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最後まで楽しく読ませるための『欲求ピラミッド』
※全体の目次↓
※配信版↓
(文章でまとめるとだいぶ素っ気ないので、細かいニュアンス説明は配信版がオススメ)
◎概要
最後まで楽しんでもらうために配置するといい”欲求”の種類を階層ごとに解説
多くの読者に楽しんでもらう、つまり読者の欲求に応えるために「こういう”欲求”が作品に配置されてるといいですよ」っといった内容
↓前回解説した『アイコン→アイディア→コンテンツ』とリンクしてるので、こっちも読んでおくとより理解が深まるかもです。
◎ピラミッドの全体像
・全部で5階層
・縦軸 …その欲求が相手の心をつかむ持続力の強さ
・横軸 …間口の広さ。相手への刺さりやすさ
上の階層ほど「目を引きやすいが、インスタントな欲求」で、下の階層ほど「いきなりは受け取ってもらえないが、ぶっ刺さると効果が大きい欲求」といった感じです。
「読者が上部から入ってきて、下部で作者が待ち構えている」といった構造は、前回の『アイコン→アイディア→コンテンツ』と同じですね。
それではLv.1から解説していきます。
Lv.1:快楽
・ぱっと見せられてついつい見ちゃうもの
・初見、興味ゼロの人の目を引くのに向く
大別すると「萌、闇、ギャグ(エロ、グロ、ナンセンス)」があります。
▶萌え
・パッとみて「いい」と思えるもの全般
・例:女の子、可愛い動物、イケメン、カッコいいメカ、エッチな〇〇
▶闇
・良くないなと思いつつも見ちゃうもの
・例:バイオレンス、ゴシップ、秘密、不幸
▶ギャグ
・笑えるもの
・しょうもない一発ギャグでも、乾いた皮肉でも
Lv.2:教養
・知的好奇心を刺激するもの全般
トリビアのような小さなネタから、HowTo系(漫画でわかる〇〇)やジャンルモノなど作品全体に関わるものまで色々。
要は、読んで「へー!」と思うもの。
例を挙げてみると以下のような作品とか。
・歴史…へうげもの、三国志
・異文化…テルマエロマエ、乙嫁語り
・業界…ナニワ金融道、正直不動産、ブラックジャックによろしく
・専門学校…のだめカンタービレ、銀の匙、アオイホノオ
『Lv.1:快楽』と『Lv.2:教養』は”入口”に相当するので、最初の数ページに入れ込んでおくと後々も読み続けてもらいやすくなります。
Twitterなどで見かける数ページ漫画などは、ココだけで構成されてたりしますね。
Lv.3:感情
・喜怒哀楽。人の感情
『Lv.3:感情』はピラミッドのちょうど真ん中。
そのため「読者に受け取ってもらえる/もらえない」の微妙な立ち入りにいる階層ではあります。
読んでもらうための注意点としては「キャラのためのキャラの感情」ではなく「読者が楽しむためのキャラの感情」になるように気を付けるところかなと思います。
例えは『スラムダンク』なんかは1話にLv.1~Lv.3までが全てきれいに入っててたりします。
①不良【闇】の主人公 桜木が50人の女子にフラる【闇】【ギャグ】
②ヒロインの美少女 晴子に出会う【萌え】
③晴子にバスケット(スラムダンク)を教わる【教養】
④桜木が春子に惚れる【感情】
たぶん、いきなりキャラの感情を見せるより①~③で惹きつけてからの方が受け取ってもらいやすいかなと。
(まったく知らない人に「あの子好きなんだよね…」って聞かされるより、楽しませてくれたり仲良くなった人の方が興味持って聞けるのと同じ感じ)
Lv.4:自己
・読者が自己投影をできるようなキャラ、シーン、世界など
読者が読んで「分かるわ~!」「オレだわ~!」ってなるような部分。
Lv.4以降はいきなり提示しても受け取ってもらえない領域になってくるのでので、「序盤はLv.1~3で惹きつけてラストでちょっと混ぜ込む」といった見せる順番が超重要になってきます。
(これはなんとなーくの感覚なのですが、Lv.4かLv.5を描きたい場合は16,32Pぐらいないと難しいのかなぁという気がしてます。『Lv.3:感情』は8,16Pぐらい?)
Lv.5:価値観
・作者の価値観(好き嫌い、主張、思想、人格、美意識)
・作者が一番やりたい/描きたい/言いたい部分。描くためのエンジン。
『Lv.4:自己』と同様に前に出しすぎると読んでもらいづらくなるので、見せ方や出す順番に注意が必要です。
ただ、しっかり描けると「読んでよかった~!」「また読みたい!」と思ってもらえる重要な場所でもあります。
(これは個人的な意見ですが、作者自身が既に「超大事!!」と思っている場所(というか作者自身)なので、作者自身はあまり意識しすぎない方がいいかも? 『Lv.5:価値観』に偏った作品になる=あまり他人に読んでもらえない作品になるということなので。それが難しそうなら、良い感じにバランスを取ってくれる編集者を見つけよう!)
余談:「作るの階層」と「売るの階層」
前回の『アイコン→アイディア→コンテンツ』で話した内容とほぼ同じになるのですが、編集者と作者とで重視してる場所が違いますよというお話です。
『Lv.1:快楽』~『Lv.2:教養』は”売る”の階層
『Lv.4:自己』~『Lv.5:価値観』は”作る”の階層
『Lv.1:快楽』~『Lv.2:教養』は人の目を引く場所、つまり本を手に取ってもらうために必要な場所なのでここを重視する編集者さんが必然的に多いです。
(編集者が「女の子かわいくして」「流行ってるこのジャンルはどう?」とか言ってくるのは「Lv.1~Lv.2」を重視してるから。Lv.5の話をしてくれる編集者さんもいるとは思いますがおそらく少数派)
一方、『Lv.4:自己』~『Lv.5:価値観』は作者の描く理由に関わる場所(エンジン)なので、作者にとって大事な場所になります。
両者が別々の場所に目を向けたまま打ち合わせをしてしまうと話がかみ合わなくなってしまうと思います。
『欲求ピラミッド』を頭に入れておくと「ああ、今はLv.1~Lv.2」の話だなぁと冷静に話ができるようになって良いかもです。
まとめ:順番が大事
ざっくりまとめると以下のような感じ。
『Lv.1:快楽』~『Lv.2:教養』
・「売る」の階層
・興味ゼロの人を引き付ける”入口”の役目
・特にタイトルや冒頭数ページにたくさん欲しい。入れれるだけ入れちゃえ!
『Lv.3:感情』
・「いきなり読者に受け取ってもらえる/もらえない」の狭間にある
・「キャラのための」ではなく「読者が楽しむため」のキャラの感情を
『Lv.4:自己』~『Lv.5:価値観』
・「作る」の階層
・主張しすぎると読んでもらいづらくなるが、ないと「また読みたい!」と思ってもらえなくなる
「どれが重要」というわけではなく全部大事。
イメージとしては「上部から読者を中に入れ、徐々に奥にエスコートし、最後にオレの価値観をくらえオラあああああ!!!」って感じにやると最後まで気持ちよく読んでもらえるかなと思います。順番が大事。
次回はたぶん「企画の作り方3ポイント」をやると思いまーす。(タイトルも仮!)