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【連載小説】かえりたい

こんにちは!

チャリツモFRESH特別連載!チャリツモでも執筆をしてくれているともちゃんが小説を書いてくれました。

千葉県の芝山町と山梨県の丹波山村をつなぐ不思議な物語をご紹介します!

タバスキー現れる

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ともちゃんは、千葉県の芝山町で町おこしに励む女の子。
台風のあとのドタバタも落ち着いてきた9月の終わり、ドライブで山梨県に出かけました。

山梨県には「しばやま」と一文字違いの村、「たばやま」村があります。漢字では「丹波山村」と書き、山の自然が豊かでおいしいものもいっぱいある村でした。ともちゃんは、その村のことを前から聞いていてずっと気になっており、ついに訪れることにしてみたのです。

丹波山村でおいしいものを食べ、野菜を買った後、山梨市の温泉に入り、甲府でほうとうを食べて、お土産をいっぱい買って、楽しい時を過ごしてきました。

ところが、帰ってきて荷台の扉を開けると、不思議な生き物たちが飛び出してきました。

タバスキーたち:「ばあー!」
ともちゃん:「うわっ!!」
ともちゃんはびっくりして、しりもちをつきました。

ともちゃん:「だ…だれ。」
UFOのような形をした、色とりどりの3人の生き物たちに、ともちゃんは尋ねました。
青のタバスキー:「ぼくたちは、タバスキー!丹波山村から来たんだよ!」
ともちゃん:「あ、ああ…」

そういえば、丹波山村のお店の扉や看板に、こんな生き物の絵が書いてあったなと、ともちゃんは思い出しました。

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ともちゃん:「なんでついてきたの?」
緑のタバスキー:「えへへ、お姉さんをびっくりさせたかったの!」
オレンジのタバスキー:「それにしても、ずいぶん長く運転してたね」
青のタバスキー:「ここはどこ?」

ともちゃん:「ここは、千葉県の芝山町だよ」
青のタバスキー:「しばやま?」
オレンジのタバスキー:「ぼくたちの村と一文字違いだ!」
オレンジのタバスキーが、ぴょんぴょん跳ねました。

青のタバスキー:「千葉県の、どの辺なの?」
ともちゃん:「そうだね…おうちの中で、地図を見せてあげるよ」

タバスキーたちは、ともちゃんが買ったお土産をおうちの中まで運んでくれました。
ともちゃんはテーブルに地図を広げて、タバスキーたちに見せました。

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ともちゃん:「ここが山梨県。丹波山村は、東京の西の端、奥多摩のすぐ隣だね。東京があって、その右にあるのが千葉県」

ともちゃんは、千葉県の真ん中よりちょっと右の辺りを指差しました。

ともちゃん:「ほら、ここ。成田空港のすぐ南が、芝山町だよ」
緑のタバスキー:「わあ~、空港の南なんだね!」
オレンジのタバスキー:「さっきからゴーゴー音がしてるのは、飛行機の音?」
ともちゃん:「そうだよ。朝から晩まで、ずっと飛行機が飛んでいるんだ」
青のタバスキー:「うわ~、すごい!」
オレンジのタバスキー:「ここからも飛行機見えるかな?」
ともちゃん:「見えるよ」

ともちゃんは玄関まで行って、ドアを開けました。外に出て空を見上げると、少し遠くに、空に向かって飛んでいく大きな飛行機が見えました。

タバスキーたち:「わあ~!!」

タバスキーたちは、飛行機に見とれました。
するとそこに、何か飛行機の翼がついた小さなものが飛んできました。はにわのように見えます。

ともちゃん:「あ、しばっこくん!」
しばっこくん:「こんにちは、ともちゃん!」

しばっこくんは、ともちゃんたちの目の前に降り立ちました。
しばっこくん:「あれ、ともちゃん、お友達?」
しばっこくんが、首をかしげました。
ともちゃん:「んー…うん。タバスキー、この子はしばっこくん。この町の人気者だよ」
しばっこくん:「はじめまして、ぼくはしばっこくん。お空を飛べるはにわだッコ。よろしくね!」
青のタバスキー:「よろしく!ぼくたちは、タバスキー。山梨県の丹波山村から来たんだ!」
青いタバスキーが、はりきりました。
しばっこくん:「わあ、山梨県!ともちゃん、昨日は一日、山梨まで行ってたんだね!」
ともちゃん:「うん。なんか…この子たちがついてきちゃったんだ」
しばっこくん:「へえ~」

