ヘッドライトと名の付く歌にシビれる
◆胸に刻む3曲
①新沼謙治 「ヘッドライト」
作詞:阿久悠
作曲:徳久広司
昭和の歌謡曲マニアの私が、「カッコよくありたい」「強くありたい」と思う時に必ず聴くのがこの歌。初めて知ったのは高校時代に聴いていたラジオの懐メロ番組だったと記憶している。
私は女性だが、この歌を聴いた時なぜか、背筋が伸びる感覚がした。
二人きりで寒い北の町へと向かう男女の姿には「もう後戻りできない」
という厳しい覚悟や悲壮感が漂う。
一方、二人仲睦まじく手に手を取って生きていけるならそれ以上の幸せなどなにも望まない、という男性側の(良い意味での)人生への諦めや健気さも感じられて、涙が込み上げてくる。
そしてこんなふうに優しく、力強くリードしてくれる男性との恋愛ドラマがあるといいなぁ、などと、つい女心を擽られる。
それにしても、何度聴いても痺れる。
詞もメロディーも「昭和ダンディズム」と呼びたくなるような、
女性をリードする男性の色気が集約され、美しく香り立つ。
こんな(性格的に)カッコいい男性と両得の関係を築けるようなカッコい女になりたい、と若き日の私に夢想させてくれた、大切な一曲である。
②黒沢明とロス・プリモス「ヘッドライト」
作詞:橋本淳
作曲:筒美京平
この歌もやはり高校生の時にラジオで聴いて脳裏から離れなくなった一曲。
とても直情的な詞なのだけど、曲はクール。
ヴォーカル・森聖二さんの歌唱もほのかに明るく、理知的に響く。
自分の心が不安定になり、ヘッドライトに浮かんだり消えたりするような儚さを感じた時は、決まってこの歌が脳裏に流れるようになっていた。
(色々つらいことの多い青春時代だった)
また、この歌と出会った頃からだろうか。
ネガティブな気持ちになっている時は無理に明るくなろうとしない、
クヨクヨと悩んだり自責感情に苛まれている自分をあるがまま受け止める、ということに意識を向けるようになっていた。
当時はまだ、イギリスの詩人、ジョン・キーツが残した「ネガティブケイパビリティ」なんて言葉は知らなかった。
しかし自分にとって何が正解なのか間違いなのか判らない悩みを抱え、悶々と過ごす時、そんな自分に抗わず、暗鬱な感情を否定しないことで、自然と明るく前を向けるようになる効果を実感するようになっていた。
そしていつしか、他者の多種多様な苦悩にも自然と寄り添えるようになっていた(ような気がする)。
③中島みゆき ヘッドライト・テールライト
作詞・作曲:中島みゆき
この曲は、いろんな意味で覚悟を決めないといけない時、
一歩踏み出す勇気が必要な時、
不安な自分に寄り添い、助けなければ、と思う時に聴いてきた一曲。
「旅はまだ終わらない」というフレーズが、まるで優しい心の伴走者のように私の肩を撫でてくれる。
聴くたびにそんな感覚を味わってきた。
また、中島みゆきさんも軽やかに優しく歌い上げているため、歌の中のヘッドライトもテールライトも、温もりある光で聴き手を包んでくれるのだ。
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