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幼馴染兼メイドがずっと見つめてきます

日本屈指の大富豪である〇〇の実家


その家の後継者である〇〇もまた広大な邸宅に住んでいる


さらに、多くの使用人が働いており、〇〇は何不自由のない生活を送っていた


使用人:〇〇様もう朝です、起きてください


〇〇:…もう朝か…おはよう


使用人:はい、おはようございます


ベッドから出て着替えるといつも通り食堂へと向かう〇〇


食堂へ向かうとすでに机の上に朝ごはんが並んでいた


〇〇:いただきます


父親と母親は仕事の関係で朝ごはんを早くに済ませるため、基本的に朝ごはんは1人で食べる〇〇


〇〇:(今日は白米に焼き鮭と豚汁か…)


〇〇:(僕の好きなものばっかりじゃん)


〇〇:(あとでシェフにお礼言っておこう)


そんなことを考えながらゆっくりと朝ごはんを食べる〇〇


しかし


⁇:…


⁇:…


近くからものすごい視線を感じる〇〇


〇〇:(めちゃくちゃ誰かに見られている気がする…)


気になった〇〇が正面に目をやると1人の使用人がこちらをじっと見つめていた


〇〇:…”美羽”そんなに見られると食べ辛いんだけど…


〇〇をじっと見つめていたのは美羽こと村山美羽


〇〇の幼馴染であり、この家で唯一の〇〇の専属使用人である


そして家の後継者である〇〇とタメ口で話すことを許された数少ない使用人の1人でもある


美羽:私のことは気にしなくていいからゆっくり食べなよ


〇〇に対し素っ気ない返事をする美羽


普段からあまり感情を表に出さないため、幼馴染の〇〇でも何を考えているか分からない時がある


〇〇:普通の人はそんなに見られていたら気にするよ…


美羽:そう?


〇〇:そうだって…


美羽:〇〇なら大丈夫だって


その後も美羽がずっと見つめている中朝ごはんを食べる〇〇


美羽:ジー…


だが美羽の視線が気になってやはり食事に集中できない


〇〇:(気にするなって言われてもやっぱり気になるな…)


〇〇:ねえ、美羽ちょっとこっち来て


我慢できなくなり美羽を呼ぶ〇〇


美羽:だから私のことは気にしないで食べなって


〇〇:いや、それは無理


〇〇:あんなに見られたら全然食事に集中できないって…


〇〇:なんであんなに見つめてきたの?


美羽:…


〇〇に質問されると急に俯く美羽


〇〇:(あれ…?なんか聞いちゃいけなかった感じ…?)


〇〇:美羽…?


美羽:…だった?


ボソッと何か呟く美羽


〇〇:…なんて言った?


美羽:だから、今日の朝ごはんどうだった?って聞いてるの!


〇〇:うん…?朝ごはん…?


〇〇:僕の好きなものばかりだし、すごく美味しかったし最高だったよ


美羽:…本当に?


〇〇:そんなところで嘘つく必要ないって


〇〇が味の感想を正直に伝えると


美羽:…良かった〜


何やらほっとした様子の美羽


〇〇:美羽どうしたの?


美羽:…実は今日の朝ごはん私が作ったの…


〇〇:えっ…本当に?


美羽:うん…


美羽:〇〇が好きなものを作ったけど、いつも食べてる味になっているか、美味しいかが不安だったの…


耳まで赤くしながら話す美羽


〇〇:だからずっと僕のこと見てたのね


〇〇:美羽って普段あんまり料理しないイメージだったけど、毎日作って欲しいくらい美味しかったよ


美羽:良かった…〇〇に美味しいって言ってもらえるようにたくさん練習したの


確かに美羽の手をよく見るとあちらこちらに絆創膏が貼ってある


〇〇:(きっと慣れない包丁に苦戦しながらたくさん練習したんだろうな)


〇〇:僕のためにここまでしてくれて嬉しいよ


〇〇:でもそれで美羽が怪我をすると僕も悲しいからあんまり無理はしないでね?


美羽:分かったよ


〇〇:…だけど本当に美味しかったから、また今度作ってね?


美羽:いいの…?


〇〇:食べた張本人が言っているんだからいいんだよ


美羽:うん!また作るね!


嬉しそうに笑顔で返事をする美羽


〇〇:(美羽の笑顔ってあんなに可愛かったんだ…)


普段あまり感情を表に出さない美羽


そんな彼女の笑顔を見てドキッとする〇〇


〇〇:…でもご飯作った時に今日みたいにめちゃくちゃ見つめてくるのはナシだからね…?


美羽:気を付けます…


その日以降、日頃の仕事の合間を縫って料理の練習をするようになった美羽


練習の甲斐もありみるみるうちに料理の腕を上げた美羽は気がつけば〇〇の家の専属料理人に並ぶまでに成長した


そんな彼女が”奥さん”として毎日〇〇に手料理を振る舞うようになるのはまだ少し先のお話













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