しばっこくんは、タバスキーたちを一人一人眺めました。タバスキーたちも、しばっこくんを興味深そうに見ています。
青のタバスキー:「しばっこくん、空港の近くに住んでいるから、翼がついているんだね」
しばっこくん:「うん!空港の整備員のお兄さんがつけてくれたんだッコ!」
オレンジのタバスキー:「でも、なんではにわなの?」
しばっこくん:「あのね…ぼくは、この町にある「空の駅」っていうお店を建てるときに掘り出されたはにわなんだ。この町には、ぼくの他にもはにわがいっぱいあって、博物館に展示されているんだよ!」
緑のタバスキー:「えー、見たい見たい!!」
緑のタバスキーが目を輝かせました。
しばっこくん:「じゃあ、一緒に博物館に行こう!ともちゃんも来る?」
ともちゃん:「うーん…行きたいのは山々なんだけど、車でこんなに遠くに出かけたのははじめてだから、くたくたなんだ。私はおうちで寝てるよ。ごめんね」
しばっこくん:「そっか。じゃあ、ぼくが連れてってあげる!」
ともちゃん:「楽しんできてね」
しばっこくんとタバスキー:「またねー!」

しばっこくんは、タバスキーたちと手をつないで、空高く舞い上がっていきました。


しばっこくんとタバスキー:「ただいま!」
ピンポン音と、元気な声でともちゃんは目覚めました。
ともちゃん:「おかえり~」
ともちゃんは、目をこすりながらドアを開けました。

ともちゃん:「どうだった?」
緑のタバスキー:「楽しかった!」
オレンジのタバスキー:「とってもおもしろかったよ!」
タバスキーたちは、うれしそうにぴょんぴょん跳ねました。
しばっこくん:「えへへ、芝山町を楽しんでくれて、とってもうれしいッコ!」

しばっこくんは、ほっぺをピンクにして、にこにこしました。

しばっこくん:「ともちゃん、よく休めた?」
ともちゃん:「うん」
しばっこくん:「よかったね。明日からまた仕事、がんばってね!」
ともちゃん:「うん。ありがとう」
ともちゃんは、しばっこくんにそう言われてうれしくなりました。

青のタバスキー:「ねえ、しばっこくん。ぼくたち、もっともっとこの町のこと知りたいよ!」
緑のタバスキー:「おいしいもの食べたい!」
しばっこくん:「ほんと?じゃあ、ぼくが案内するよ。楽しい場所も、おいしいものも、たくさん知ってるッコ!」
タバスキーたち:「わーい!!」
タバスキーたちは、また元気よく跳びはねました。

それからタバスキーたちは、しばっこくんに毎日いろんなところに連れていってもらいました。
空の駅、航空博物館、湧水の里…有名な観光スポットから、まだあまり知られていない散歩道や井戸や川。タバスキーたちは、どこに行っても目を輝かせました。
農家の人を尋ねておいしい野菜を食べたり、町についての話を聞いたり。タバスキーたちは、芝山町についてたくさんのことを知っていきました。

休日にはともちゃんと一緒に遊んだり、お料理を作って食べたりしました。
タバスキーたちは、とっても楽しく毎日を過ごしていました。ともちゃんもまた、新たな仲間ができたことをうれしく思いました。

おじいさんとの出会い

しばっこくんとタバスキー:「こんにちは!」
タバスキーたちと、しばっこくんは、畑でにんじんを収穫しているおじいさんに話しかけました。
おじいさん:「おお、しばっこくん。お友達かな?」
しばっこくん:「うん。山梨県から来た、タバスキーたちだよ」
オレンジのタバスキー:「おじいさん、よろしくね」
タバスキーたちは、にこにこして言いました。

