外国のジョークに触発されたこと
4年前にデンマークに行って10ヶ月フォルケホイスコーレに滞在してきたが、デンマーク人をはじめインターナショナルの留学生と色々話したいと思うのに、自分の半分以下の年齢の若者と共通の話題を見つけるのは(日本でもそうだが)相当難しかった。なんとか面白い話を共有したいと思ったが、なかなかうまく行かない。そこで気づいたのは「面白いと感じることは多分に自分の持っている文化、言語に依存している」という当然の事実だった。もっとも自分の言語能力が低いせいで適当な言葉が見つからないことはちょっとの間棚に上げることにする。
たとえば落語の小咄を紹介しようとする。「小僧が旦那の言いつけで隣の大店へ使い走りをする」、という文章が訳せない。簡単に目に浮かぶ光景をゼロから説明しなければならないからだ。しどろもどろでそんなことを説明していたら全くつまらない話になってしまう。面白いぞという気持ちが空回りして大失敗してしまうのだ。
そんなわけで、デンマークから帰国してからも「文化的背景が異なる人々が笑えるジョーク」とはどんなものか、インターネットに流れてくる動画や動画配信サイトを見る機会があると、そんなことがいつも気になっていた。そしてしばらくそんなことをしていたら、目にするジョークは主に3つのカテゴリ(?)に分かれているのではないかと思うようになった。それは、
1.(やはり)文化的背景をベースにした、特定の人々だけが笑うことのできるジョーク
2.音楽やスポーツなど万国共通のテーマを題材にしたジョーク
3.言語そのものを題材にしたジョーク
例えば2は、「脚は2本しか無いのに、ピアノのペダルはなんで3つあるんだ?」、3は「I dance. なのに、He dances!彼のほうがたくさん踊っているというのか?」という具合である。
特に3は、日頃自分が信じて疑わない言葉を考えられない側面で切り取っているところにおかしさがある。そこに気づくことがすごいのだ。と、ここまで考えていたら、信じられないような難しい言語であるデンマーク語をネイティブに話している人々は日本語を「クレイジーだ」と十分に思えることに納得できるようになった。50音の他に常用漢字2,000文字!しかも漢字には音読みと訓読みがある。「ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、・・・」の不規則変化。音便。ものの数え方。自分では意識しないがゆえに取り立てて切り取ることもないのだが、外国人が日本語を題材にしたジョークを言う動画を見ると、足元の日本語をもう少し見つめてもいいのかな、と思ったりもする。