見出し画像

春の雪

明らかに春が近づいている気配。雪景色でありながら温かさを感じるとは不思議なことだ。
私にとって久しぶりの雪は楽しくもあり、新鮮でもあり、「やっぱり私って北方志向だったのだ。」と、十年もブラジルにいたくせにそう思う。
雪が嫌ではない。むしろ好き。

さて、明るい陽光が燦燦と降り注ぎ、身体に当たると痛いほどの強烈なスコールが降り、その十分後、嘘のように晴れ渡るサンパウロはどうだったか。
標高が高いので朝夕は涼しくて、カラリと乾いているサンパウロ。
みんな信じてくれないけど、サンパウロの我が家にクーラーは必要なかった。家の中に入れば、ひんやりとしており、もっと言えばサンパウロに「熱帯夜」はなかった。東京の人は大変だね~と、真夏の夜、夫と庭でココナッツジュースを飲みながら星を見ていた。

サンパウロの冬は一応10℃くらいになる日もある。そうなるとブラジル人は大さわぎでダウンジャケットを着こみ、ニット帽をかぶって、足元はサンダルだったりする。笑ってしまう。
春夏秋冬あんな過ごしやすい気候の場所に住む人が「厳しさ」を持ち合わせていないのは、当たり前だと思う。そりゃナマケモノになるよ。
街路樹にマンゴーが実り、路上にアボカドがゴロゴロ落ちているのだもの。

雪国の人が勤勉なのは、勤勉でなければ生きていけなかった、ということもあるだろう。除雪しなければ家から一歩も出られない日もあるのだから。
でも帰国して、歌志内の雪の「静けさ」には驚いた。強い風が吹かないので雪はどんどん積もるけれど、吹雪になることはほとんどない。

歌志内の「落着き」は、この静けさのせいかもしれない。
北海道じゅうを見回して、こんな「静かな雪」が降る所は他にないのでは?
今年はもはや雪が融け始めている。ふんわり積もった粉雪が,キラキラ光るザラメ状になり、春めいてきた光が反射している。
歌志内の雪って,融ける時まで美しい。

(歌志内市地域おこし協力隊・石井葉子)

いいなと思ったら応援しよう!