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おじいさん:「おうおう、まあ、お茶でもあがってくかい。ちょうど今から休憩しようとしてたんだ」
しばっこくん:「ええ、いいの?」
タバスキーたち:「やったー!」

タバスキーたちとしばっこくんは、おじいさんについていき、おうちにおじゃましました。そして、広いリビングに通されました。タバスキーたちはソファーに腰かけて、目をきらきらさせながら部屋を見渡しました。古い壺の置物、かわいらしい掛け時計、誰かが粘土で作ったはにわ…色々なおもしろい物がおいてあります。

おばあさん:「さあ、おあがり。うちでとれたぶどうだよ」
おばあさんが、お茶とぶどうを持ってきてくれました。

しばっこくんとタバスキー:「わあ、ありがとう!いただきます!」

タバスキーたちは、山梨県以外でとれたぶどうを食べるのははじめてです。山梨のぶどうとは違う形や味を楽しみました。

青のタバスキー:「おじいさん、この町は本当におもしろいところだね!」
緑のタバスキー:「飛行機や、いろんなものがあって、毎日わくわくしっぱなしだよ」
オレンジのタバスキー:「私、もうすっかりこの町が大好きになっちゃった!空港も大好き!」

おじいさん:「そうかそうか、それはよかった…」
おじいさんはそう言って、窓の外を飛んでいく大きな飛行機を眺めました。

おじいさん:「この町はね…とっても大変なことを乗り越えてきたんだよ」
タバスキーたち:「え?」
おじいさん:「ここの空港は、住んでいる人たちの反対を押しきって作られたんだ」
緑のタバスキー:「そうなの…?」
おじいさん:「そう。わしが20歳過ぎの頃ね…突然決まったんだ。三里塚に空港を作るって」
オレンジのタバスキー:「三里塚?」
おじいさん:「この近くの地名だよ。当時は三里塚空港とも言われていたんだ」
タバスキたちー:「へえ~」
青のタバスキー:「ここに住んでいる人たち、どうしてそんなに反対したの?」
オレンジのタバスキー:「うるさくなるから?」
おじいさん:「それもあるだろうしよ、何よりここは、戦後に新しい人生を始めようと、一生懸命畑を作って住んでいた人たちが多かったんだ」

タバスキーたち:「そうだったんだ…」
おじいさん:「それはそれはみんな怒ったよ…親父もおふくろも、近所の人たちも」
青のタバスキー:「…怒って、どうしたの?」
おじいさん:「空港の用地から、決して引っ越そうとしなかった。それで、無理やり家を壊されたり測量が行われたりしたのさ。たくさんの機動隊たちがガードしながらね」
しばっこくんとタバスキー:「…」

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おじいさん:「農民たちは、火のついた瓶を投げつけたり、道具という道具で機動隊に立ち向かったり。わしも親父おふくろ妹と、農具を総動員して機動隊に向かっていった。おかげで農具がほとんどだめになったし、妹は自ら体を縛りつけていた木を切り倒されて死んだんだ」

タバスキーたちの目頭が熱くなってきました。しばっこくんも、下を向いて涙をこらえています。

おじいさん:「わしらのふんばりは、何の意味もなかった。空港は完成して、毎日うるさい飛行機が何十本と、わしらの家の上を飛びかった」

おじいさんはまた、窓の外の飛行機に目をやりました。

おじいさん:「でも、みんなが次第に『共存共栄』を唱えるようになったんだ」
タバスキーたち:「共存共栄?」
おじいさん:「そう。空港が繁栄し、町も活性化される。町と空港が手を取り合い、互いのために歩んでいくんだ。実際よ、空港の人たちはこの町の活性化のために、たくさんのものを作ってくれた。水辺の里、ひこうきの丘…町の自然を生かした公園や散歩道を整備してくれたんだ。それに、町も頑張った。芝山はにわ祭りっていう、古代人が天から降りてくるお祭りがあるだろ。あれは、空港の賛成派と反対派で二つに分かれてしまった町の人たちを、もう一度一つにつなげようと、始まったものなんだよ」
タバスキーたち:「そうなんだ…」

