⑳共犯者になりたくない
義母は、うちに来る時によく何かを持ってきた。しかし夫は、
「何も持ってくるな」
と強く言っていた。その理由は、
・賞味期限が切れている食べ物
・義母が職場からくすねてきた物
・どこかで勝手に折ってきた花
義母が持ってくる物がたいていこんなものだったからだ。
夫が何度言っても、義母は持ってくるのをやめようとしなかった。手柄を報告するように「〇〇持ってきた!」と見せ、「〇〇(夫)に見つからないように隠せ」と私に迫る。
もしそれに従って隠したら、発覚した場合、私と夫との間に諍いが起きる。つまらないみやげ物のために、義母の共犯にさせられるのは真っ平なので、私はその場では「はい、はい」と返事して戸棚に入れる。そして夫が帰って来て、
「今日おふくろは何か持ってきた?」
と聞くと、洗いざらい報告した。
次に義母が来た時、
「あれどうした?ちゃんと隠してある?」
と気になって仕方が無いように尋ねる。そして、「夫が見つけて処分した」などと聞くと、心底悔しそうな顔をするのである。
面倒くさいことは夫と義母の間だけに留め、こっちの方にはみ出さないようにしてもらいたかった。しかし、直接の被害をこうむったことがある。
マンションの中庭で子供を遊ばせている時だった。面識はないが住人らしき60代くらいの女性が、子供達に向かって、
「花を折っちゃだめだよ!この花はマンションのだからね!花は見るものだよ。折ってはだめ!」
と強い調子で叱るように言ったのである。植えてある花を折った事はただの一度もない。子供達はどこ吹く風といったふうに聞き流していたが、女性は母親である私にも聞かせるように言っていたように思われた。しかし心当たりが全くないので、不審には思ったが黙っていた。
そしてこれもまた、後になってから理由が分かった。花を折ったのは義母だったのだ。中庭に咲いているオレンジ色のデイジーや白いヒナギクを何本も折って持ち帰ろうとした。その際注意されて、なんと、
「子供達が花を折って地面に捨ててしまった。放っておいても枯れるだけだから、うちに持っていって花瓶に挿します」
と言い訳したのである。
そしてその花をうちに持ち込み、
「どこかの子が花を折って地面に捨てて行ったので、拾ってきた。置いといても枯れるだけだから、うちに持ってきた方がいいでしょ?」
と説明したのだった。
その後も同じような事があった。そう都合よく、義母の前にどこかの子供が折り散らかした花が落ちているわけはない。
そして、つくづく義母の性格がどんなものかを思い知った事件があった。
続きます…