西原理恵子という女
高須クリニックの高須克弥院長が愛してやまない女、西原理恵子。
海外で拾った鴨志田と夫婦になり、看取った女、西原理恵子。
ギャンブルで溶かしまくっても、仕事でそれ以上に稼げた女、西原理恵子。
毒舌を吐きまくっても、なぜかあまり叩かれない女、西原理恵子。
そして、絶対にファザコンを拗らせている女、西原理恵子。
多くの人は、作品を通してしかその作者のことを知ることができない。だから、「毎日かあさん」の裏にあった闇の部分など知る必要はなかったのに。
ただ、同じ親として、この人の娘や息子のことはちょっと心配していたので、ひよちゃんとの確執が表面化したとき、「ああ、やっぱりな」と思った。私も大概にして、子どもを振り回す親だったけど、この人はお金を稼ぐ能力も、使う能力もけた違いの大物なので、子どもの振り回され方も普通ではなかったのだろうなと思う。
西原理恵子には、闇深い部分もかなり多い。もちろん賭博関連にしても、男関係にしても、作品を読んでいたらそれはある程度は予測がつくのだが、彼女の場合、露悪趣味がある割に、肝心なところは書いていないことがほとんどな気がする。彼女の作品に出てきたママ友がある時点からまったく登場しなくなる(それまではかなり仲良しそう)とか、しょっちゅうつるんでいた男友達(多分付き合っていた)もばっさり切られているし。
この人は、生い立ち、特に父親たちが特異だったせいもあるが、かなり強度のファザコンを拗らせていると思う。甘えたい、そして、世話したい、でも、束縛はされたくない、そんな気持ちを満たす究極体が、高須院長なのだろう。高須院長は、バリバリの右で、皇室についてはとても敬意を持っておられるんだけど、美智子皇太后の出身校である大学を、簡単にいうと「すぐにやらせてくれる女ばかり」と言っており、それを西原の漫画に描かれている。この点を観ても、西原は、作品の中で高須院長にこういうことを言わせることを楽しんでいるのである。西原は、自分の作品をノンフィクションあるいはエッセイかのように描いているが、それならトンデモナイ嘘つきであり、話を盛りすぎており、フィクションとするなら、面白くなるなら何でも描く、どんなことでも描くというスタンス。たちが悪いのは、ノンフィクションにフィクションを混ぜ込んで、「適当な」大ウソを仕込んでおり、それが原因で実際の友人知人から距離を置かれており、子ども(がんじくんについてはほとんど情報がない。ひよちゃん)にも大迷惑をかけているということなのだろう。
西原理恵子の「恨ミシュラン」はかなり面白かった。若い西原が、コータリさんと編集を振り回し、我が物顔で色々と流行りの店をこき下ろす。ただ、それは若い西原だからこそ許されたことだった。今は、もうこれとしては出版されていないけど「サイバラ茸」というシリーズで読める。
「いけちゃんとぼく」や「ぼくんち」みたいな抒情シリーズは、人気があるし、こっちか彼女の本質だと思っている人もいるだろうが、それは、彼女の一部分にすぎない。
一番おススメするのは、「できるかな」シリーズと「鳥頭紀行」
この二つは、どこを切り取ってもかなり面白い
ジャングル編で彼女は、運命の人、鴨志田と出会う。ここからああなったか~と感慨深い。くりくり編も面白いので合わせて読んで。
もちろん、「毎日かあさん」は、子どもたちの成長の記録(サイバラは成長しないが)でもあり子育てしている人は、こんなにめちゃくちゃでも子どもって育つんだって思える。ただし、この人くらいのお金があれば、です。
このシリーズの後継となる「りえさん手帖」になるともはや惰性で続けているとしか思えないが、今度は、高齢の親との関係などが身につまされる。
そして私がなんだかんだと欠かさずに読んでしまうのが、「ダーリン」シリーズ。高齢バカップルのいちゃこらをこぎたない配色の絵で見せられるのだが、これもまあ、なんだろうか、どっちかというと高須院長の生態観察になってしまっている。最近、新刊がでたが、買うかどうか迷っている自分がいることは確か。割と高いしww
私は、西原理恵子が好きだ。
自分が一番可愛くて、一番嫌いで、甘えたいのに、世話もやきたい。
矛盾を抱えたアラ還漫画家の行く末を見守っていきたい。