おじいさん:「空港の人たちも、町の職員も、空港と共にあることでこの町がもっと住みやすいところになるように、一生懸命頑張ってる。妹を失ったことは、本当に許せない。親父おふくろは、死ぬまで空港を許さなかった。今も傷を負ったまま生きてる人たちがたくさんいる。でもよ、わしは今なお町のために頑張ってる一人一人に励まされているんだ」

タバスキーたちも、しばっこくんも、おじいさんをじっと見つめています。

おじいさん:「何よりわしは、昔も今もこの町が大好きだ。空港ができたって、たとえこれから何があったって、芝山町の繁栄を願う人たちはいなくならないさ…ここにもっと若者が来ればの話だが」

青のタバスキー:「それって、ともお姉さんのこと!」
青いタバスキーが、身を乗り出しました。

緑のタバスキー:「東京のど真ん中から、この町が気に入って引っ越してきたって」
緑のタバスキーも、はりきりました。

おじいさん:「ああ、ともちゃんね。めずらしいもんだよ。こんなど田舎に…」

オレンジのタバスキー:「私、信じてる。ともちゃんのような若者が、これからこの町に増えるって」
オレンジのタバスキーが、目を輝かせました。

おじいさん:「そう簡単にはいかないかもしれないけどねえ…」
タバスキーたちとしばっこくんは、おじいさんとおばあさんにお礼を言って、おうちを後にしました。


タバスキーお家へ帰る

その日、タバスキーたちは、空の駅でおやつを買って外のベンチで食べていました。

オレンジのタバスキー:「おじいさん、言ってたね。今も傷ついたまま生きてる人たちがいるって」
青のタバスキー:「そうだよね…こんなに楽しい町なのに」
緑のタバスキー:「楽しい場所やおもしろいものがたくさんあるのも、これまでこの町の一人一人が頑張ってきたからなんだね」
青のタバスキー:「でも、どんどん変わっていく町に追いつけないで、取り残されている人もいるってことだよ」
オレンジのタバスキー:「みんな、そういう人たちの存在を忘れてしまっているんじゃないかな」
緑のタバスキー:「それじゃあ、本当にいい町にはなれないよ…」
青のタバスキー:「空港ができることが決まってから、どれだけの人が苦しんで悩んできたんだろう…」

見渡すと、子どもたちが飛行機の模型の下で楽しそうに遊んでおり、おばあちゃんたちがおしゃべりに花を咲かせています。
でも、タバスキーたちの心の中は、この町が通ってきた痛みや苦しみを思って、はりさけそうでした。

緑のタバスキー:「ぼくたち、この町のことを、なんにも知らなかった…」
オレンジのタバスキー:「ただ楽しんでいるだけで、人のためになることを、なんにもしていなかった…」
青のタバスキー:「ぼくたち、何のためにここにいるの…」
タバスキーたちは、ただただ泣き続けました。

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芝山町の豊かな自然に触れて、たくさんの人たちとおしゃべりしたりおもてなしを受けたりしているうちに、タバスキーたちは丹波山村のみんなを思い出しました。

そして、次第にみんなのことが心配になってきました。
タバスキーたちは、家族やお友達には内緒でともちゃんについてきてしまったのです。楽しい毎日の中で、タバスキーたちはだんだん不安になっていきました。

青のタバスキー:「ぼくたち、なんてことしちゃったんだろう…お父さんもお母さんも、怒ってるだろうな」
緑のタバスキー:「ぼく…おうちに帰りたい
オレンジのタバスキー:「私も、みんなに会いたい」

緑のタバスキーも、オレンジのタバスキーも、悲しそうな目をしています。

オレンジのタバスキー:「でも、この町のみんなは、ぼくたちがやって来たことを喜んでくれているし、ともお姉さんもぼくたちのことが大好きだよ」
緑のタバスキー:「帰るって言ったら、悲しむだろうな…」
緑のタバスキーが、ため息をつきました。

