おうちDE茶の湯①-感謝というスキルの本当の意味
皆さま、ごきげんよう。バイリンガル茶道家の保科眞智子です。東京を拠点に、外国人や日本の若い世代に茶の湯のこころと日本文化の魅力をお伝えする活動をしています。
この長くて辛い巣ごもり自粛を笑顔で乗り切るために、皆さんの日常が少しでもこころ穏やかであるために、茶の湯エッセイを綴ります。
内容は、私が茶道をとおして気づいた大切な教えです。どなたでもすぐに実践していただけることばかりですので、茶道経験は問いません。ぜひ続けて読んで頂けたら嬉しいです。
今回は、「感謝というスキルが人生を明るくする!ということについて書いてみようと思います。
感謝というスキルについて
茶道の稽古では美しいお辞儀の仕方を習います。お辞儀は相手を敬い、感謝を表すための形です。美しい所作には無駄がなく、相手の心に清々しく映ります。茶室ではお茶にお菓子、器、お花、交わされる会話など、空間全体から恵みを感じ、一期一会に対する感謝をお辞儀で表現します。
今から2500年前、儒家の始祖孔子は、不安定な社会を「仁」と「礼」で治めることを説きました。思いやりや感謝の気持ち(仁)を、お辞儀や「ありがとう」の言葉などできちんと表現すこと(礼)。仁と礼は常に一体であらねばならないということです。
感謝しているけれど口にはしない、あるいは口先だけで気持ちがこもっていない。こうした習慣ではコミュニケーションが不足し秩序は保たれず、ひいては自分自身も不安定になってしまいます。
自然の恵みにも意識を向けてみましょう。道端の小さなタンポポや、頬に感じるそよ風。厳しい冬をのり越えた、こうした命の息吹に励まされますね。
感謝する気持ちに気づくこと、そして、感謝の気持ちをきちんと表現すること。これはスキル(技術)であり、日々のちょっとした習慣で体得できるものなのです。
心理学者ロバート・エモンズとマイケル・ロッカーの実験研究に興味深い結果が発表されています。「毎日1~2分、感謝する時間を設けたグループは、何もしなかったグループに比べ、『人生をもっと肯定的に評価できるようになった』」というのです。感謝は人間関係を良くするだけでなく、自分自身も幸せになれるというのですから、良いことづくしです。
巣ごもり生活を感謝で乗り切る
コロナ自粛が長くなってきました。日ごろは仕事や学校などそれぞれに過ごしていた家族も、リモートワークや休校措置で、おうちに全員集合しているご家庭も多いかと思います。おうちの中は人口密度が高いなぁ、些細な言動がいちいち気になるなぁ、なんてことも正直ありますよね。
こんな時こそ、自分のために、家族のためにお茶を点てて、感謝の気持ちを表現してみてはいかがでしょうか?お茶はひとつの象徴的な存在ですから、例えばデリバリーのお兄さんに「ありがとう」、三度の食事に「いただきます」「ごちそうさま」、眠る前には今日一日の無事を感謝する、なども同じです。小さなことにも気持ちをのせて、感謝を表現すること。ぜひ普段以上に意識してみてください。
外では花が咲き、新緑の季節を迎えました。人類よりはるか大きな自然界、そして宇宙は絶対的な秩序が保たれています。こころの小宇宙もバランスを崩さないように、笑顔を忘れずに。