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Photo by
ruincoda
インダストリアルネイチャー
忘れられた産業遺産が、長い年月とともに緑の植物に侵食されてゆく。
まるでアンコールワットが発見された時のように生い茂る緑の中から現れる遺構。錆びた鉄やコンクリートに絡まる緑の風景は「ここに人間がいた記憶」を呼び覚ます。
手つかずの自然とはまた違う、どこか懐かしい風景。
かつて歌志内市の山並みの丘を埋め尽くしていた炭鉱住宅の跡地には家もなくなり、人の姿も見えなくなって久しいのに、そこにかつて住んでいた人が植えたであろうスイセンやルピナスが野生化し、美しく咲き誇っている。
誰も見る人がいない、でも楽園のような風景。
巨大な鉄の構造物とコンクリートでできた人工的な風景の極致の様相であったはずの炭鉱の風景が、閉山とともに長い時間をかけて新たな姿を見せ始める。
それが「インダストリアルネイチャー」。
雪融けとともに、インダストリアルネイチャーの季節がやってくる。
これは、旧産炭地にしかない特別な風景なのだ。
歌志内市地域おこし協力隊・石井葉子