青のタバスキー:「勇気を出して、ぼくたちの本当の気持ちをともちゃんに話してみようよ」
オレンジのタバスキー:「うん…」
緑のタバスキー:「そうだね…そうしよう」

タバスキーたちは、ともちゃんのおうちを訪ねて、家族や友達に黙って出てきてしまったこと、丹波山村に帰りたいことを話しました。

ともちゃん:「そっか…」
ともちゃんは、ちょっとびっくりしました。

ともちゃん:「おうちで、お父さんやお母さんにひどいことをされていたとか、そういうわけではないんだよね?」
青のタバスキー:「うん」

ともちゃんは辛い家庭で育ち、大学を卒業して早々に自立したのでした。
ともちゃん:「それなら、みんなきっと心配してるよ。きみたちが帰っちゃうのはさみしいけど、私はみんなの気持ちを尊重するよ」

タバスキーたち:「本当?」

ともちゃん:「うん。一人一人に、それぞれいるべき場所があると思うんだ。場所は違っても、愛する町でみんなで支え合って生きていく、その思いは同じだよ。私はタバスキーたちが大好きだし、丹波山村も大好き。みんなのこと、ずっと忘れないで応援してるよ」

タバスキーたち:「お姉さん!!」

タバスキーたちは、いっせいにともちゃんに抱きつきました。ともちゃんも、3人のタバスキーたちを両手いっぱいに抱きしめました。

タバスキーたちは、しばっこくんに乗せてもらうことになりました。ともちゃんは、芝山町の野菜、おにぎり、おいしいものをできるだけたくさんタバスキーたちに持たせてあげました。
はにわも持たせてあげようとしたけど、あんまり重くなるとしばっこくんがうまく飛べなくなるので、やめました。

しばっこくん:「山梨県に行くの、はじめてだッコ~」
飛ぶ準備をしながら、しばっこくんはわくわくしました。

ともちゃん:「じゃあ、しばっこくん、よろしく頼んだよ。タバスキー、またいつか会おうね」
タバスキーたち:「うん!」

ともちゃんはタバスキーたちの頭を一人一人なでてあげました。
タバスキーたちはみんな、とってもうれしくなりました。

しばっこくんは、タバスキーたちとお土産を乗せて、勢いよく飛び上がりました。

ともちゃんとタバスキーたちは、いつまでも、いつまでも手を振りあっていました。

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丹波山村に降り立つと、村人たちとタバスキーたちがいっせいに出迎えました。村ではちょうど、秋の収穫祭をやっていたところです。

タバスキーのお父さん:「おお!お前たち!!」

タバスキーたち:「父さん、母さん!!」

タバスキーたちは、一目散に家族や友達のところに走っていき、ひしと抱き合いました。

タバスキーのお父さん:「本当に、本当に心配したんだぞ…」
タバスキーたち:「ごめんなさい…」
タバスキーのお母さん:「お前たちの顔が見れて、本当にうれしいよ…」

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タバスキーたちは、これまであったことを話し、しばっこくんを紹介しました。

タバスキーのお母さん:「しばっこくん、ようこそ。遠くまでよく来てくれたね」

しばっこくん:「とっても遠かったッコ~。みんな、よろしくね!」

お祭りは一層盛り上がり、タバスキーたちとしばっこくん、村人たちは、歌って踊ってとても楽しい一日を過ごしました。

とれたてのお米、鹿バーガー、丹波山村のいろんなごちそうを、みんなでお腹いっぱい食べました。それから、芝山町のお土産もみんなでちょっとずつ分けて食べましたが、あっという間になくなってしまいました。

タバスキーのお父さん:「さあお前たち、家に帰ろう」
タバスキーのお母さん:「また一緒に暮らそうよ!」

お祭りも終わり、暗くなってきた頃、青いタバスキーの家族たちが言いました。
でも、青いタバスキーは、ちょっとうつむいています。

タバスキーのお父さん:「…どうしたんだ?」

青のタバスキー:「父さん…ぼく…」
青いタバスキーは、思いきって顔を上げました。

青のタバスキー:「芝山町に戻りたい
タバスキーたちは、目をまるくしました。

青のタバスキー:「この1ヶ月、ぼくは芝山町のいろんなところに出かけたんだ。いろんな人と会って、いろんな話を聞いた。とっても素敵なところなんだけど、たくさんの痛みや悩みを抱えている町でもあるんだ…空港との関わり、町をどう活性化していくか、若者をどうやって呼ぶか…一人一人が、難しい現実と向き合いながら、一生懸命生きている。傷ついている人もいる。
ぼくは、この村でみんなからいっぱいもらったやさしさや思いやりの心、おもてなしの心、負けずに生きる力を、芝山町のために生かしたいんだ。いろんな課題がある町だから、いろんなところから来た人の助けが必要だと思うんだ」

