ほぼ、880日。
何年か前の夏から
うまく眠れなくなった。
その日から毎日
ここに座ってこの景色を見ている。
素晴らしく晴れた朝も
ものすごい雨の朝も
どんよりと曇天の、朝も。
朝起きたらここに座って
カフェオレを飲み
煙草を吸う。
夜、全ての家事が終わったら
ここに座ってお酒を呑み
煙草を吸う。
眠れない夜に
ずっと座っていたこともある。
どれだけ私が動けなくても
世の中は動いていくし
どれだけ私の時間が止まっても
世の中の時間は止まることはない。
日常というものは
さも当たり前かのように
我が物顔でやってくるものだ。
春の芽吹きも
夏の青葉も
秋の紅葉も
冬のまるぼんさんも
木や草や鳥や虫は
いつも季節を知らせてくれた。
・・・・・・・
2024年12月27日、夜のこと。
いつものようにここに座って
煙草を吸っていた。
居間ではフラシスたちが
キャッキャウフフと
もつ鍋を食べ、ヤゲン軟骨を
カリカリしていた。
おいしいねぇ、楽しいねぇ、
と言いながら。
今年もいい一年だった。
みんなのおかげやね・・・・
私はこの時間を満喫していた。
みんなといるけど、
ひとりの時間・・・
アレアレ??
なにかが、おか・・しい・・
景色が歪んで見える・・・・
椅子ー---!!!
ずっと座っていた
レジャー用の椅子ー---!!!
やーぶーれーたー------
わたしー-、
尻もちついとるやんかー--!!
わたしー-、破れた椅子の枠にすっぽりと
はまっとるやんかー---!!
はちみつ食べすぎて木から抜け出れんくなった
プーさんみたいになっとるやんかー!!
ハズカシイ。
みんなの前でこんなことになるなんて。
「ぎゃー!タナカサーン!!
ダイジョウブですかー--??」
優しいみんなが救出に来てくれた。
いや、ほんとハズカシイって。
「イヤイヤ、イヤイヤイヤ。
だ、だいじょぶよ」
私はこれでも
みんなより大人なのヨ。
そういえば、夕方この椅子に座った時
ビリィて音、したんだよネ。
そろそろ、替えないとって
思ったんだよネ。
その時替えればよかったよネ。
あぁ、でもね、
尻もちをついてはしまったけれど
私の尻が腫れ上がることはなかったし
足がおかしくなることもなかった。
これだけでも奇跡ってもんだよ。
おかげで
今年の厄が落とせた気がしたよ。
今年を振り返ることができた気がしたよ。
年を越す前に
新しい椅子にすることができたよ。
何年か前から
私のあれやこれやを知っている椅子。
もう、私はダイジョウブだってことで
お役目を終えたんだね・・・・
ありがとう、椅子。
ばっさり、
心置きなく
捨てさせてもらうわー---。
新しい椅子に
替えさせてもらうわー---。