aiko好きによるaikoの歌詞考察 #2 『あたしの向こう』
約4ヶ月前に初めて行った、aikoの曲に含まれる歌詞の意味について考察するこの企画(第1回は以下のリンクをご参照ください)。
第2回の今回は32枚目シングル表題曲である「あたしの向こう」という曲を取り上げます。
僕なりの解釈を見ていただく前に、まずはYouTubeやストリーミングサイトなどで一度聴いてみて下さい。
この曲は2014年11月12日にリリースされた曲で、バカリズムさんが脚本を手がけたドラマ「素敵な選TAXI」の主題歌にもなっています。
ドラマの主題歌ということもあり、歌詞の内容もドラマと結びつけると非常にわかりやすくなります。
ドラマのあらすじ
今は残念ながらあまりみていないのですが、自分が小学生だった頃は面白かったこともあってよくドラマを見ていました。この「素敵な選TAXI」も見ていたドラマの1つで、今でも大好きなドラマの5本指に入る作品です。
そのドラマで出会ったのがこの「あたしの向こう」。姉がaikoが好きなのは知っていましたが、当時はまだ僕自身ハマっておらず曲も全然知りませんでした。しかし、この曲を聴いて一瞬で「名曲だ!」と思い、aikoを聴くようになったのです。
つまり、「あたしの向こう」は僕がaikoジャンキーになるきっかけの曲なんです!
そんな僕の原点にして頂点と言える「あたしの向こう」がどんな歌詞なのか、じっくりと考えていこうと思います。
まずは歌詞全体を見てみましょう。
胸に染み渡っていくような歌詞ですね。それでは、Aメロから順番に見ていきましょう。
1番
Aメロ
この文章、文法的にいうならば目的語にあたる言葉がなくなってしまっています。
何を忘れてしまったのか?どこからいなくなってしまったのか?
歌詞の冒頭なので、この情報からでは何もわかりません。とりあえず次の文章に進むことにしましょう。
ゲームに夢中になっているときや、ぼーっとしてしまっているときに「あれ、もうこんな時間が経っていたのか!?」と思ったことはありませんか?私たちは何かにものすごく集中しているときや逆に何も考えていない時には時間が早く進んでいるように感じる傾向があります。
この文章も「ついさっき」のことだと思っていたのに、実際は「ずっと昔」のこととなっていることから、時間が思ったよりも早く進んでしまっていたことがわかります。
前の文章で「あたしが忘れてしまったら あたしがいなくなってしまった」と考え事をしていることからぼーっとしながらずっと何かを考えていたのかもしれませんね。
この文章から、おそらくこの曲の主人公は彼氏に振られた女性であることがわかるでしょう。振った側は自分から相手の方と寄り添わない選択をしたのですから、普通ならば自分からは連絡してこないはずでしょう。
それでも「逢って話がしたいんだ」と連絡してくることは、「あたし」からするとなんだなんだとなりますよね。それはもしかするとあなたと復縁したいというような吉報かもしれないけど、でももし自分が嫌な気持ちになるようなことを言われるかもしれないという不安も当然出てきます。
嬉しい気持ちと不安な気持ちが織り混ざっているため、「少しだけ」指先が冷たくなるのです。指先が冷たくなるということは、生理学的には血管の収縮によって起こります。血管の収縮が起こるのはストレスが溜まっているときなどが例として挙げられますが、それ以外にも「緊張している」ことからも起こります。
つまり、何を言われるか全く想像がつかないあたしが緊張している様子が暗に示されているんです!
Bメロ
最初にこの曲を聴いたとき、このBメロがサビのように聴こえたことを覚えています。まるでサビが2段階に分かれているような気がしました。
この文章で出てくる「ドラマ」というのは、「素敵な選TAXI」のことを指しているでしょう。タクシーに乗って過去に戻るという作品のあらすじともこの歌詞は合致しています。
きっとあたしも過去に彼とのやり取りの中で(自分の本心じゃないのに)言ってしまって後悔していることがあって、それをドラマの中みたいにやり直してみたいけど、きっとそんなことは無理なんだよなぁって思い馳せている様子が浮かびますね。
サビ
さて、いよいよ1番のサビに入っていきます。
あたしは振られた時点で彼とは「さよなら」をしなければならないということは頭で分かっていたのでしょう。けれど、その事実をすぐに受け止めることなんて誰にとってもできるわけがなくて、それを受け入れられずに耳を塞いで彼と一緒にいる時間を過ごし続けようと足掻いています。
さあ、ここで初めて曲のタイトルである「あたしの向こう」が登場します。
ただ、そうは言ってもここでいうあたしの向こうというのは物理的に向こう側にいるとか、前にいるとかそういうわけではないと思います。
僕は、この部分を時間軸上での「向こう」つまり「先の時間」にいるというように捉えました。図で表すとこんな感じです。
あたしは、彼に振られた事実を受け入れられず、その時のまま立ち止まって足掻いてしまっているけど、彼はそんなことはなくどんどん先に進んでしまっている(振ったということをとっくに受け入れている)。だからこそ「あなたはあたしの向こう」にいるのです。
そして、その次の「あたしはあなたの向こうに何を見る」という部分。あなたの向こう側ですから、これは現在よりも先の時間、つまり未来のことを指します。つまり、自分の未来はどんな風になっているのだろうと考えているのだと思います!
