も読み返す。
何日もその状態が続いて、抜け出せない。そんなときふと思い出したのが、娘(別ジャンルのおたく)に以前教えられたpixivの存在。もしかしたら、二次創作の世界に何か抜け出すヒントがあるかもしれない。藁にもすがる思いで、それから作品を読み漁る日々。
そんな時、奇跡のように出会った某二次創作漫画。
異母兄弟が現代に転生、再会するそんな物語だ。
ストーリーは前世の記憶がある兄が記憶のない弟を探し当てるところから始まる。前世であんなにも兄を慕っていた弟は記憶がないため、兄を赤の他人としてしか見ることができない。そんな、波乱のスタート。
その後紆余曲折があるものの、ともに絆を深め幸せをつかむお話。
あらすじを書いてしまえば、他愛のないものかもしれないが、私はその漫画によって底知れぬ暗く冷たい海底から引き揚げてもらったような気がした。単にお気に入りの漫画を読んで落ち込んでいたのから立ち直ったということではなく、文字通り生きる勇気をもらった。今、どんなにつらい境遇にあっても希望を忘れずにいようと思えたのだ。
異母兄弟に魅了されたのは、自分自身と家族の間に葛藤があったことと無関係ではないと思うし、実生活においても大切な存在をなくす喪失感を消化しきれずいまだに引きずっている部分があったからだろう。
金カムに出会えたことと、この二次創作漫画に出会えたことによって、
文字通り私の人生への向き合い方が今までとは少し変わった。
そんなこんなが蓄積されて、昨秋のいきなり短歌創作が始まったのだと思う。
それからおよそ半年後、私を生き返らせてくれた某二次創作漫画の主な場面と登場人物の心情を詠んだものと、妄想を膨らませて行間を詠んだものを取り混ぜて、丸ごと一冊詠み写した三次創作歌集の原稿が完成した。
創作漫画の作者様に了解を得て8月にインターネットで公開し、来月の同人誌イベントで頒布をすることにした。
それまで、全く短歌に縁のなかった人間が思いがけない方向に進み始めることになった。
【一首目】 現世で再会を果たしたものの、記憶のない弟からは赤の他人として扱われた時の心情、漫画のタイトルを詠みこむ
【二首目】 前世ではなるべく弟を遠ざけようとすげない態度をとっていた兄、現世では逆の立場となりあの頃の弟の心情を実感する
【三首目】 2年間の空白の後に再会した二人、いつの間にか兄への気持ちが大きく膨らんでいたことを自覚する弟
【四首目】 互いに惹かれあっているのに、前世のように弟を傷つけてしまうことを恐れて再び遠ざけようとする兄の心境
こちらに、詠み写し歌集を公開してます。
先頭ページに原作となった二次創作漫画のリンクあります。
https://www.pixiv.net/artworks/110515277