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タバスキーたちも、村人たちも、みんな青いタバスキーをじっと見つめています。

青のタバスキー:「父さん、母さん、みんな。ぼくは、またいつか戻ってくるよ。芝山町で学んだことを、この村にも必ず役立てる。またしばっこくんや、ともお姉さんと一緒に、この村に遊びに来る。約束だよ」

タバスキーのお父さんの目が、うるうるしてきました。

タバスキーのお父さん:「…そうか。分かった。精一杯、頑張るんだぞ」
青のタバスキー:「うん!」

青いタバスキーとお父さんは、しっかりと抱き合いました。

緑のタバスキー:「父さん…母さん…ぼくも!」
オレンジのタバスキー:「私も!」

緑のタバスキーとオレンジのタバスキーも、身を乗り出しました。そして、二人も家族や友達と、しっかりと抱き合いました。

タバスキーたちは、お祭りの残りの食べ物をたくさんお土産にもらいました。

青のタバスキー:「みんな、本当に、本当にありがとう。みんなのこと、ずっと忘れないよ」
緑のタバスキー:「また近いうちに来るね」
オレンジのタバスキー:「それまで、元気でいてね」

3人のタバスキーたちは、お土産を渡してくれた村人のおばあさんに、はりきって言いました。

村人のおばあさん:「3人で助け合って、頑張って、幸せに生きてね。私たちは、いつでもお前たちの帰りを待っているよ。しばっこくんも、好きなときにまた遊びにおいでね」

しばっこくん:「みんな、とってもすてきなおもてなしを、どうもありがとう。必ずまた遊びに来るッコ!」

しばっこくんは丹波山村のお土産を持ち、3人のタバスキーたちは、しばっこくんにしっかりつかまりました。

タバスキーの家族:「3人とも、元気でね!」
タバスキーたち:「みんなも元気でね!」

しばっこくんは、満点の星空に向かって勢いよく飛び上がりました。

しばっこくんとタバスキー:「ばいばーい!」
タバスキーの村の人:「ばいばーい!!」

タバスキーたちと村人たちは、いつまでも、いつまでも手を振りあっていました。

芝山町のおうちでは、ともちゃんがベランダで植物に水をやっていました。何かが飛んでくるのに気がついたともちゃんは、ベランダ越しに空を見上げました。

しばっこくんとタバスキー:「ただいまー!!」
しばっこくんと、3人のタバスキーたちは、元気よく手を振りました。

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■あとがき

こんにちは。ともちゃんです。山梨県の丹波山村と、千葉県の芝山町の出会いを、お話にしてみました。

ご存じない方のために、簡単に説明しておきます。
丹波山村は、東京都の一番西の奥多摩町のすぐ隣にある、山梨県の村です。山や川、自然が豊かで、おいしいお野菜やお肉がいっぱいあります。芝山町は成田空港のすぐ南にあり、飛行機がよく見えて、はにわもたくさんある町です。

一文字しか違わない「たばやま」村と「しばやま」町。仲良くできたら、すてきですね。

専ら芝山町民目線のお話になってしまいましたが、私自身もこれからも丹波山村をたくさん訪れて、もっといろんなことを学んでいきたいです。

タイトルの「かえりたい」には、丹波山村に帰りたくなり、最後には芝山町に戻りたくなったタバスキーたちの気持ち、そして、現代、都会にどんどん出ていってしまう若者たちが、田舎に「かえりたい」、そして町おこしをしたいと思うように、という私の願いを込めています。

芝山町で頑張っている3人のタバスキーたちを見かけたら、ぜひ声をかけてあげてくださいね。

<つづく>

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