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「1・27カオス記者会見」雑感
1月27日、フジテレビ社屋に足を踏み入れるのは久しぶりです。
会見が始まる20分前、15時40分に、22階のフォーラムと呼ばれる会見場に行くと、すでに400人以上の記者たちでびっしり埋まっています。はじめから前に行くつもりはなかったので後方に座り、そこから全体を俯瞰しつつ、バックヤードをうろうろしました。
その後の10時間半に及ぶ〝カオス会見〟については、さまざまに報じられているので割愛しますが二、三、気になったことを記します。
この会場は決算説明会で使われる会場でもあります。きわめて行儀のよい証券会社等のアナリストたちとは違い、参加者の中にかつて存在した総会屋にも通じる、やや素性の知れない〝半グレ〟のような若者が複数、これもやや口汚いヤジを飛ばしていました。
いまフジ・メディア・ホールディング株は、割安株としてあらためて注目されるとともに、投機の対象になっていると思われます。当然、一攫千金を狙う〝騒動師〟のような人たちも紛れているのでしょう。
ふと村上世彰氏を思い出します。彼はこの状況を見て、間違いなく血が騒いでいるでしょう。彼は東京地検特捜部によって逮捕、裁判を経て有罪確定し、以後、今日まで、投資教育の普及などを手がけているようですが、それは別面、自己正当化に腐心してきたということです。かつて仕掛けた、フジサンケイグループに対しての大規模な株買い占めと資本再編要求は正しかった、と言いたいはずです。
一方、村上氏はその土壇場で日枝氏を裏切っていました。飽くなき利益を求める投資家として正しくても、人として信頼性に欠ける行動を昂揚感に浸りながら取っています(詳細は2019年に出版した『二重らせん』(講談社)をお読み下さい)。
村上氏に裏切られた日枝氏は、後の村上裁判に提出された検事調書で村上氏への憎しみを語っています。村上氏はそうした日枝氏の憎悪が自身の摘発を後押ししたこともわかっているでしょうから、いまの日枝氏の苦境にも思うところがあるでしょう。内心、快哉を叫んでいるやもしれず、業の深い人たちは、いつまでもそうしたことに囚われるものです。
話がそれました。さて、記者会見がグチャグチャとなり、ほぼ中身のないものとなったことは周知のとおりです。
フルオープンにしたことで、フジテレビ側ははじめからそれを織り込み済みだったと思われます。彼らは、そういうことには知恵の働くプロです。むしろ、そのようなカオスに意図的に誘導した可能性が高いと思われます。
司会の広報局長はまったくと言っていいほど交通整理をしませんでした。これには二つの可能性があります。しなかったのか、あるいはできない人物なのか。フジテレビ内の広報局長評を総合すると、おおむね両方だろうと思います。そうした司会起用も、経営陣の意図が会見を混乱状態にして終結させることにあった可能性が高いと思います。
私は22時ごろ、喧噪が続く中、会場を後にしました。結果的に、フジテレビはカオス会見を無意味な消費の場にすることに成功した、と言えるかもしれません。どこまでも不誠実なテレビ局です。