読了メモ〜「海を渡った古伊万里」的視点から
Book Cover Challenge Day2
The Hare with Amber Eyes A Hidden Inheritance
琥珀の目の兎 エドマンド・ドゥ・ヴァール
史実は小説より奇なり。この本は、私が東京の茶会にて、ウィーン郊外の古城に眠っていた古伊
万里の陶片と出会ってしまい、そのロマンと悲劇のストーリーに光を当てるべく奔走していたと
き、ある方から勧められた全英No.1のノンフィクションだ。(古伊万里再生プロジェクト
www.roip.jp)
ここでは、古伊万里の代わりに根付(帯に挟む小さな細工物)が物語を展開していく。大富豪エフルッシ家に蒐集され264個の根付コレクションが見たのは、ユダヤ系であるが故の一族三世代の栄華と衰退。舞台背景には、明治期の横浜、世紀末パリの文化史、大戦時ウィーンの政治史、
そして終戦直後の東京の生活史と、横断的な近現代史としてもとても興味深い。
私はここに、明治期の工芸品という視点を加えながら読み進めた。本物を拝見していないので推測だが、おそらく根付は時代的にも最高峰の超絶技巧が施されたミニチュアだったからこそ、見る人の心を動かし、どんな状況でも捨てられずに残されたのではないだろうか。ロースドルフ城の戦災コレクションが私たちの心を動かすのと同じく。
ステイホームでじっくり読むのにおすすめ!!
せっかくなので付け加えると、この本を私に紹介して下さったK子さんは、外交官夫人としてウィーンに長く駐在。未亡人となられた80代で「最後の旅」と、昨年ロースドルフ城まで足を運ぶお手伝いができたのは私にとっても嬉しい出来事でした。根付にしろ、古伊万里にしろ、工芸品が見る人の心を動かすのは、今も昔も同じだと思う。
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