堤靭帯を切除すると危険?
こんにちは、Dr.Bigです。
ペニス増大手術にはいくつもの種類があり、どれを選択するべきなのか?そもそもどのような効果があるのか、わからない方も多いと思います。
その中でも、今回は長さを伸ばす堤靭帯切除について解説していきます。
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堤靭帯切除とは?
古くから行われるペニス延長手術です。
ペニスと恥骨は靭帯でつながっており、これを切除したりしばったりすることで長さを出します。
図の赤い部分をワナ靭帯(fundiform ligament)、黄色の部分を堤靭帯( suspensory ligament)と呼びます。
その奥の靭帯はdeep ligamentとか、dense vertical ligamentとか呼ばれたりします。
術者によってどこまで切るか、どのように縫うかなど微妙に異なるのですが、基本的にはワナ靭帯を切除、堤靭帯を一部〜全て切除し、残った靭帯が引き込まれないように糸で固定するというのが一般的なやり方です。
実はきちんとこの手術を行なっているクリニックは本邦には少なく、堤靭帯までは切除していなかったり、ヒアルロン酸やシリコン注入の方が主流です。
これは手術時間が長いために、経営的な側面からするとあまり優れないことや、腹部のオペの経験が無いとなかなか手技的に難しいことが原因かもしれません。
堤靭帯切除でペニスがぶらぶらになる?
結論から言うと「ほとんどその心配はない」というのが私の考えです。
なぜそう言えるのか?
もう一度上の図を見てください。
ワナ靭帯、堤靭帯はペニスを包むように存在していますが、勃起時に支えるような構造にはなっていないことがわかります。
勃起を支えるのはその下、deep ligamentの働きです。
この図が掲載されているのは2023年の論文なのですが、実は堤靭帯の働きについては、これまではっきり結論が出ていなかったという実情があります。
Daninoらは論文の中で、堤靭帯と呼ばれる部分は実は勃起の際にペニスを支えているわけではなく、その下の靭帯がその働きをしていることを明らかにしました。
その他にも、これまでには堤靭帯切除に関する論文がいくつか出ていますが、角度が変わらなかったとする説が多いのです。
臨床的な実感としても、術中勃起した状態を観察すると、堤靭帯は勃起につられて吊り上がっているだけのように見えます。
ヨットの帆のように、支えているわけではなく動きを制限しているだけなのかもしれません。
これは私見ですが、堤靭帯、ワナ靭帯は勃起の強度を支えるものではなく、寒い時などにペニスを引っ込める役割を担っているのではないかと推測されます。
哺乳類の中にはペニスが体内に埋まっているものも多く、理論的に言っても急所がブラブラぶら下がっているのはリスクが大きいと言えるでしょう。
堤靭帯切除の効果、合併症は?
いくつかの報告をまとめると、通常時の大きさが2-3cm伸びたとするものが多いです。
牽引時長は1-2cm伸びたとする報告もありますが、勃起時の評価をした論文はあまりありません。
これは、勃起時の評価が非常に難しいからかもしれません。
人工的に勃起させることは可能なのですが、いわゆるフルボッキ状態まで勃起させることは難しく、患者からの自己申告に頼らざるを得ません。そうすると正確性に欠けるなどの問題がありますし、羞恥心というハードルもあるでしょう。
理論的に言えば牽引時伸びるわけですから勃起時も伸びそうですが、このあたりはまだよくわかっていない部分なのです。
勃起時の長さは、血液量や体調など複数の要素の掛け合わせですから、この手術で勃起時伸びるかどうかは個人差があると言わざるを得ません。
恐ろしい手術のようにも見えますが、痛みや出血など軽いものを除けば、合併症は意外にも少ないです。
皮肉なことに、最も大きな合併症としてはペニスが短くなるというものがあります。
これは、傷が治る過程で中の靭帯が癒着してしまい起こります。
その対策として中にシリコンや人工硬膜を入れたり、縫合の仕方を工夫する技術があります。
術後ペニスを包帯で巻いたり、伸ばす運動をしたりして癒着を防ぐことも効果的です。
当然当院でもここを強く意識しており、この合併症が起こらないように注意しています。
まとめ
今回は堤靭帯切除について解説しました。
手術ですから、当然合併症のリスクは少ないながら存在します。
それを大きく上回るメリットがある手術だと思いますので、よくメリットとデメリットを比較して検討してください。
相談、ご質問などあればお気軽にお問い合わせください。
参考文献:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC11123079/