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旅立ちの日の前日に

今、俺の目の前に 奴の机がある。

明日は卒業式。
俺は奴の一学年下。
「お世話になった先輩達の為に後輩達で学校を綺麗にして送り出そう」

という名目で掃除をしている。

全くお世話になっていない。
たった暴言ばかりで威張り散らしていた奴。 
人を傷つけて平気だった奴。

俺はずっとずっと頭の中で繰り返し繰り返し、奴に仕返しをすることばかり考えていた。
どうやって自分が受けた苦しみを返すかを考えていた。

想像の中で行なった仕返しは
受験を前にして、成績も内申点も良くなさそうな奴の机に「激落ちくん」を入れること。

実現しないまま「3年生を送る会」を迎え、奴の姿を見たら過呼吸になった。

そんな俺の目の前に憎い奴の机。


「これ、あげるよ」
事情も僕がした想像もよく知っている担任が
先程掃除で使った「激落ちくん」の空袋をくれた。

目の前に奴の机。

ゴミ箱と間違えてそこに空袋を滑り込ませるだけで、いい。








クシャっと激落ちくんの空袋を握りつぶし、自分のポケットに仕舞う。


旅立ちの前の日に。

「俺の勝ちだ」


不敵な笑いを浮かべ、そう呟く。

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