いい人?人がいい?
「いい人だね」は誉め言葉。
「人がいいね」は誉めていない。
さて義母はどっちだろう?
昔語りに、義母が「昔、製薬会社で仕事していた」と話したことがあった。
私は義母がそんな専門的な仕事をしていたのかと驚いた。
「薬を作っていたんですか」
と聞いたら、
「いやいや、そうじゃなくて、社内での色々な雑用をやっていたんだ」
とのことだった。
その時の写真を、確か一度見た気がする。40代くらいだろうか、若い義母が、制服を着て立っている。時代がかった、いかにも「女子社員」「女子事務員」というデザインの、スーツと作業着の中間のような制服。半そでだったような気がする。同じ制服を着た女性社員5、6人が並んだスナップショットだった。
さらに別の時。義母は会話の中で、
「私は力が強い」
と自慢した。
「昔会社に勤めていた時、重たい荷を運ばなきゃいけなくて、他の人が『うわあ、こんな重いのとても無理』と言うんだけど、私は『置いときな(놔둬 ナドゥオ)!私がやるから』って、運んでやったもんだ」
楽しそうに昔の話をしながら、
「『置いときな!私がやるから』って、全部運んでやった」
と、繰り返した。
張り切って薬の原料か何かの重いダンボール箱を、一人で担いでいく義母の姿が脳裏に浮かんだ。
伸縮性のない生地の制服は、肩を大きく動かすには不便だったのではないか。汗もかいただろうな、と思う。
「わあ、すごい」
「ビョンヨンさん(義母の名)、力持ちなのねえ」
義母の同僚たちは、笑いながら声を掛けただろう。
「いい人」なのか、「人がいい」なのか。どちらが適正なのかは判然としないが、義母はきっと根は善人なのだと思う。
ただ、あまりにも色々と度を越している。義母と一緒に住むのは、大型野生動物と住むのときっと同じだ。