2番
Aメロ
2番に入ります。まずは前半部分。
このインクの無くなりそうなペンというのは、さながらあたしの残りのHPを指しているようにも感じます。
そんなペンで友達に振られたことを打ち明けているのでしょう。
その時にできるインク跡は当然擦れているし、何かを書こうと思っているわけでもありませんので、描かれているものもめちゃくちゃです。
でもそれを「あたしの今の模様だ」と表しているのです。
1番の喜びと不安が織り混ざっているような気持ちや彼に振られたことがまだ受け入れられずモヤモヤしているような気持ち。いろんな気持ちが混ざりすぎて結局今自分がとう感じているのか自分自身も分かっていない状態なんです。
まあでも、そういう風に血迷ってしまうことはありますよね。振られたことを受け入れられず、ダメだ意味ないと分かっていながらも思わず連絡をしてしまうように人間も感情的な動物ですから間違った選択を繰り返してしまいます。
あたしもきっとそんな状態に陥ってしまっているのでしょう。
(この短い歌詞の中に模様が繰り返されて韻が踏まれているのも歌詞としては非常に面白いですよね〜)
Bメロ
きっと友達にことの顛末を話した帰りでしょう。全て打ち明けるのですから、彼が言ったセリフや自分が露わにした態度などがフラッシュバックします。そうなると、当然気分は沈んでしまって、無意識に下を向きたくなってしまいます。だからこそ、後半でその気持ちを打ち消そうと無理やり星を見上げているんです(下⇔上)。
さらにいうと、あたしの心は雨模様で明日の天気が晴れなので、世の中はあたしの気持ちなんか知らずに勝手に進んでいってしまっていて、置き去りにされているということも表しているのかもしれません。
サビ
そんな気分落ち込みまくりの自分が変われたらと1番の時のように過去に戻りたい気持ちが再燃しています。思うような結果にならなかった今をもしやり直せるとしたら、どういうふうに今のあたしは行動するんだろう?と思い馳せています。きっと過去にいろんな後悔を抱えているんでしょう。歌詞の内容も極めて素敵な選TAXI的です。
でも、そんなことが無理なのは分かっているし、さっきみたいに気分が沈むだけなんだから、もう振り返らないで前を向こう。と、この部分であたしの気持ちに変化が訪れています。
そしてここで間奏に入るんです。
ここのピアノソロは圧巻です。この世の中に腐るほどあるピアノソロの中で1番好きなソロです。マジガチでカッコいい!!!!!!
(ちなみに2番目に好きなピアノソロはT-SQUARE「宝島」内の和泉さんのピアノソロです。吹奏楽バージョン内でもサックスがソロで暴れてます。)
Cメロ
気持ちに変化が起こり、前に進んだあたし。だからこそ、未来にあたる部分が1番の時よりも「少し」向こうになっているんだと思います。
そして、あなたとの過去を引きずるのはやめたけど、未来はどうなんだろうと考えてみます。でも、分かれちゃってるからそんなことしたってどうしようもないじゃん!キスなんてできるわけもない!!
もう前を見ても後ろを見ても仕方がないんです!
ラスサビ
一見これは1番の繰り返しをしているように見えます。でも1番が「知らないままであがいてみた」と今まさにそれをしているのに対して、ラスサビでは「わからないフリをしていた」とあがいていた事実が過去のものであるということがわかります。1番は挑戦という意味での「みた」でラスサビは過去の意味での「いた」なんです!
ここからもあたしが立ち直りつつあることがわかるでしょう。
かつて彼に寄りかかって甘えて、慰めてもらっていたんでしょう。彼を失った今寄りかかることができずすごく不安定な状態だったけど、立ち直れたからこそこれからは1人で頑張れることを表しています。
そしてサビと同じメロディが畳み掛けで繰り返されます。
「これから」の未来、あなたとの思い出を引きずらないで1人で立てるようにするし立てるだろうけど、寄りかかって甘えていたあなたとの思い出を風化させたくない、完全には無くしたくない。もう迷惑はかけないから、せめて思い出させて欲しいという、前向きだけれどさながら最後のお願いを彼にするような気持ちが表れています。
そして後半部分。
付き合っていた当時みたいにあたしに対していい人だったと思わなくてもいいし、ひどい人だったという印象でもいいからあなたもあたしのことを忘れないでほしい、2人の思い出を完全には無くさないでほしいという気持ちでこの曲が締められます。
そして、ここまできてやっと冒頭の歌詞の意味がわかります。
「あたしがあなたの心の中からいなくなってしまったから、あたしがあなたとの思い出を忘れてしまったら、2人の思い出はもう誰も思い出すことは無くなってしまうよね」
ということを表しているのではないかと思います!
そんなことが嫌だから曲の中であがいて、でも気持ちが変わって最終的には
「違う形でいいからあたしのことを覚えていて」
という気持ちになっているんです!!!
「あたしの向こう」から得られることとは
この曲からはきっと次のようなことが得られるのではないかと思います。
と、aikoさんが素敵な選TAXIに乗車してくるお客さんに対して語りかけているかのような気がしました。
「あたしの向こう」の歌詞考察はこれでおしまい。長々とありがとうございました。
実は第1回の「自転車」がいいねの数こそ伸びていないものの、閲覧回数が思ったよりも伸びていたので今回再挑戦しました。
今後ものびのびと続けようと思います!!!
P.S.
あたしの向こうのライブバージョンのドラム&ベースがカッコ良すぎるので全国民聞いてください。